中部電力は2026年1月5日、浜岡原子力発電所3号機および4号機の新規制基準適合性審査において、基準地震動の策定プロセスに不適切なデータ操作があったことを公表した。地震の揺れの想定を算出する際、審査会合での説明とは異なる、あるいは意図的な手法でデータを選定していた疑いが判明したものである。
1. 事案の背景と不適切な操作の実態
中部電力は2019年1月の原子力規制委員会(NRA)審査会合において、基準地震動の策定に「統計的グリーン関数法」を用いる際、計算条件の異なる20組の地震動を算出し、その平均に最も近い波を「代表波」として選定すると説明していた。しかし、実際には以下の不適切な手法がとられていたことが明らかになった。
- 手法①(2018年以前から実施): 「20組の地震動とその代表波」のセットを多数作成し、その中から同社が恣意的に一つのセットの代表波を選定していた。
- 手法②(2018年頃以降に実施): 意図的に平均から外れた波を代表波として選定。その上で、その波が20組の平均に最も近くなるように、残りの19組を後から選定するという、事実上の「逆算」によるデータ操作を行っていた。
この事案が判明した経緯として、2023年9月に基準地震動が一度は確定したものの、2025年5月から10月にかけて原子力規制庁が地震動策定に関する調査を実施。その過程でエビデンス資料の提示を求められた結果、同年12月に不適切な操作が発覚した。
中部電力はこの事態を、原子力事業の根幹を揺るがしかねない極めて深刻なものと受け止めている。今後の展開として、まず透明性と公正性を確保した上で事実関係の調査や原因分析、再発防止策の検討を行うため、同社から独立した外部専門家のみで構成される「第三者委員会」が設置された。この委員会は、元名古屋高検検事長の高嶋智光弁護士を委員長に据え、地震動の専門家をアドバイザーとして起用しながら調査を進める方針であり、中部電力はこれに全面的に協力する姿勢を示している。
一方で、原発の耐震設計において根幹となる地震動評価で不適切な操作が行われていたことは、新規制基準適合性審査全体に重大な影響を及ぼすおそれがある。地域の住民をはじめとするステークホルダーからの信頼失墜は避けられず、今後は原子力規制委員会などの指示や指導に基づき、一度確定した基準地震動の再評価を含めた厳格な対応が強く求められることになる。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。