中国とネパールの国境地帯で大規模な土石流が発生したが、中国共産党(中共)が被害の実態を隠しているとの批判が出ている。在中国アメリカ大使館は、中共に対し、チベット自治区の吉隆国境検問所の出入境記録を引き続き提供するよう求めている。一方、官製メディアが示した説明について、「荒唐無稽だ」との批判が出ている。
米国大使館 吉隆国境検問所の記録提供を要求
9月3日、在中国アメリカ大使館は「チベット洪水災害の最新状況」とする情報を更新した。
大使館は、8月26日に発生した土石流について、被害状況や捜索活動の進展を注視していると説明。中共に対し、捜索・救助活動、犠牲者の遺体収容や身元確認の状況、現在チベット自治区に滞在する旅行者の出境に向けた対応などについて情報提供を求めた。
また、被災した外国人の身元確認の方法や、現在の捜索・救助活動の進捗についても情報を求めている。さらに、吉隆国境検問所の詳しい出入境記録についても、引き続き提供するよう中共に要請している。大使館は、この地域に自国民がいる各国政府とも連絡を取り合っており、確認の取れた情報が得られ次第、関係する家族に伝えるとしている。

大使館が「引き続き求めている」と表現したことから、中共がこれまで吉隆国境検問所の詳しい出入境記録を提供していないことを示唆する表現だとの見方も出ている。
これに対し、中共官製メディア「環球時報」は3日、米側が吉隆国境検問所の出入境記録を求めていることについて、「無理な要求であり、意図的な難癖だ」と批判した。
同紙は、被災地では「インフラや人員名簿などが広範囲にわたり損壊した」とし、関連記録が「すでに失われている」と説明した。
電子化が進んだ現在、紙の「台帳」が失われたことを理由とする説明に対し、ネット上では「此地無銀三百両(隠そうとして、かえって疑いを深めること)」だとの皮肉が相次いだ。
あるネットユーザーは、「吉隆国境検問所の土石流で、全国ネットにつながる電子出入国管理システムまで壊れたというのか」と揶揄した。
ほかにも、「中共は事故の死傷者数を意図的に隠している。恥ずべき政府だ」「中共のせいであまりにも多くの人が死んだ。だから記録を封鎖し、国家機密を口実に提供を拒んでいる。その卑劣な腹の内は、もはや誰の目にも明らかだ」「中共はなぜ何かあるたびに隠そうとするのか。いったい何を恐れているのか」など、厳しい批判が寄せられた。
土石流の発生後、中国本土メディアは、災害直前に吉隆国境検問所で通信障害があったとは報じていない。
北京時間8月26日午前10時59分ごろ、吉隆国境検問所に設置された2台の監視カメラが、土石流が施設をのみ込む瞬間を捉えた。この映像はまもなくネット上に拡散した。
ネパール側には残る完全な電子出入国記録
映像を見る限り、土石流が到達する直前まで監視カメラは正常に作動しており、外部との通信も維持されていたことがうかがえる。
一方、ネパール側には、災害当日の出入境の電子記録が完全な形で残っている。
8月26日、吉隆国境検問所の対岸にあるネパール側の国境施設も、吉隆国境検問所とほぼ同じ時刻に壊滅的な被害を受けた。
BBCは9月1日、ネパール移民当局の電子記録によると、災害当日の午前中に89人が出国手続きを終えてチベットへ向かい、別の4人がチベット側からネパールへの入国手続きを行っていたと報じた。
最後に記録された手続きは、ネパール時間午前8時35分3秒だった。北京時間では午前10時52分にあたり、吉隆国境検問所が土石流に襲われるわずか7分前だった。
ネパール当局によると、当日朝に出国した外国人には、インド人32人、中国人12人、アメリカ人9人のほか、イギリス、カナダ、オーストラリア、イタリアからの旅行者も含まれていた。
報道によると、当日は同国境検問所の移民局職員5人が行方不明となった。このうち4人の遺体が下流で発見され、女性職員1人は現在も見つかっていない。
また、同日、職員1人が試験を受けるため首都カトマンズに滞在しており、同事務所の職員で唯一難を逃れた。
この職員によると、ネパール側の国境施設は午前8時に業務を開始したため、午前中に出国手続きを終えたのは89人だった。
しかし、当日の国境付近は非常に混雑しており、現場では約300~400人が出国を待っていたほか、中国側から到着し、ネパールへの入国を待っていた人もいたという。
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