アメリカのギャバード国家情報長官が「ロシア疑惑」関連文書を解禁し、オバマ政権の関与証拠や政権転覆計画の指摘で米政界に波紋が広がった。
ロシア疑惑の起点は、2016年のアメリカ大統領選挙にさかのぼる。この時期、オバマ氏が二期目の任期を終えようとしており、民主党からはヒラリー・クリントン氏が大統領候補として選出された。一方、共和党では政治未経験であったドナルド・トランプ氏が最終候補として頭角を現し、勢いを増しながらヒラリー氏との激しい選挙戦を展開し、世界中の注目を集めた。
この選挙戦の最中、「ロシアがアメリカ大統領選に干渉している」とする話題が浮上した。2016年7月、「ウィキリークス」が民主党全国委員会の内部メールを公開したことで、アメリカの情報機関は、ロシアのハッカーによるデータ窃取と拡散の動きを非難し、トランプ氏の勝利を目的とした選挙干渉であると判断した。
当時、アメリカ国民は主流メディアを通じて「情報機関はロシア政府がサイバー手段を通じて選挙に影響を与えようとした」と知ることになり、これが「ロシア疑惑」調査の端緒となった。
2016年11月、トランプ氏がヒラリー氏を破って大統領に当選した。2017年初頭の就任後、同年5月にミュラー特別検察官が任命され、ロシアの干渉およびトランプ陣営との共謀の有無について調査が開始された。この調査は約2年にわたり続き、数千点の文書と証言が精査された結果、アメリカ政治史上でも特に物議を呼ぶ案件となった。
2019年4月、最終報告がまとめられ、トランプ陣営とロシアの間に刑事共謀の事実は認められなかったものの、ロシアによる選挙干渉の意図はあったと結論付けられた。これが「ロシア疑惑」として広く知られる所以である。
解禁文書が示すオバマ政権の関与と「陰謀」の指摘
その「ロシア疑惑」が、今になってまた大きな波紋を呼んだ。7月18日、ギャバード国家情報長官が示した文書には、「圧倒的証拠」が含まれており、オバマ政権がトランプ氏当選後に、ロシア干渉説を意図的に作り上げ、政権転覆を画策した様子が記されていた。
文書には『大統領日報(PDB)』の副本が含まれており、これは現職大統領が閲覧する極めて重要な機密資料である。
その中で、2016年12月8日、つまりトランプ氏が大統領選挙に勝利してから1か月後に、アメリカ国土安全保障省がCIAやFBIなど、ほぼすべてのアメリカの情報機関を統合して作成した共同報告書が含まれていた。
その報告書には、以下の内容が記されている。「我々は、ロシアおよび犯罪者が選挙基盤に対して悪意あるネットワーク活動を行い、最近のアメリカの選挙結果に影響を与えたという評価には至っていない。ロシア政府系の犯罪者が、イリノイ州の有権者登録データベースを破壊した可能性が高い。また、他の州でも同様の攻撃を試みたが、成果を得ることはできなかった。」
報告書は、ロシアが選挙結果を変更する可能性が極めて低いことを明確に示した。この『大統領日報』は、当時のオバマ大統領が受け取ったものである。しかし、この『大統領日報』の発表翌日である2016年12月9日、ホワイトハウスが会議を開催した。
オバマ氏と政権の中心メンバーがこの会議に出席した。現在、この会議は外部から反逆的な性質を持つ会議と位置づけられている。会議終了後、アメリカの各情報機関は大統領、すなわちオバマ氏の要求に従い、新たな評価報告書の作成に取りかかった。報告書では、「モスクワが2016年の選挙に影響を与えるために使用した手段と行動」について詳細に記述することが求められた。
すなわち、アメリカ情報機関は当初「ロシアとトランプ氏に共謀の証拠はない」と結論づけていたにもかかわらず、オバマ大統領の意向により「そのような事実があるとする報告」を求められたわけである。
ギャバード長官は7月18日の記者会見において、「今回解禁した文書は、ある勢力が実行した『反逆陰謀』の動かぬ証拠である」と語った。ギャバード氏は「2016年、政府の最高層にいた人物らがクーデターを計画し、アメリカ国民の選挙による意思を覆そうとした。大統領の職を不当に奪おうとし、トランプ氏が託された使命を果たせないように仕向けた」との見解を示した。
つまり、当時のオバマ政権はロシア疑惑を利用し、政治的混乱を生み出そうとし、ギャバード長官の表現を借りれば、「ロシア疑惑は幾多の中傷の根拠と化し、トランプ氏勝利の正統性を損なう道具として使われた」。その結果、ミュラー特別検察官の調査の長期化、二度にわたる議会でのトランプ氏弾劾、高官の摘発・収監、米ロ関係の悪化など、多方面に深刻な影響を及ぼした。
ギャバード長官は、アメリカ国民すべてがこの文書にアクセスできるよう、文書を報道機関に提供しただけでなく、国家情報長官オフィスの公式チャネルを通じて電子版を公開した。さらにSNSで解禁のプロセスをライブ配信し、情報の完全な透明性を確保するようにした。

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