米中貿易戦争が激化する中、トランプ米大統領は「中国の開放」を明確な目標として掲げた。
長年にわたり、中国共産党(中共)は外国企業の活動を制限し、インターネットを遮断し、国際調査団の入国を拒否するなど、外部との接触を遮断してきた。これにより、中国は「ブラックボックス」と化し、共産党の行為が隠蔽され、統治体制の維持が図られている。
アメリカが中国製品に対して145%、中国がアメリカ製品に対して最大125%の関税を課す中、両国の対立は膠着状態にある。このような状況下、4月25日、トランプ氏は大統領専用機内での記者会見で、関税を引き下げる条件について問われた。「中国が我々に実質的な譲歩をしない限り、関税は撤廃しない」と述べた。
「実質的な譲歩」とは何かとの質問に対し、トランプ氏は「中国の開放」と答えた。「中国を開放し、我々がビジネスを展開できるようにする。これが我々の望むことだ。中国に進出し、我々の製品を販売する。つまり、『中国の開放』だ」と述べた。
外国企業への制限と圧力
中共は、外国企業の中国市場への参入に多くの制限を設けている。「外商投資准入特別管理措置(ネガティブリスト)」を通じて、多くの経済分野を国有企業に限定し、外国企業の参入を制限している。金融分野にも独自の制限が存在する。
2015年、中共は「中国製造2025」計画を発表し、半導体、ロボット工学、航空宇宙、新エネルギー車など10の主要技術分野で国内企業が外国企業に取って代わることを目指している。2021~2025年の五か年計画では、これらの分野への支援が強化され、研究開発、トレーニング、専門的な工業団地、外国資産の買収に対する補助金、融資の優遇、政府調達の機会が提供されている。
同時に、中共は外国企業に対して圧力を強めている。2023年3月、企業のデューデリジェンスを行うミンツ・グループの北京事務所が警察の捜索を受け、5人の従業員を拘束した。同月、アステラス製薬の社員をスパイ容疑で拘束し、中国はアメリカのメモリーチップメーカーであるマイクロン・テクノロジーに対しても安全審査を開始した。さらに、同年4月には、ベイン・アンド・カンパニーの上海事務所の従業員が警察の事情聴取を受けた。
外国企業が西洋文化と価値観を中国に持ち込む
中共は外国資金を求める一方で、外国企業に対して常に警戒と不信を抱いている。その大きな理由の一つは、外国企業が西洋文化と民主主義的な価値観を中国に持ち込み、静かに人々の思想に影響を与え、中共の洗脳教育を揺るがし、「平和的変革」を引き起こす可能性があるからだ。
中共はこの影響に対抗するため、企業内に共産党支部を設置して監視と統制を強化している。2018年時点で、中国の民間企業のおよそ73%が党支部を設置しており、外資系企業に設置した党支部も10万を超える。
2016年には、習近平が「党の指導を企業統治のあらゆる面に組み込む」ことを求め、私営企業や外資系企業も対象とする方針を打ち出した。
ノースイースタン大学の国際ビジネス教授マイケル・エンライト氏は、「習近平政権の特徴の1つは、党国の統制範囲を中華民族のあらゆる側面に広げようとしていることだ」と指摘している。
中共は、外国企業が真実の情報や西洋の価値観をもたらし、国民の認識を変え、結果的に専制体制を揺るがすリスクを恐れている。このため中共は、西側メディアやインターネットを厳しく遮断している。
ネット封鎖
中共当局は、人権、教育、政治ニュースに関連するサイトを継続的に遮断している。1990年代末、政府主導で開発した「金盾プロジェクト」により、ネット上のデータを監視・検閲し、ターゲットIPアドレスやドメインを遮断できるようになった。
中国問題に関する連邦議会・行政府委員会スタッフの調査によれば、中共のファイアウォールは、わいせつコンテンツやスパムメールではなく、主に政治的なコンテンツを遮断するために使われている。
彼らのテストでは、Googleキャッシュ、AltaVista検索エンジン、BBC中国語版、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)、アムネスティ・インターナショナル、人権監視団体ヒューマン・ライツ・ウォッチなど、多くの政府批判サイトがブロックされていた。
特に、「法輪功」は重点的に監視対象とされている。
法輪功は1992年に李洪志氏によって創始された佛家修煉法であり、1999年以降、中共の弾圧を受けている。
2003年、アメリカ議会スタッフが中国のGoogleで「法輪功」を検索すると、ブラウザが一時的に使用不能になることを確認した。
また、2003年2月には中共政府が支援する研究者が、「法輪功コンテンツ検閲システム」の技術開発を発表した。
このシステムは、法輪功を支持する情報を含む記事を「ブラックリスト」として分類し、個人用コンピューター、サーバー、国家のインターネットゲートウェイにインストール可能だ。ユーザーが法輪功を支持するサイトにアクセスしようとすると、システムがそのサイトをフィルタリングし、直ちに当局に通知する仕組みとなっている。
中共が法輪功を脅威視する理由
中共が法輪功情報を厳しく封鎖するのは、外国企業や自由な情報に対する警戒心と同じ論理に基づいている。中共は、法輪功がその統治体制を脅かす存在だと見なしているのだ。
1999年4月25日、約1万人の法輪功修煉者が北京の中南海に平和的な陳情を行った。これに対し、当時の共産党党首だった江沢民は政治局常務委員に宛てた手紙で、「共産党人が信じる唯物論・無神論が、法輪功のような教えに勝てないなら、それは大いなる笑い話だ」と述べた。
その後の政治局常務委員会で、当時の朱鎔基首相が修煉の自由を認めるべきだと主張したが、江沢民は「党と国家が滅びる」と叫んで反対した。
中共が外資を締め出し、インターネットを封鎖し、中国を閉ざしているのは、国民の思想を統制し、体制維持を図るためである。ファイアウォールの下で育った若い世代は、天安門事件や文革の悲劇、国共内戦中の歴史的事実すら知らない。
罪を隠すため中国の開放を拒否
中共が中国を閉ざす最大の理由は、自らの罪を隠すためである。特に、法輪功学習者に対する強制的な臓器摘出問題について、国際調査団の入国を拒否してきた。
2006年、カナダの元国会議員、故デービッド・キルガー氏と人権弁護士デービッド・マタス氏は、間接証拠に基づき「中共は今も法輪功学習者から大規模な臓器摘出を行っている」と結論づける調査報告を発表した。
さらに、2019年6月、ロンドンで設立された中国の強制臓器収奪に関する民衆法廷は、元ユーゴスラビア国際刑事裁判所の旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷で検察官を務めたジェフリー・ナイス議長は、法輪功学習者やウイグル人に対する人道に対する罪は「疑いなく」行われていると認定した。
しかし、中共は調査を受け入れることを拒み続けた。
2006年9月、キルガー氏はアメリカ議会の公聴会で、中国人権派弁護士・高智晟氏の招きで臓器摘出問題の調査に訪れようとしたが、ビザ申請は拒否されたと証言した。
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