【分析】中国ロボット産業 活況の裏で露呈する「技術・資本バブル」

2026/10/23
更新: 2026/10/23

中国共産党政権がハイテク産業の育成を政策的に推進するなか、ロボットのメーカーが相次いで誕生している。一方、株式上場を目指す企業が列をなす半面、経営破綻に追い込まれる企業も続出するという異例の事態が起きている。専門家らは、ロボット業界で技術と資本の両面にバブルが生じていると指摘している。

中国のロボットメーカー、宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)は今月21日、新型の個人向け警護ロボット(H2 X功夫伝奇守護者)を発表した。人型ロボットで、強盗などの被害に遭った際に持ち主を守ることを想定している。車を持ち上げ、車の下敷きになった人を救出することも可能だとしている。

ただ、同社の創業者兼最高経営責任者(CEO)、王興興氏は、今年の世界ロボット大会に出席した際、現状のロボットは簡単な作業の一部をこなせるものの、作業効率は依然人間に及ばないと認めている。特定の環境で十分な訓練を積めば、作業の成功率はほぼ100%に達する場合もあるが、扱う物品を変えたり、周囲の環境をわずかに変えたりするだけで、成功率は大幅に低下するという。

中国の工業情報化部に直属するシンクタンク「中国信息通信研究院」が公表した最新の報告書も、ロボットの応用範囲を広げ、安定した収益モデルを確立するには、なお多くの課題が残されていると認めた。技術の実演と、実際の現場への導入・納入との間には、明確な隔たりがあるとしている。

中国のロボット業界は現在、活況と淘汰が同時に進む二極化の様相を呈している。政府の政策支援を背景に企業が急増し、報道によると、今年7月までに50社が株式上場に向けた手続きに入った。上場して株式市場から資金を調達しようと、順番を待つ企業も少なくない。

2026年1〜8月のロボット分野の資金調達額は1245億1000万元(約2兆7000億円)に達し、2025年通年の2倍となった。

その一方で、破産や事業撤退に追い込まれる企業も相次いでいる。裁判所の公告などの公開情報によると、昨年2月から今年9月までの19カ月間に、少なくとも11の分野で20社を超えるロボット企業が破産、解散、清算、または事業部門の閉鎖に至った。

代表的な事例が、深蘭機器人(上海)有限会社の市場撤退だ。上海市にある裁判所は同社の破産清算を正式に受理し、専門機関を破産管財人に選任した。

公開資料によると、同社はかつて業界で大きな注目を集め、商業施設向け清掃ロボット、スマート配送ロボット、感染症対策用消毒ロボット、産業用協働ロボットなど、幅広い製品を投入してきた。各種業界展示会にも頻繁に出展し、製品の実演を通じて市場の関心を集め、中国国内のロボット国産化と知能化をけん引する有力企業とみられていた。

また、深セン市の中級人民法院は、深圳のロボットメーカー「盈合机器人」に対する債権者の破産清算申し立てを受理した。同社は10月19日、初回の債権者集会を開いた。2020年3月に設立された同社は、最盛期には企業価値が5億ドルに達し、出資者には中国の大手フードデリバリー企業、美団(メイトゥアン)や、短編動画アプリ「抖音(ドウイン)」を運営する字節跳動(バイトダンス)、地方政府系の国有資本などが名を連ねていた。

こうした状況について、時事問題の評論家、夏言氏は、政策の後押しを受けて多数のロボット企業が誕生したものの、政府補助金の獲得や投資資金の呼び込みを主な目的とする企業もあると指摘する。

また、多くの企業が製造するロボットは見かけ倒しで、実用的な価値に乏しいとし、中国のロボット業界で起きているのは、政策によって生み出された見せかけの繁栄にすぎないとの見方を示した。

中国の産業・ベンチャー投資分野のメディアも、最近のロボット企業の倒産ラッシュについて分析し、業界に潜んでいた二つのバブルが一気に表面化したと指摘。一つは、実用化に結び付かない「技術バブル」、もう一つは、意図的な虚偽や誇張によって企業価値を演出する「資本バブル」だという。

同分析によると、多くのロボット企業は継続的な資金調達を前提に成長してきた。研究開発費や人件費、生産コストを外部資本で賄い、自力で営業キャッシュフローを黒字化できていない企業も多い。

資金調達が容易な局面では、企業は事業を拡大し、業務領域を広げ、実証用のモデル事業を次々と展開できる。しかし、投資家の姿勢が変化して資金調達が難しくなると、手元資金に余裕のない企業は急速に資金繰りが行き詰まる。

将来性への期待に基づいて資金を投じる投資家がいても、実態を伴わない繁栄を市場がいつまでも支え続けることはできない。こうした構造が、上場を目指す企業が相次ぐ一方で倒産も続出するという、中国ロボット業界特有の二極化を生み出している。

任義