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消費税めぐり与野党の議論が活発化 夏の参院選の主要争点に

2025/05/12
更新: 2025/05/12

消費税の扱いをめぐり、与野党の議論がかつてなく活発化している。物価高の長期化や米国の関税政策などを背景に、今夏の参議院選挙では「消費税」が主要な争点となる見通しだ。各政党の主張や主要人物の発言、そして最大の課題である財源問題について、現時点での動きをまとめた。

与党:自民党は慎重姿勢、公明党は減税論も

自民党は消費税減税に対して慎重な立場を維持している。森山裕幹事長は「消費税を下げること自体は良いことだが、社会保障を支える財源として不可欠であり、減税するなら代わりの財源を明示しなければならない」と繰り返し強調した。また、「財源を示さずに減税を主張するのはつじつまが合わない」とも述べ、責任政党としての財政運営の重要性を訴えている。政府・自民党は8日、消費税減税を見送る方針を固めた。理由は、減税を実施すれば数兆~十数兆円規模の財源不足が生じ、高齢化社会での社会保障制度の基盤が揺らぐおそれがあるためだ。

一方、与党内でも意見の違いが見られる。公明党の斉藤鉄夫代表は「減税ということを申し上げている。特に食料品を中心とする物価高にどう対応するかが問われている」とし、食料品の消費税引き下げを念頭に減税を検討する考えを示している。自民党内でも参議院議員の8割が消費税減税を要望し、そのうち7割が食料品の税率引き下げを求めているとの調査結果もあるが、党執行部は財源の課題から慎重姿勢を崩していない。

野党:一斉に「減税」主張、財源論で温度差

野党は消費税減税や廃止を強く主張している。立憲民主党は、食料品などの軽減税率8%を1年間限定で0%に引き下げる公約を打ち出した。野田佳彦代表は「食料に関する悲鳴が多く聞こえる。これはポピュリズムではない」として、苦渋の決断で減税を決めたと語った。財源については「赤字国債に頼らず、地方財政や将来世代に負担を及ぼさない方法を検討する」としているが、具体案は今後詰める方針だ。

立憲民主党内では、江田元代表代行が「外貨準備の予算活用で財源を捻出できる」と主張する一方、枝野元代表は「減税ポピュリズムに走りたいなら別の党を作ってください」と批判するなど、党内対立も表面化している。

日本維新の会は「食品の消費税撤廃」を時限措置として提案し、国民民主党は「消費税率を一律5%に引き下げる恒久措置」を主張している。共産党は消費税5%への引き下げとインボイス制度の廃止を訴え、「1世帯あたり年間12万円の手取り増になる」とその効果を強調している。れいわ新選組は消費税廃止を掲げている。社会民主党は、夏の参議院選挙に向けて「食料品の消費税率ゼロ」を公約の柱とし、物価高騰対策として緊急提言を発表している。

日本保守党は、消費税の段階的な減税を重点政策として掲げている。公式政策や2024年10月の衆議院選公約では、まず消費税率を8%に引き下げ、さらに5%への引き下げを目指す方針を明記している。国民負担率の軽減や経済活性化を目的とし、ガソリン税減税や地方税の減税推進も合わせて訴えている。具体的な財源や期間については明示していないが、「名古屋モデル」を参考にした地方税減税の全国展開や、税制の簡素化・不公平感の解消も提案している。

参政党も消費税政策を大きな争点と位置付けている。神谷宗幣代表は、消費税などの減税や少子化対策の重要性を訴え、「消費税の段階的な廃止が重要だ」と強調。税と社会保険料の合計である国民負担率を35%まで下げて経済の活性化を実現すると訴えている。神谷代表は「40兆円くらい税収は減ることになるが、40兆円を国民に使ってもらえる。国民がお金を使える状態を少なくとも5年間は維持しよう」と述べている。

最大の争点は「財源」 社会保障との両立が課題

消費税は年金や医療、介護、子育て支援など社会保障の重要な財源であり、2024年度予算では23.8兆円が計上され、その8割以上が社会保障に充てられている。食料品の消費税をゼロにした場合、年間約5兆円の税収減となるとされ、全品目で5%引き下げれば約11~12兆円、完全廃止なら約23兆円の減収となる。

各党とも代替財源の具体案は示しきれていない。立憲民主党は赤字国債に頼らないと明言しつつも、外貨準備の活用などを検討するとしている。国民民主党は「赤字国債で賄えばよい」と主張し、維新は「税収増加分で対応できる」としている。共産党は「大企業減税や富裕層優遇の是正」を財源とする案を掲げている。

一方、自民党や政府は「財源論を置き去りにした減税は無責任」として、減税を見送る方針を固めている。

今後の見通し

消費税をめぐる議論は、物価高対策や家計支援、そして社会保障制度の持続可能性と密接に関わる。各党の主張が、夏の参院選で有権者の判断材料となることは間違いない。今後も各党の政策動向や主要人物の発言に注目が集まる。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。