在米華人に伸びる「中共からの魔手」 国内の親族を人質に、圧力をかける

2023/11/17
更新: 2023/11/17

今月15~17日に、米サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席するため、中国共産党(中共)の首魁・習近平は14日にサンフランシスコに到着した。

この日、習近平が宿泊するホテルの前やホテルまでの沿道などでは、中共領事館が金銭で雇った「愛党華人」による「歓迎ムード」が演出されるなか、米国をはじめ海外にいる中国の民主活動家や人権活動家、中共の不条理を訴える陳情者など、多くの個人や団体が集まり、習近平と中国共産党に対して抗議の意を表した。

中国の親族を脅迫「抗議に行かせるな」

米国内の中共領事館は今回もまた、お得意の「歓迎ムード」作りのために、カネの力を使って在米の華人を誘致した。「無料旅行」や「日給」をエサに指定場所へ行かせて、赤い中国国旗を振らせているのだ。

しかし、これまでと異なるのは、今回は在米の中共領事館だけでなく、中国国内でも動きがあったことだ。サンフランシスコでの抗議活動に参加しようとする華人の陳情民たちが抗議に行けないよう、それぞれの国内にいる家族や友人が、現地公安から脅迫されていたことがわかった。

今回、サンフランシスコでの抗議活動に参加するために、ニューヨークからは華人の陳情者20人以上が駆け付けた。彼らは、中共当局によって家を奪われ、迫害を受けて家族や財産を失った。不当拘束されていた時、食事に毒を盛られ、危うく殺されかけた人もいる。

APEC開催までの数週間、陳情者らはほぼ全員、中国にいる家族や親族の家にまで現地警察がやってきて「海外にいるお前の身内が法律違反をしないよう、よく言い聞かせろ」と警告され、海外にいる本人に圧力をかけるよう求められていたのである。

中国SNS通じ、在米華人の行動を「監視」

エポックタイムズの取材に応じた陳情民・盧銀娣さん(現在はニューヨーク在住)の場合は、こうだ。

サンフランシスコで抗議活動への参加を決意し、現地行きの航空券を購入した後、彼女の身辺に奇妙なことが起きたという。

サンフランシスコに行くついでに、そっちで1か月ほど働いてからニューヨークに戻ろうと考えた彼女は、航空券を購入した後、中国SNSのウィーチャット(微信)を使って、サンフランシスコにある家政婦の仲介業者に連絡をとった。

盧さんは、仕事探しの件について、誰にも教えていなかった。にもかかわらず、その日の夜、元夫から何度も電話がかかってきた。

盧さんはこの時、元夫からの電話には出なかった。するとその後に、上海にいる息子の口から「サンフランシスコでの仕事見つかった?」と聞かれて、ビックリ仰天したという。

「なぜ私が、サンフランシスコで仕事を探している事を知っているの?」と聞くと、息子は「パパが教えてくれたんだよ」という。

米国にいる自分の予定については、中共当局者が元夫に教えたのだという。しかも、航空機チケット購入した日の夜、元夫から大量の着信があったが、その時、元夫の傍らには中共当局者がいたことを盧さんは後で知った。

盧さんはこの時、「彼らは、ウィーチャットを通じて私を監視していたんだわ」と分かった。

元夫のほうは、上海の当局者から呼び出されて「お前の元妻が違法なことをしないよう、告げろ」と言われたそうだ。

当初、事情を呑み込めない元夫は「いったい何のことなのか?」と聞き返したが、当局者は回答せず、ただ「これは、お前の子供や(現在の)家庭に影響を及ぼすことだ」と冷たく告げるだけだったという。

盧さんの米国での状況について当局者が元夫に尋ねた後、当局者はようやく「11月に習近平が訪米する。その際、彼女(盧銀娣さん)が行動するのを必ず阻止せよ」と指示した。さらに「彼女が帰国しない限り、この件は解決しない」と脅したという。

これに対し、盧さんは「中共の言っていることはウソだ。絶対に信じない。解決したければ帰国せよ、という言葉に騙されて、本当に帰国してしまった陳情民は何人もいる。しかし、みんな精神病院に監禁された」と憤慨しながら否定した。

 

中国の地元陳情局職員を名乗る人からのウィーチャットメッセージ、「サンフランシスコでの違法集会やデモなどに参加するな、連絡してほしい」という内容。(盧銀娣さん本人より提供)

 

食事に「毒を盛られた」陳情民

「習近平の車を止めるためにサンフランシスコに来た。習に説明を求めたい」と誓う陳情民、傅玉霞さんのケースは以下の通り。

エポックタイムズの取材に応じた傅さんは、米国にいる彼女の携帯電話に中共当局から直接電話をがかかってきて、「(中国の)法を犯すようなことをするな」と警告されたという。

「ここ数日、上海の公安は私の弟や妹、さらには長年連絡をとっていない元夫の家にやってきては、私に圧力をかけるよう求めていた」「家族は怖くなって、仕方なく私の携帯番号を公安に教えた。すると、米国にいる私のところへ、中国の公安から直接電話がかかってきた」

傅さんは、かつて上海に不動産を2件所有していたが、1997年に中共によって不法に取り壊され、家の中にあった現金などの財産を全て取り上げられた。それ以来、彼女は、失った財産の返還を求めて陳情をするようになったが、陳情するたびに捕まえられ、過去に8回も拘束されている。

最後の監禁期間(それは50日に渡るものだったが)に、中共当局者によって「食事に毒を盛られた」こともある。

傅さんは嘔吐と下痢を繰り返したが、なんとか一命を取り留めた。一緒に監禁されていた陳小明という名の陳情民は、獄中で亡くなったという。

先ほどの盧銀娣さんも、当局者によって「毒を盛られた」経験があるという。

盧さんも自宅の強制取り壊しをめぐって地元政府を相手に訴訟を起こし、陳情を繰り返してきた。2010年、北京へ陳情しに行った際に、地元から派遣された「陳情阻止要員」によって地元へ強制的に連れ戻された。

盧さんは、拘束された場所で出された食事を口にした後、意識がもうろうとした。その後、体は腫れ上がり、皮膚がひどくかゆいといった症状が現れた。後になって、他の多くの陳情者たちにも同じような症状が現れたため、皆「当局者が、我われの食事のなかに毒を盛った」と信じているという。

「私たちは一般の庶民だ。私たちはそもそも、政治なんてわからない。しかし、私たちがこうなったのは、全ては中国共産党に追い詰められたからだ」「中共を決して信じるな。信じたら終わりだ」と盧さんは訴えた。

盧さんは習の車列を止める行動に出る前、エポックタイムズの記者に電話をかけて、こう告げた。

「私たち陳情民は、中共党首の宿泊ホテルの近くにいる。準備は整った。これから(習近平の車列に向かって)行く!」

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
関連特集: 米国