アマゾンの最高経営責任者(CEO)アンディ・ジャシー氏は年次株主総会で、トランプ氏による関税政策が、平均販売価格や消費者の購買行動に重大な変化をもたらしている兆候は現時点で見られないと述べた。
この発言は、近頃トランプ政権の対等関税が経済崩壊を招くという主張とは対照的な見解である。
テック系メディア「TechSpot」の報道によれば、ジャシー氏は株主総会の質疑応答において、ウォルマートやターゲットといった他の小売業者が価格上昇の懸念を表明する一方で、アマゾンでは平均価格の顕著な上昇も、消費需要の減退も確認されていないと語った。
ジャシー氏は株主に対し「現時点では需要の減少は観測されておらず、平均販売価格にも有意な上昇はない」と報告した。
さらに、一部の出品者、特に中国企業が関税引き上げに対応して価格を上げた一方で、他の出品者は現行の価格水準を維持しており、これらの動きが相殺される形となって、平均価格は全体として安定しているという。その結果、消費者の支出にも変化は見られないと述べた。
このアマゾンの姿勢は、保守系メディア「Breitbart」の経済編集者ジョン・カーニーが唱える「関税によるタリフレーションは発生していないとの主張を裏付けるものでもある。
4月に施行された新関税制度では、すべての輸入品に対して一律10%の関税が課され、加えて数十か国に対してさらに高率の関税を設定した。本来であれば、4月のインフレ指標にはその影響が現れるはずであったが、1か月が経過しても物価上昇圧力は確認していない。
ウォール街のアナリストは、4月の消費者物価指数(CPI)が前月比0.3%上昇すると予測していたが、実際の上昇率は0.2%にとどまった。3月には物価が下落し、2月の上昇率も0.2%であった。3か月の年率換算では、インフレ率は1.2%となっている。
生産者物価指数(PPI)についても、0.2%の上昇が見込まれていたが、5月20日にアメリカ労働省が発表したデータによれば、4月のPPIは0.5%の下落となり、コロナ流行初期以来の最大の月間下落幅を記録した。食品、エネルギー、サービスを除いた「コアPPI」も0.1%下落しており、これは5年ぶりのマイナスである。最終需要における商品価格は横ばいで、エネルギー価格はわずかに下落、食品価格は減少した。
ジャシー氏の見解は、米中間の貿易摩擦が激化している情勢の中で示されたものである。
同氏は株主に対し、アマゾンはこれまで国際貿易をめぐる複雑な対立構造をうまく乗り越えており、自社のビジネスモデルや顧客基盤に深刻な影響は及ぼしていないと説明した。アマゾンが有する膨大な出品者および供給網、ならびに電子商取引市場における支配的地位が、経済情勢の変化に対する柔軟性と耐性を可能にしているものと考えられる。
4月29日、アマゾンは、一部報道が伝えた「商品ページにトランプ大統領の関税コストを表示する」という計画を否定した。ホワイトハウスは以前、そのような関税表示を「政治的意図を含んだ敵対的行為」として批判していた。
アマゾンの広報担当者は、「当社の低価格セクションである『Amazon Haul』を担当するチームが、一部商品について輸入コストの表示を検討したことはあるが、正式に承認されたことはなく、今後も実施予定はない」との声明を出した。
事情に詳しい関係者がブルームバーグに明かしたところによれば、この検討は、アメリカ政府が中国本土および香港からの小口商品免税制度のを打ち切ったことに関連するものであり、ホワイトハウスの全体的な関税政策とは直接関係していないという。
トランプ大統領は最近、複数のメディアとのインタビューで、アマゾン創業者で取締役会長のジェフ・ベゾス氏との関係が改善していることを明らかにした。
「彼(ベゾス)はとてもいい人だ……私の最初の任期中は彼のことをよく知らなかったが、今は当時とはまったく異なる」と語った。
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