中国の浸透工作に直面するカナダ…「あまりにもウブ」作家が警鐘鳴らす

2022/06/14
更新: 2022/06/14
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「カナダは、共産主義の中国による継続的なスパイや内政干渉活動を甘く見ている。また、政治家も故意にその脅威から目を背けているため、カナダは民主的同盟国からの信頼を失っている」ー。6月7日のパネルディスカッションでカナダの専門家は発言した。

受賞歴のある調査報道ジャーナリストでもあるサム・クーパー氏は、昨夏に出版した著書で、中国共産党の腐敗した政治家たちが、カナダのギャングやカジノを利用して、不正な麻薬取引などの国際犯罪行為で得た汚い金を洗浄(マネー・ロンダリング)していることを暴露した。

クーパー氏自身も北京に目をつけられていたという。「カナダの情報当局から、私に関する情報を北京のスパイが集めていると警告を受けた」と明らかにした。

自著の第2版発売を記念して行われたパネルディスカッションで、クーパー氏は「私の本に対する大衆の反応や、中国共産党にダメージを与える可能性があるかどうかを、北京は知りたがっていた」と語った。

このイベントはマクドナルド・ローリエ研究所が主催し、保守党のアダム・チェンバース議員や、トロントに拠点を置く世界的な汚職防止非政府連合であるトランスペアレンシー・インターナショナル・カナダのジェームス・コーエン事務局長らがパネリストとして参加した。

クーパー氏は、「自分が中国共産党のスパイ活動のターゲットにされていたことを知ってショックだったが、共産党政権の統一戦線工作部がこの書籍を脅威と感じたことには驚かなかった」と述べた。

クーパー氏の本のタイトルは『Wilful Blindness(故意の無知): ナルコス、タイクーン、中国共産党代理人のネットワークが、いかにして西側に潜入したか 』と題した本である。共産党高官とブリティッシュコロンビア州のマネーロンダリング容疑者の関係を描き、カナダにおけるオピオイド(モルヒネ様作用を示す合成麻酔薬)危機を煽り、不動産価格を高騰させた刑事訴訟についても述べている。また、中国の国営企業がジャスティン・トルドー首相の家族財団に何十万ドルも寄付していたことも明らかにした。

2021年カナダ連邦選挙における誤情報について

2020年5月、バンクーバーにあるチャイナ・タウン入り口にある石像は何者かのスプレーペイントがかけられた。感染症拡大に関連してアジア人嫌悪が関連したとされる(Photo by DAVID P. BALL/AFP via Getty Images)

中国共産党の海外浸透作戦の最優先事項は、権威主義体制とその疑わしい行為に反対する声、特に華僑社会にある異見を排除することである。

クーパー氏によると、バンクーバーの中国系エリート界で統一戦線に関与している情報源の一つから、「政権批判者に対して、アジア系カナダ人に対する人種差別であるという主張に基づき、中国共産党の代理人が訴訟のための寄付キャンペーンを行おうと計画している」と警告してきたという。

クーパー氏は「私の情報筋によると、彼らは政府、政治家、記者、機関にロビー活動や圧力をかけ、中国系カナダ人の国民感情を扇動することができる有力な中国系組織に仕立てたいようだ」と語った。「彼らは、中国を批判する勇気のある人に対して(人種差別的などの理由で)訴訟を起こし、カナダの政府に多くの操り人形を選出したい 」のだと加えた。

同氏によると、この情報源からの警告は2021年のカナダ連邦選挙で現実のものとなった。2020年に統一戦線の不正に関する報道で、クーパー氏を攻撃していた同じソーシャルメディアグループが、今回、再選を目指す現職議員だった保守党候補のケニー・邱氏に対して、「偽情報工作の増幅」を始めたという。

中国民主化を推進する姿勢で知られ、中国共産党を率直に批判する邱氏は、2021年の選挙でブリティシュ・コロンビア州のスティーブストン・リッチモンド東地区で議席を失った。彼は以前の大紀元のインタビューに対し「過去にも誤情報のターゲットになったことはあったが、昨年起きたことは 例外的だった」と語っている。

邱氏は、議員立法である法案C-282を通じて、外国企業のために働く人々に外国代理人としての登録を義務付けることで、政治の透明性を高めようとした。しかし、この法案は、中国人コミュニティーの人々に「自分たちの利益に反する」と誤解させるよう、意図的に間違った表現がなされたという。

「邱氏は法案の中で中国の名前すら出していない。彼は反中国のレッテルを貼られ、中傷された」「カナダを擁護するものは北京の敵である。これらの勢力は邱氏を追い出すことに成功した」。

クーパー氏は、「同様の誤情報キャンペーンは、オンタリオ州リッチモンドセンターのトーリー議員であるアリス・ウォン氏をもターゲットにしていた」と指摘した。中国共産党の妨害ネットワークは、2021年の選挙で、バンクーバーとトロントを中心に、合計12の選挙区をターゲットにしていたという。

エリートをターゲットに

2022年初めに英国情報機関MI5が発表した、中国のエージェントであるクリスティン・チン・クイ・リー氏の事務所 (Photo by Rob Pinney/Getty Images)

クーパー氏は、「バンクーバーやトロントで見られた、中国共産党の欧米の政治エリートに対する現金による影響力、所謂エリート・キャプチャーは、他の民主社会でも行われている」と述べている。

彼は、2022年初めに英国の情報機関MI5が発表した、中国のエージェントであるクリスティン・チン・クイ・リー氏が、中国共産党のために、政治献金を通じて多くの英国の国会議員と関係を築いたことを示す報告書を指摘した。

しかし「MI5と異なり、カナダの情報機関は、同国の『厳しいプライバシー法とカナダ情報機関が運営する謎の政治的束縛』により、中国、ロシア、イランから外国諜報員が侵入していることについて公に警告することができない。中国共産党の統一戦線が、トルドー氏とカナダの全政党の政治家を狙っているとの驚くべき情報を、カナダ安全情報局が持っていたとしても、できないのである」とクーパー氏は指摘する。

「これは、情報収集という機関の任務の失敗ではない。彼らは最終的に政治的な上司に報告する。その政治的主体が鳴り響く警報に耳を傾けようとしない場合、情報機関にはほとんど打つ手がない。報告は葬られ、最終的には、情報機関はこれらの報告を作成することすら止めてしまうだろう」と、クーパー氏は情報機関からの情報を引用して語った。

「官僚は非協力的な患者に必要としない薬を届けて、キャリアを終わらせるようなことはしたくない」。

邱氏によると、「グレーター・バンクーバーにおいて、中国は、政治家候補、文化、企業という「3次元コントロール」を通じて、伝統的な社会の柱にまで影響力を持つようになった」ということだ。

「真実を語るべき人々が、中国に屈服させられたのだ」とクーパーは言う。

オタワの政治家については、「中国の脅威については、よくてもウブ」であり、多くの国会議員は近視眼的で微視的な懸念に焦点を当て、大局を見る他の議員は、「北京との甘い内部取引で私腹を肥やしている」と、邱氏と彼の情報源を引用して述べている。

「カナダは中堅国として失速している。ファイブ・アイズで相手にされなくなった。カナダは、民主主義と権威主義の間で激化する戦いのリーダーではないのだ」とクーパーは危機感をあらわにした。