いじめや不登校に悩む子どもたちを支援するため、こども家庭庁のプロジェクトチームは、SNSやAIなどのデジタル技術を活用した相談窓口の充実が必要だとする中間報告をまとめた。
こども家庭庁は、全てのこどもが健やかに成長し、将来にわたって幸せに生活できる「こどもまんなか社会」の実現を目指し、こどもの悩みに寄り添うための環境づくりに取り組んでいるとしている。その一環として、令和6年11月に「こどもの悩みを受け止める場に関するプロジェクトチーム」を発足し、こどもや支援団体、地方自治体などとの意見交換を重ねてきた。
このプロジェクトチームは、こどもたちが不安や悩みを抱えたとき、信頼できる大人に思いを打ち明けやすい環境をつくること、そしてその課題や必要な方策を明らかにすることを目的としている。意見交換では、こども自身や支援団体の声を聴き、現場の実情やこどもたちの本音を把握したとしている。
こどもたちからは、相談しやすい環境として「リラックスできる雰囲気」や「遊びや運動を通じた自然な会話」が望ましいとの声が多く寄せられた。相談相手については、家族や担任の先生など身近な大人が相談しやすい一方で、関係が近すぎると迷惑をかけたくないという気持ちから相談をためらうこともあると指摘された。また、顔が見えない相手やAIなど、プライバシーが守られる形での相談も求められている。
相談相手に対しては、まずしっかりと話を聴き、共感してくれること、秘密を守ってくれることが重要だとされる。過去に相談した際に否定されたり、秘密が守られなかった経験から、再び相談することをためらうこどもも少なくない。相談内容によっては、ただ聴いてもらいたい場合と、具体的な解決策を求める場合があるため、柔軟な対応が必要とされている。
相談窓口については、時間や場所を気にせず利用できること、SNSやAIチャットなど気軽にアクセスできる手段が望まれている。特に夜間や自分の部屋がない場合は電話相談が使いづらいという声があり、チャット形式で24時間対応できる窓口の拡充が求められている。また、学校や家庭以外にも安心できる居場所や頼れる大人が必要であり、地域全体でこどもを支える体制づくりが重要とされる。
支援団体や関係者からは、こどもと接する際には一人の人間として尊重し、こどものペースを大切にすること、相談内容の秘匿性を確保することの重要性が指摘された。大人が過度に介入しすぎず、こどもが自分のタイミングで支援を受けられるようにすることも求められている。
今後、プロジェクトチームは国内外の先行研究や実態調査を進め、こどもや大人への広報活動を強化していく方針である。SNS等を活用した情報発信や、相談を受けた際の対応方法に関する啓発イベントの開催など、積極的な取り組みが予定されている。また、全国規模でのアンケート調査を通じて、こどもと大人の認識のギャップを把握し、より実効性のある施策の検討を進めていく。
不登校やいじめの深刻化
背景には、不登校やいじめの深刻化がある。文部科学省の調査によれば、小中学生の不登校は年々増加し、2023年には34万人を超えて過去最多となった。いじめや不登校の理由は多様で、家庭環境や人間関係、学業不振などが複雑に絡み合っている。こうした状況を受け、国は88億円規模の予算を投じて対策を強化している。
こども家庭庁は今後、AIやSNSを活用した相談窓口の具体的な拡充策を検討し、子どもがどんな悩みも安心して打ち明けられる社会の実現を目指すとしている。三原じゅん子内閣府特命担当大臣(こども政策、少子化対策、若者活躍、男女共同参画、共生・共助)は「安心して悩みを話せる取り組みは急務であり、さらなる実効性ある施策を進めていきたい」と述べている。
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