ハリケーン襲来で助け船失った胡錦濤政権

2005/09/16
更新: 2005/09/16

【大紀元日本9月16日】ホワイトハウスの公表によると、ハリケーンカトリーナによってもたされた災害のため、米ブッシュ大統領及び胡錦濤・中国国家主席が9月7日に行われる予定であった正式な面会が「無期限に延期」され、9月14日から16日に国連首脳会談の会場で会合するようになった。

胡氏の訪米を、中共は一方的に「国賓訪問」と称していたが、他方、米側は、「国賓訪問」ではないと強調した。ホワイトハウスは閲兵式と礼砲をもって胡氏を迎えるが、国賓訪問を象徴するホワイトハウスでの晩餐会と共同声明は執り行わないとしていた。

ワシントンのシンクタンクによると、在米中国大使館は胡氏の訪米の性質と待遇について物議をもたらしたが、米側は非常に不可解を感じていた。中共の高層部は三つの現勢力、すなわち江沢民派、曾慶紅派及び胡錦濤派とに鼎立しているため、胡錦濤氏は米国と直ちに黙約を結ぶことで、つまり、米国の支持を獲得することで、中共を救う必要があったと考えられた。

中共の言う国賓訪問とは、赤の絨毯、礼砲、宴会、共同声明及び議会演説などの高度な体面工作により、全世界にあたかも米国は胡氏及びその権力を絶対的に支持しているかのように伝えることである。これは中共にとって自己救済するための強心剤でもある。たとえ米国が「国賓訪問」と称さなくとも、もし21発の礼砲による歓迎儀式さえあればまだまだ申し開くことができると考えられたが、このハリケーン「カトリーナ」は、米国を利用することで自己救済を狙った中共の策略を無にしたのである。

米国内部における見解の不一致

ホワイトハウスからの情報によると、中共のための21発の礼砲というもてなしに関して、米内部で見解の不一致が生じた。その相違点は主に国務院と国防省間に集中している。

中国人民解放軍国防大学防務学院院長・朱成虎少将が7月15日、米政府が台湾海峡での武力紛争に介入した場合、核攻撃も辞さないという発言を行い、アメリカ社会と世論に衝撃を与えた。

この衝撃のため、米国務院が中共との「協力」における妥協態度をいっそう強めることで、できるだけ中共の「怒りを買う」ことを避けようとした。しかし、米国防側では中共に対する強硬策を主張した。ドナルド・ラムズフェルト国防長官は、朱成虎少将による核脅威論発表の数日後に、半年以上も延期されていた中国軍事評価の報告書を議会に提出した。

大災難の到来を意識する中共

専門家の分析によると、胡政権は訪米を前にして核脅威論を放ち、その中で「西安より東の土地と人命を犠牲にする覚悟」と明確にしたのは、中共と協力するよう米国を脅迫し、国際社会が中共を受け入れるという状況を作り上げることで、中国国内で直面している政権危機を遠ざけることを狙っていたのである。

「中共が核という切り札を投げ出したことから、すでに大きな災難が目前にあることを意識し、やむを得ずこの策にでたことがわかる。中国大陸で爆発した脱党のブームはその統治を直接脅かしたからである。これは中共による50年にわたる統治の中で、始めておきた大規模な脱党ブームである」とワシントン在住・中国問題専門家の石蔵山氏は言う。

本年、『九評共産党(共産党についての九つの論評、以下九評)』によってもたされた脱党の潮流が広がるにつれて、中共はますます脅威を感じるようになった。特にその政治、経済、道徳、生態系の環境における危機に比較して言えば、『九評』はその統治基礎を瓦解し、中共の死の神経を直接触れたのである。

中共は『九評』に対して公式な見解を避けているが、胡氏はすでに「煙なき戦争」をやる決意に踏み込んでいる。当初の江沢民が法輪功問題に直面したことに代わり、今度は胡錦濤が『九評』や脱党ブームに直面し、同じく重大な岐路の入り口に立っている。中共は『九評』の拡散防止、脱党ブームの拡大阻止を党の最大事まで格上げたのは、中共による法輪功弾圧の戦略に続いた、初の重大な戦略上の調整である。かつて法輪功を弾圧するその大きな骨組みを、『九評』と脱党を弾圧するように換えたのである。

目下のところでは、中共はかつて法輪功に対する一連の手法で『九評』や脱党に対処している。例えば、できるだけ秘密裏に弾圧し、表では何事も起こっていないようなふりをし、不法逮捕、労働教養、処刑及びその他の口実で一時しのぎをしている。

