令和7年12月26日午前、木原稔官房長官は記者会見において、自身が議長を務める「エネルギー・食料等国民生活を支える基盤の戦略的強化に向けた関係閣僚会議」の第1回会合を開催したことを発表した。本会議は、地政学的リスクが顕在化する中で、国民生活に不可欠なエネルギーや食料などの持続的な確保を目指すものだ。
極めて高い対外依存度と安全保障環境の変容
今回の会議設置の背景には、我が国を取り巻く戦後最も厳しく複雑な安全保障環境がある。日本は四方を海に囲まれた島国であり、国民生活の根幹を成す物資の多くを海外からの輸入に依存している。
現状の課題は以下の通りである。
- エネルギー自給率の低迷: 我が国のエネルギー自給率はG7諸国の中でも最低水準にある。具体的には、原油(99.7%)、天然ガス(97.9%)、石炭(99.7%)と、一次エネルギーのほとんどを海外からの輸入に頼っている。
- 食料安全保障の脆弱性: 2024年度の食料自給率(カロリーベース)は38%と、先進国で最低水準である。コメ以外の小麦、大豆、とうもろこしなどは、米国や豪州、カナダ、ブラジルなど特定の国々に大きく依存している構造だ。
- 海上輸送への依存: 我が国の貿易量の99.5%(重量ベース)は海上輸送が担っている。そのため、世界のどこかで地政学的リスクが生じ、航路に混乱が発生した場合、国民生活や経済社会に甚大な影響が及ぶリスクがある。
2022年に閣議決定された「国家安全保障戦略」においても、有事の際を含めた持続的な対応能力を確保するため、エネルギー・食料安全保障の強化や官民連携の推進を明記している。
来年夏の「方針」取りまとめへ
木原官房長官は本会議において、来年(令和8年)夏を目途に、国民生活を支える基盤を戦略的に強化するための一定の方針を取りまとめるよう、各閣僚に具体的検討を指示した。
今後の具体的な検討対象としては、以下の分野を想定する。
- エネルギー: LNG、石炭、原油などの安定供給。
- 食料: 小麦、大豆、肥料、農薬の確保。
- 海上輸送: 航路の安全、船舶・船員の確保、保険制度の整備。
- その他: 医薬品や衛生用品といった重要物資。
政府は、これらの取り組みを通じて、特定国への過度な依存を脱却し、為替変動にも強い強靭な経済構造の構築を目指す方針だ。また、これらの戦略的投資は日本の新たな成長につながるだけでなく、自衛隊の円滑な活動確保や、ひいては我が国の抑止力を高める効果も期待できる。
今後、政府全体で具体的な施策の検討を進め、来夏の方針策定に向け、動きが加速する。
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