中共浸透工作 日本も加盟する国際技術者組織に「一帯一路」「国防七校」

2022/09/01
更新: 2022/08/31
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日本やオーストラリア、ASEAN諸国など26カ国が加盟する「アジア太平洋技術連盟(FEIAP)」は、半世紀近い歴史を持つ、技術者のための国際的な非営利の専門家組織だ。しかし近年、「一帯一路」や中国軍事開発に関わる「国防7校」の関わりなど、中国共産党率いる構想を取り入れたトレーニング事業が導入されている。国際的な独立機関に対する中国政治の浸透に、専門家は懸念を示す。

FEIAPは1978年、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)世界工学団体連盟(WFEO)等の国際機関の支援により設立された。公式説明では「東南アジア及び太平洋地域のエンジニアリング技術及び学術の発展、平和の促進」のために、最高の専門家集団となることを目指している。日本では、文部科学省が管轄する日本技術士会がFEIAP正式会員として国際交流活動に携わっている。

しかし、近年、FEIAPには中国共産党の「一帯一路」を冠する「NPU-FEIAP Belt & Road Engineering Education Training Center(仮邦訳:西北工業大学とFEIAPによる一帯一路エンジニアリング教育研修センター、略称はNFTC)」事業が導入された。

FEIAPのウェブサイトに掲載されている説明によれば、「研修センターにおいて技術者育成に向けた認定研修を実施し、一帯一路地域とFEIAP加盟国経済圏に帰属する技術者(Engineer、Engineering Technologist、Technicianの3つに分類)間の流動性を高め、関係各国及び地域におけるエンジニアリング技術及び学術の発展に資する」とある。

FEIAPはアジア太平洋圏の技術者組織であるはずだが、一帯一路地域といった中国共産党の描く経済圏構想に組み入れられている。さらに、FEIAPの技術者を集めて研修を施すのは、中国軍事開発を担う「国防7校」の一つである西北工業大学(NPU)だ。同校が研修・宿泊設備、研修内容や機材などを提供するという。

中国共産党の軍事技術開発を担う大学で…

西北工業大学は、中国軍兵器や装備品の開発を進める中国国防部国家国防科学技術工業局の監督下にある7つの大学「国防7校」のひとつであり、国家予算の下、国内外問わず民間の先端技術を積極採用し、兵器開発を含む軍事力増強につなぐ党策「軍民融合」を牽引する役割を持つ。

西北工業大学は西部地区において歴史ある技術大学で、航空や宇宙を専門とする。戦闘機・殲20(J-20)をはじめ中国航空機開発に携わる技術者は、同校の卒業生も多いとされる。米国務省は中国の軍事開発に協力しているとして、「国防7校」すべてを制裁リストに加えている。日本の経済産業省も、大量破壊兵器等の開発などへの関与が懸念される組織として、同校を「外国ユーザーリスト」に指定している。

こうした中国共産党主導の政策が、東南アジア及び太平洋地域のエンジニアリング組織ための独立した統括組織であり、世界経済及び社会のための技術発展を後押しするFEIAPになぜ、取り入れられたのか。FEIAPに問い合わせたが、記事発表までに回答は得られなかった。

FEIAPの「一帯一路エンジニアリング教育研修センター」を策定したのは、2019年からFEIAPの代表を務める中国科学院の研究者・黄維氏である。FEIAPの代表に初めて就任した中国人科学者で、ロシアやパキスタンの国営科学研究所の役職も持つ。前出の西北工業大学の教授でもある。同校は公式にこのトレーニングプログラムを紹介しており、「一帯一路構想に積極的に対応し、民間技術の能力を吸収して、FEIAPと一帯一路構想を絶えず加速させる」と説明している。

国連の「持続可能」目標に一帯一路を組み込む

FEIAPと中国の接近について、日本や韓国などの技術士も懸念を示している。

「FEIAPの策定した技術者教育と認定ガイドラインによれば、技術者認定要件には『倫理原則』の項目が設けられている。価値観を無視しては、技術者の力量も監視や人権侵害などのネガティブな目的に使用されかねない」と匿名で大紀元の取材に答えた日本の技術士は危惧を示した。

このほか、韓国技術士からも「一帯一路エンジニアリング教育研修センターは、将来、FEIAPと中国の政治的なつながりを醸成するために利用されるだろう」と指摘している。

人権団体や米国務省の報告によれば、中国共産党はハイテクをはじめあらゆる技術を、少数民族や信仰団体、香港、台湾などの関係者に対する弾圧や情報窃取、監視、サイバー妨害などに使用している。

トップ就任 国際組織に浸透する

その影響力を世界的に拡大しようとする中国共産党は、FEIAP以外にも、一帯一路構想など主導する構想を国際機関に持ち込んでいる。

例えば、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」にも、一帯一路の政策目標と一致させた。国連の開発政策分析部門の代表は中国出身者で、一帯一路と国連持続目標「2030年アジェンダ」の接点を分析して、開発プロジェクトを立ち上げた。その内容は、国連公式ウェブサイトで公開されている。

国連は浸透が著しく進む。15ある国連の専門機関のうち国連食糧農業機関(FAO)、国連工業開発機関(UNIDO)、国際電気通信連合(ITU)、国際民間航空機関(ICAO)の4つの機関で中国人がトップを務める。

中国共産党は製造強国を目指すことを掲げた「中国製造2025」のもと、国際組織のルール形成にも参画していくことに言及している。日本貿易振興機構(JETRO)の報告によれば、中国は知的財産権強国建設綱要(2021-2035)のなかで「知財のグローバルガバナンスへの参加促進」を強調。国際規則・標準の整備のほか、国際知財訴訟地として選好される場所とすることなどが盛り込まれた。

7月末、FEIAPはフィリピンのセブ島のホテルでコロナ禍以来の総会を開催し、23の加盟国などから100名以上の代表者が出席した。開会式で挨拶した黄維氏は「今後もFEIAPは『一帯一路』の科学技術協力に積極的に参加し、(国連の定めた)2030年の持続可能な開発目標を指針として、アジア太平洋および世界のその他の地域の能力を結集し、国際協力を拡大させる」と語った。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
大室誠