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ウイルス「機能獲得研究」 アメリカ政府が中国などへの助成金停止

2025/05/10
更新: 2025/05/10

アメリカ政府は、ウイルスの感染力や毒性を高める「機能獲得研究(Gain of Function, GOF)」への助成金を停止する。2025年5月5日、ドナルド・トランプ大統領が大統領令に署名した。今回の措置は、特に中国など「懸念国」で行われているGOF研究への支援を打ち切るものであり、今後米国の公的資金がこれらの研究に流れることはなくなる。

機能獲得研究とは、ウイルスなどの病原体に人工的な変異を加え、感染性や病原性、生存能力などを増強させる研究を指す。2010年代には、米国の研究資金が非営利団体エコヘルス・アライアンスを通じて中国・武漢ウイルス研究所のコウモリコロナウイルス研究に提供されていたが、この助成金は2020年に一度打ち切られた後、バイデン政権下で部分的に復活していた。

今回の大統領令は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックの起源をめぐる議論が背景にある。トランプ大統領は、中国・武漢ウイルス研究所からのウイルス流出説を繰り返し主張してきた。米国国立衛生研究所(NIH)のジェイ・バッタチャリア所長も「こうした研究は世界を危険にさらす」と述べている。

また、保健福祉長官のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は「流出のリスクを免れる研究所など存在しない。今回の措置は、人類を危険にさらす不注意な流出を防ぐためだ」と説明した。

一方で、NIHの元首席医療顧問アンソニー・ファウチ氏は「武漢での研究は連邦政府の機能獲得研究の要件を満たしていない」と主張しているが、一部のウイルス学者や米国当局者はこれに異議を唱えている。

米国内では、GOF研究のリスクと便益をめぐる議論が長年続いてきた。2014年にはNIHが21件のGOF研究への資金提供を中止し、2017年以降は厳格な審査のもとで一部研究が再開された経緯がある。しかし、パンデミックのリスクや生物兵器転用の懸念が根強く、今回の決定に至った。

今後、米国の研究資金が中国などの機能獲得研究に使われることはなくなり、国際的にも同様の動きが広がる可能性がある。日本では現時点で特別な規制は設けられていないが、米国の動向を受けて議論が進むことが予想される。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。