中国では本来、夏休みは1年で最も旅行客が増える書き入れ時だ。しかし今年は、その風景が大きく変わっている。
本紙記者が中国各地のホテル経営者や民宿オーナー、観光ガイドなど観光業者に取材したところ、「客が来ない」「去年とは比べものにならないほど暇だ」という声が相次いだ。
中国のSNSにも観光業者が現地の様子を撮影し、「観光客がいない」と訴える動画を数多く投稿している。現場からは、本来なら最もにぎわう夏休みとは思えないほど、閑散とした光景が広がっていた。
中国屈指の観光地として知られる広西チワン族自治区・陽朔では、民宿経営者が「20室あるホテルで宿泊客はわずか2組。去年の夏は満室だったのに、今年は本当に厳しい」と話す。
チベット自治区最後の秘境とも呼ばれる墨脱(メトク)でも、民宿の宿泊料金は前年の半額近くまで下がったが、それでも客足は戻らないという。
こうした状況は全国に広がっている。
世界遺産・西湖で知られる杭州では遊覧船に並ぶ列が消え、ガイドは「以前は人が車を待っていた駅が、今は車が客を待っている」と話す。
シルクロードを代表する観光地・敦煌では、砂漠の名所「鳴沙山・月牙泉」で撮影した動画が話題となった。ガイドは「観光客がいないので、ラクダも休める」と苦笑いしながら現地の様子を紹介した。
映画『アバター』のモデルとして知られる景勝地・張家界でも、夏休みの書き入れ時とは思えないほど観光客は少なかった。
中国有数のビーチリゾート・三亜や、「陶磁器の里」として知られる景徳鎮でも、「夏休みなのに客が来ない」と嘆くホテルや店舗経営者の動画が相次いでいる。
背景には、中国経済の低迷があるとみられる。旅行そのものを控える人が増えたうえ、旅行しても宿泊費や食費をできるだけ抑える「節約旅行」が広がり、ホテルや飲食店は客単価も大きく落ち込んでいる。
例年なら街にあふれる大学生の姿も少ない。今年は就職活動を優先したり、生活費を稼ぐため夏休みもアルバイトを続けたりする学生が増えているという。「旅行に行く余裕がない」という現実は、若い世代にも広がっている。
中国当局は国内旅行者数が増えたと発表している。一方、本紙が取材した観光業者や、各地で公開している現場の動画からは、客足の鈍さや消費の落ち込みを訴える声が相次いでいる。
本来なら年間で最も稼げる夏休みにもかかわらず、全国の有名観光地で広がる閑散とした光景は、中国経済の厳しい現実を映し出している。
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