望むのは富か安全な暮らしか 中国人が裕福になりたい訳

2011/07/29
更新: 2011/07/29

【大紀元日本7月29日】中国人の多くは、裕福になりたいという願望を持っている。しかし決して金持ちが中国で好かれているわけではない。

「仇富(チョウフ)」。これはネット上で流行する中国語で、裕福な人間に対する嫉妬、憎悪を意味している。今、中国で、この言葉で表現できる事件・事故を至る所で目にすることが出来る。

一部の経済専門家によると、この「仇富」を人々に与える事件が発生するのは未成熟社会の象徴であり、30年前の改革開放政策実施から今日のような発展までのプロセスに過ぎない、と分析する。

しかし「発展までのプロセス」で締めくくるにはあまりにも極端な事例が多い。先日、多数の死傷者を出した中国高速鉄道事故では、詳細な事故原因の検証もなく事故車両を現場近くに埋め、さらに犠牲者遺族に対して、異例の早さで通常の交通事故の3倍もの慰謝料を当局は支払った。中央の置かれる北京市中南海では、真相究明を求める遺族らが押しかけ、混乱が起こっている。この隠蔽体質は、社会が成熟するなかで改善されるのだろうか。人気作家・韓寒氏は同事件について「改革を行わないと、社会全体が『脱線』し、手遅れになる」と警鐘を鳴らす。

中国監察署の調査によると、鉄道部のある局級幹部は18もの企業で代表取締役を勤め、富を吸い上げていたことが明らかになった。また当局の別の調査では、7割以上の市(県)級幹部に男女関係の問題があるとし、一部では汚職幹部の「愛人所持率」は100パーセントに達するという。市民はネット上で、「どこかの高官のスキャンダルだとか、汚職だとかを聞いても多すぎて驚かない」とはき捨てた。

噂を含む情報と共に、人々の不満と憎悪をあっという間に拡散するミニブログ「微博」では、しばしば、高級カーを乗り回すような温室育ちの若者たちがその「ターゲット」にされる。

先日、ネット上で、高級外車やブランドグッズに囲まれたセレブライフを堂々と自慢していた郭美美(20)だが、微博ユーザーの情報追求により「赤十字商会の商業総経理」という要職の身分であることが暴露された。たちまち義援金横領の疑いが広がり、後に微博で行われた「(中国)赤十字に募金しますか」のアンケートには、回答者7000人のうち9割が「ノー」と答え、事件は社会変化をもたらした。

「俺の親父は局長だ」。父親の権威を笠に着て自分の立場を証明しようとする、「官二代(幹部の2代目)」の甘さを侮蔑する際に使われるこの有名なキャッチフレーズが生まれた事件は、2010年12月に起こった。河北大学キャンパス内で、飲酒運転していた李啓銘は同大学女子学生をひき、死亡させた。逮捕時、自分に特別措置を計らうようにと、地元公安局の副局長である父親・李剛の名前を叫んだという。その後、ネット上では「親父は主任だ/署長だ/総経理だ」などの言葉が流行した。

2010年には、李剛の息子の事件に加えて、若者と車に関連したもう一つの凄惨な事件が起こった。当時、西安大学の学生だった薬家鑫(21)は若い女性を車ではねた後、車から降りて、まだ息のあるその女性を持っていたナイフで何度も刺して殺害した。交通事故の場合、被疑者側に賠償責任が課される中国で、薬被告は「カネを被害者に吸い上げられてしまう」と考え、殺人で交通事故を「なかったこと」にしようとしたのだ。

事件の裁判で証言した目撃者は、「カネに取り憑かれた中国人は、命の尊厳を理解する心まで失った」と嘆いたという。薬被告には死刑が言い渡され、6月に執行された。

 富裕層は「国外脱出」

大陸内で憤怒の声が高まる中、富裕層は「国外脱出」と、海外不動産投資を選んでいる。

最近発表された、経営コンサル企業ベイン・アンド・カンパニーの調査によると、資産総額1000万元の中国人個人投資家の6割は、すでに海外に移住している、あるいは検討中だという。また、50万人いるとされる1億元以上の超富裕層クラスでは、投資移民として海外移民を既に果たしている。

さらに同調査によると、90%以上の富裕層は中国国内の投資をこれ以上増やさないと回答している。フィリピンへの不動産投資ツアーに参加した資産家の趙さんは「国内不動産はすでに先が見えない。海外へ財産を移している」とNHKのインタビューに答えた。上海や深センなどの都市では海外移住計画を案内する見本市が頻繁に開催されている。

国内不動産に人気がないのは、建築物の基礎工事や安全性に問題があることが指摘されているからだ。16日付けの香港紙・南華早報によると、中国では不動産バブルに合わせて住宅建築件数が急増したものの、作り手である建築業者側に、熟練の技術者や専門的な知識を持った人材がかなり不足しており、手抜き工事も少なくないという。

そもそも投資用に建てられた不動産は材料費の掛からない「コンクリの塊」であり、住宅の寿命はわずか20年とされている。壁のヒビや窓の格子のサビ、下水の臭いなど、築5年の建物がすでに30年経ったような廃ビルの様相に見えるのは、材料が粗悪だからだ。快適でない住宅に、誰も住もうとしない。

ある程度の財産を蓄えた後、海外への「脱出」を選択するのだから、中国の富裕層は一定レベルまで達すれば飽和状態になる。米シンクタンク・ストラトフォー代表、ジョージ・フリードマン氏の著書『次の10年』の世界経済予測では、中国は「年間所得15万元を超える層が6000万人余りに達するが、国内貧困問題を解決できずに経済成長は停止」とされている。

 土台となった人々

上海スタンダード・チャータード銀行の李ウェイ氏はBBCに対し、「たとえ中国が今以上に豊かになったとしても、何億もの人がその踏み台となる」と述べる。

そびえ立つ上海一の高層ビル、ワールドフィナンシャルセンター。ここから街を展望すれば、あたかもスタイリッシュなホワイトカラーが闊歩する国際的な経済都市のように見えるが、よくみると異なる世界があるのに人々は気がつく。駐車場や交通整理の不足で起こる酷い渋滞、排ガス、さらによく見ると地べたに座り込む工事現場の作業員や剪定作業員、靴磨き、物乞いの姿。

海外、とくに欧州から中国都市部を訪れた人々は、中国の貧富の極端なギャップの象徴として撮影するものがある。それは、メルセデス・ベンツやフェラーリなどの高級車が停まっている北京の道路の前をゆく、粗大ゴミを積んだボロボロのリアカーだ。同様の写真がメディア投稿サイト、フリッカーに数枚掲載されており、仏紙ルモンドのカメラマンもこの対象を撮影し、16日付けの中国関連の記事写真に使用している。

90年前、中国共産党が政権を取った当時の風潮と全く異なって、現在の中国人は富を憎んでいるわけではない。改革開放から現在までの30年で財を築いた人々は、さらなる富を渇望しているだろう。しかし、平凡ながら安全な暮らしを望む中国人も決して少なくない。誰も、突然住宅が強制立ち退きに遭い、一晩で取り壊されて一文無しになってしまうような社会で生きていたくはない。

安全な暮らし。ただそれだけを手に入れるためにも、中国人は裕福になりたがっている。

(翻訳編集・佐渡 道世)
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