中国 現場責任者が語った決壊前24時間 相次ぐトラブルが明らかに

中国広西洪水 ダム決壊の舞台裏 取材記事が翌日削除

2026/07/17
更新: 2026/07/17

「村ごと流された」。

中国・広西チワン族自治区の大洪水で、当局は死者39人、行方不明9人と発表した。

一方、現地では「被害ははるかに大きい」との声が相次ぎ、「千人規模の犠牲者が出ている」とも言われている。

被害は、なぜここまで拡大したのか。

その原因を探るため、中国メディア「南方週末」は7月14日、ダムの現場責任者への取材記事を公開した。しかし、記事は掲載翌日に削除された。

記事では、豪雨だけでなく、放流ゲートの故障や工事の不備、対応の遅れが被害を拡大させた可能性が示されていた。

 

六藍ダムの堤体が約50メートルにわたって決壊し、濁流が下流の村々をのみ込んだ(2026年7月6日、中国広西チワン族自治区横州市、ネット映像より)

 

相次いだ故障と対応の遅れ

現場責任者によると、大雨で水位が急上昇した5日夜、5基ある放流ゲートは故障のため十分に開かなかった。

下流で洪水が起きるのを避けるため、当初は放流量も抑えられた。その間にも水位は上がり続けた。

未明には、上流の観測所から水位データが届かなくなった。現場では、水位計を目で確認するしかなかったという。

その後、放流ゲートは次々と故障した。さらに、上級機関の指示が出るまでゲートを全開にできず、午前5時過ぎにようやく全開放流が認められた。しかし、その時には水位は危険な高さに達し、操作室では大きな揺れも感じられていた。

さらに、本来は非常時に壊して水を逃がすための堤防も機能しなかった。

この堤防は洪水時の水圧で崩れるよう設計されていたが、長年にわたり大型トラックが通行したため地盤が固まり、簡単には壊れない状態になっていたという。

人の手で堤防を壊すには上級機関の許可が必要だった。責任者は上級機関や市長に何度も電話をかけたが連絡は取れず、衛星電話もなかったため、堤防を壊して水を逃がすこともできなかったという。

午前9時20分、水位は過去に例のない高さに達し、ダムは決壊。決壊口から大量の濁流が下流の村々へ流れ込み、甚大な被害をもたらした。

 

記録的な豪雨で六藍ダムが決壊。幅約50メートルの決壊口から濁流が一気にあふれ出し、下流の集落をのみ込んだ(2026年7月6日、中国広西チワン族自治区横州市、スクリーンショット)

 

完成検査を終えていなかった補強工事

ダムでは2009年に補強工事が行われた。しかし責任者によると、この工事は正式な完成検査を終えていなかった。

2020年の安全評価報告書でも、雨量観測システムの故障が改善されていないことや、安全確認を人の目に頼る旧式の管理体制が指摘されていた。

それにもかかわらず、現地の水利当局は2025年、このダムが「問題のあるダム」から「模範的な施設」に生まれ変わったと宣伝していた。だが、現場責任者の説明が事実であれば、実際には問題が解決されないまま運用が続けられていたことになる。

放流ゲートの故障、観測システムの停止、緊急時にもつながらなかった上級機関、機能しなかった非常放流用の堤防、完成検査を終えていない補強工事、全開放流の判断の遅れ…

いくつもの問題が重なった末、ダムには幅110メートルもの決壊口が開いた。そこから大量の濁流が勢いよく噴き出し、下流の村々を一気にのみ込み、壊滅的な被害をもたらした。

豪雨は避けられない。しかし、設備の故障や判断の遅れ、管理体制の不備など、現場責任者の説明が事実なら、この大洪水は「防げたかもしれない災害」だったということになる。そして、その事実を伝えた記事は封殺に遭った。

事故を直視し、原因を究明し、教訓を生かさなければ、同じ悲劇は繰り返される。実際、中国では、同様の悲劇が毎年のように繰り返されている。

 



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李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!