『九評』がすばやく広がり、民衆がこぞって中共から離脱することを選択した潮流の下で、以前から潜在していた社会の種々な矛盾も激化し始め、胡錦濤の執政における圧力も頂点に達した今、中共の統治はさまざまな異変に満ちている。

国賓待遇が自己救済の核心

2003年6月、当時の国家副主席の胡氏はブッシュ大統領からの訪米の誘いを受け、また2004年末にライス国務長官はまた北京に向けて、大統領が胡氏の訪米を重視すると伝えた。そこで胡氏はそれを中米関係の切り札として、肝心なときには米国の支援を獲得することを狙っていた。

『九評』と脱党ブームの下で危機存亡にある中共は、ついに6ヶ月前にこの切り札を投げ出して、米側と胡氏の訪米に関して協議することで、米国の救命浮き輪による中共への救済を企てていた。

赤の絨毯、礼砲、宴会、連合声明、議会演説などの体面工作を通して、全世界にあたかも米国は胡氏とその政権を絶対的に支持しているかのように宣伝することが、胡政権への強心剤だった。

この手はずさえ整えば、中共は米国のその巨大な影響力を利用して、その他の周辺諸国を自分の歩調に引き込み、世界規模で『九評』と脱党ブームに対する囲い込みを完成することができ、国内でおもうがままの乱暴な手段を実行しても憚ることがないのである。

今回の訪米のため、胡氏はすべてを考慮し半年以上の話し合いをしてきた。大小多数の商務代表団が、予め米国で投資環境を視察し、胡氏に勢いをつけるために莫大な人数の訪中団を準備した。それと同時に数十機のボーイング飛行機を購入し、人民元も切り上げた上、法輪功学習者二人の刑期を繰り上げて釈放することで人権問題に配慮した。

それに留まらず、海外でも念入りな策を立てて、服装及び労務費を参加者に分配し、大量の資金を投入して歓迎チームを組織したのは、米国で胡錦濤が非常に歓迎されているという印象を民衆に与えるためであった。ニューヨークでは平日に3000人の歓迎チームが組織され、ワシントンDCのある団体は旅行や料理をだしに人々を引き寄せる策略を実行していた。

それでも米国中で高まる反共の叫び声の中で、国事訪問はなしのつぶてとなってしまった。しかし中共は外部に対して依然と「国賓訪問」と宣伝していることからも、その偽物を本物に作り上げる執着は非常に大きいことが分かる。どうであれ、胡錦濤には赤の絨毯、礼砲、正午の宴会とホワイトハウスでの会談、そして歓迎する人の群れ、巨大な商業協議や巡回演説がある。その上に世界中のメディアの焦点となるため、中共は米国の救命浮き輪を獲得するのに自信満々であった。

ハリケーン到来、計画が逆効果をもたらす

胡錦濤の訪米直前、おもわぬハリケーンが到来し、米国は数日の沈黙を保った後、9月3日、ブッシュはついに胡氏に電話をかけ、訪米の計画を謝絶したのである。その理由とは米国の南部3州に重大な災害があったため、面会する時間がないからであった。この決定は胡氏にとって大きな打撃となり、中共からみれば大きな「失望」であったことは疑いを待たない。訪米のためのすべての「準備」、例えば人民元の切り上げ、50億の資金投入でボーイング飛行機を購入したことがすべて無に帰した。

胡氏は米国からの救命浮き輪を狙って、中共を救うためにすでに9ヶ月間もかけた救済計画が、天候異変のため水泡に帰した。

中共はまさに米国の人類の尊厳に対する信念を挑戦しようとしている。自分たちの作り上げた経済の仮装を利用して、経済利益を通して人権に対する外からの批判の声を封じている。米国をはじめ、西洋陣営の無視と不注意がもしこのまま続ければ、必ず人類社会に大きな災いをもたらすことになる。なぜなら中共の影響しうるところには、必ず人権と自由の萎縮と死を意味しているからである。

今日、全世界が見たように、米国の中共に対する冷遇の末、胡氏の訪米にならず、まさに計画されて久しい黒馬の株のように、最初の相場から、株価が下がって終わった。すべては胡氏の計画が逆効果をもたらしたのである。胡氏の訪米をとりまく今回の動きでも、その政治生命には異変で満たされていることが予見できる。

(大紀元特約評論員・史山、張潔蓮)