北朝鮮の核兵器備蓄は過去4年間でおよそ2倍=報告

2021/06/15
更新: 2021/06/15

ニューヨーク・タイムズ紙の報道では、米国の衛星画像により一時期は活動が停止されていた北朝鮮・寧辺の核燃料施設「寧辺核施設」の主要領域における熱パターンがここ数か月で上昇していることが確認された。さらに、北朝鮮の核兵器備蓄は過去4年間でおよそ2倍に増加しているという。

未だに解決の糸口がつかめない北朝鮮の核兵器問題については、米国のジョー・バイデン(Joe Biden)大統領と韓国の文在寅(Moon Jae-in)大統領も「深い懸念」を表明している。両大統領は北朝鮮に圧力をかけることで非核化の取り組みに再び焦点を当てることを確認し合った。

米政権は同取り組みを推進するために、新たに北朝鮮担当特使を任命している。 AP通信が伝えたところでは、2021年5月にワシントンDCで開催された米韓首脳会談の後に文大統領は、「両国が取り組む必要のある最も緊急の共通課題は『朝鮮半島』の完全な非核化を達成して恒久的平和を確立することである」と述べている。 一方でバイデン大統領は完全な非核化を協議および実現するために、「適切な条件が整えば」北朝鮮の金正恩(Kim Jong-un)総書記(最高指導者/2021年1月に総書記に就任)と会談する意向を示した。

CNBCニュースによると、慎重な姿勢を示したバイデン大統領は、「金正恩総書記が会談を持つことを誓約し非核化について論議することに同意するまで米朝首脳会談を行う意思はない」とし、「前政権の真似はしたくない(注:ドナルド・トランプ[Donald Trump]前大統領の北朝鮮に対するアプローチと米朝首脳会談を指す)。

また、バイデン大統領は「北朝鮮が望んでいる『正当な国家としての国際的認識』を褒美として与えるつもりも、金総書記が実際には全く真摯に捉えていない事態をさも真剣に受け止めている指導者のように振る舞う『茶番劇』を繰り広げるつもりもない」と話している。

朝鮮半島統一に関する透明性と理解を促進することを目的として設立された戦略国際問題研究所(CSIS)韓国委員長プログラムが運営する北朝鮮専門サイト「ビヨンド・パラレル(Beyond Parallel)」によると、北朝鮮が核兵器計画に熱を入れ始めた1960年代から主要施設として運用されていた寧辺核施設(寧辺原子力研究センター)を撮影した赤外線衛星画像により、2021年3月と4月に同施設の建物の暖房や運転支援システムなどが再稼働されたことが明らかとなった。

ビヨンド・パラレルが2021年4月に発表した報告書には、「数か月から長ければ数年の間、一般的な活動が行われていなかったこの原子力研究施設は現在、北朝鮮の核兵器用核分裂性物質の在庫を増やすために使用済み核燃料からプルトニウムを生産する新たな再処理活動に取り組んでいるか、またはその取り組みの準備を整えていると考えられる」という。

そして「当機関が3月の報告書で発表したマルチスペクトル画像およびその後数週間の別のスペクトル画像により、主要な再処理工場に隣接する他の核燃料関連施設からかすかに蒸気や煙が立ち上っている様子が確認できるが、施設の再稼働を示す証拠はこれだけではない」と記されている。

ビヨンド・パラレルの報告書によると、3月と4月に撮影された熱画像を2021年1月の衛星画像と比較した結果、遠心分離プラントの上に見られる熱パターンが増加しており、「研究室エリアと北側に位置する火力発電所や実験室の複合施設に中程度から重度の熱パターンが新に出現した」ことが判明している。

ナショナル・インタレスト誌が伝えたところでは、現在米国太平洋陸軍の司令官を務めるポール・ラカメラ(Paul LaCamera)大将などの軍隊幹部等は北朝鮮が非核化に向けた措置を講じていないという見解を示しており、今回の同サイトの調査結果はこの軍隊の主張を裏付ける要素となった。

バイデン政権により次期在韓米軍司令官に指名されているラカメラ大将は、北朝鮮が核兵器庫や核兵器製造機能を放棄する可能性は低いと述べており非核化を実現するためには制裁よりも厳格な措置を加えることを推奨している。

同誌の報道で、ラカメラ大将は「[北朝鮮]政権に有意義な交渉を続行することを納得させるには、国力と国際社会すべての要素を合体させた政府全体のアプローチと経済制裁を組み合わせて用いる必要がある」と主張している。

2021年5月下旬にバイデン政権から北朝鮮担当特別代表(北朝鮮担当特使)に任命されたソン・キム(Sung Kim)駐インドネシア米国大使は、米国の対北朝鮮戦略を微調整する責任を担う。NKニュース(NK News)によると、キム米国大使は引き続き大使としての役割も担いながら新たな任務の責任を果たしていく予定である。

キム大使はバラク・オバマ(Barack Obama)政権下で北朝鮮核問題を巡る多国間協議の担当特使を務めた経歴を持つ。

CNBCニュースの報道では、キム米国大使が北朝鮮担当特別代表に任命されたこと、およびバイデン大統領が朝鮮半島の非核化について強力な意見と継続的な取り組みを表明したことを歓迎した文大統領は、「世界諸国は米国の復帰を歓迎しており、これまで以上に米国の指導力・先導力に高い期待をかけている」と述べている。 

(Indo-Pacific Defence Forum)

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