独立行政法人国立科学博物館の研究チーム(松原聰名誉研究員ら)は、新潟県糸魚川市内の姫川支流で採取された青い石が「ラピスラズリ」であることを突き止め、日本国内で初となる産出確認を発表した。
ラピスラズリは青色から藍色の宝石として7000年以上の歴史を持つが、これまで宝石品質の原石を供給していた産地は世界でもアフガニスタン東北部のみと極めて限定されており、日本国内での産出は知られていなかった。日本の正倉院宝物に見られるラピスラズリも、全てアフガニスタン産と考えられている。

今回の発見は、2名の収集家が長年趣味として集めていた地元の岩石(主にヒスイ)の中から見つかったものである。両氏の没後、これらを引き取った業者のもとに青い石が含まれていたため、国立科学博物館が化学組成分析およびX線解析を実施した結果、ラピスラズリであることが判明した。今回発見された中で最大となる直径約20cmの礫は、姫川支流の上流部河床で採集されたものとみられている。原石の表面は風化によって灰色を帯びた冴えない青色をしているが、切断面を研磨すると濃い群青色を示すのが特徴である。
分析の結果、糸魚川産のラピスラズリを構成する青色系鉱物として、藍方石(アユイン)と方ソーダ石(ソーダライト)が同定された。アフガニスタン産のラピスラズリも主に藍方石から構成されるが、糸魚川産のものには外国産では報告のない特有の共存鉱物の組み合わせが確認されている。例えば、藍方石は珪灰石や灰礬柘榴石(かいばんざくろいし)を伴って接触交代変成作用を受けた岩石(スカルン)に類似しており、方ソーダ石はゴナルド沸石やシデロフィル雲母などの共存鉱物を伴っている。研究チームは、このラピスラズリがヒスイと同様に、蛇紋岩メランジュ中の岩塊として産出したものと推察している。
これまで、糸魚川市の海岸でラピスラズリの小礫が採集された事例はあったものの、海岸でのイベントで撒かれた外国産の石と誤解され、詳しい研究が行われてこなかった背景がある。さらに、外観が似た別の青い石である「デュモルティ石」として誤認されたり、他から持ち込まれた転石とみなされたりして、長年見逃されていた可能性が高いという。
詳しい研究成果については、本年9月に開催される鉱物科学会総会で講演される予定である。現地の河床は融雪や洪水などで様相が激しく変化するため、昨秋に行われた調査では新たな目的物の確認には至らなかったが、引き続き現地調査が予定されており、今後のさらなる発見が期待されている。
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