国防粛清の拡大は習近平の軍事的野心に打撃を与える

2026/01/27
更新: 2026/01/27

中国共産党(中共)政権は、軍の最高位の将軍に対する調査に着手した。予想外の展開であり、中国軍の即応態勢や、台湾侵攻を遂行する中国共産党の能力に新たな疑問が生じている。

国防部は1月24日、中央軍事委員会 第一副主席で政治局員でもある張又侠上将に対する調査を開始したと、2行の声明で発表した。

発表では「重大な規律・法令違反」との容疑以外に詳細は示されなかった。この党内用語は汚職を指すことが多いが、不忠やその他の不正行為を意味する場合もある。

国防部は同じ1月24日、張又侠の側近である劉振立上将に対する調査も公表しており、外部の専門家は、両者への調査が軍および中国共産党に広範な影響を及ぼす可能性があると指摘している。

習近平指導部の下で、中共の反腐敗運動は勢いを増し、近年、数十人の高級指揮官や国防関係幹部が失脚した。こうした状況は、米国との競争が激化する中で、中国が進めてきた軍の近代化投資に疑問を投げかけている。

これまで標的となった軍指導者と異なり、張又侠と劉振立は、現役の将軍の中でも数少ない実戦経験を持つ人物だ。張又侠は1979年の中越戦争に参加し、劉振立は1980年代にベトナムとの国境紛争に関与した。

コネティカット州トリニティ・カレッジの経済学・国際研究名誉教授であるジェームズ・G・ウェン氏は、「影響は極めて大きい」とエポック・タイムズに語り、「これは習近平の軍掌握能力と、中国共産党の国家統治に、さらに大きな打撃を与える可能性が高い」と述べた。

北京当局の今回の発表により、2022年末に始まった現行5年任期の当初に中央軍事委員会に任命された6人のうち、5人がすでに粛清されたことになる。同委員会は、中国共産党が中国人民解放軍(PLA)を統制する中枢機関だ。

現在、習近平体制下で同委員会に残る唯一の人物は、軍の反腐敗を統括する張勝民上将である。張勝民は、前任の何衛東が失脚した後、2025年10月に副主席に昇格した。

習近平の側近だった何衛東は、数十年で最大規模となる単日の粛清で、8人の将軍とともに党と軍から追放された。国防部の報道官は当時、その理由について「極めて巨額の金銭が関与する重大な党規律違反および重大な職務犯罪」を挙げた。

エポック・タイムズが以前に取材した軍関係者によると、習近平側近の失脚は、張又侠を含む党内有力派閥との権力闘争によって加速したという。

張又侠は長年、習近平の盟友とみなされてきた。両者の父親は約80年前の中国内戦で共に戦い、習近平と張又侠は幼少期からの知己だった。習近平が2012年末に権力を掌握すると、張又侠を中央軍事委員会に登用し、張又侠は最終的に習近平に次ぐ地位まで昇進した。

しかし近年、特に台湾問題への対応を巡り、党が取るべき方針をめぐって両者の間に溝が生じていたと、軍指導部に近い関係者は語っている。

エポック・タイムズの取材に応じた専門家らは、中国政権の不透明性から、張又侠粛清の真の理由を特定するのは困難だとしつつも、当局が示す汚職よりも、党内の派閥抗争の結果とみている。

ウェン氏は「今回の動きは、党と軍内部に存在する深刻な矛盾と亀裂を改めて浮き彫りにし、中国共産党体制の権威主義的性格を露呈させた」と述べた。

またウェン氏は、「党内であれ派閥間であれ、内部対立は平和的や司法的な方法ではなく、生きるか死ぬかの闘争によってのみ解決される」と指摘した。

2人の将軍に対する調査が公表された翌日に掲載された人民解放軍機関紙「解放軍報」の社説は、張又侠と劉振立について、軍事意思決定における習近平の支配的地位を指す政治用語である「主席責任制」を「深刻に踏みにじり、破壊した」と非難した。

中国共産党が直面する最大の課題は、空席となったPLA指導部を誰で補うかだと、台湾政府系シンクタンク「国防安全研究院」の中国軍事専門家、沈明室氏は指摘する。

沈氏は、今回粛清された将校の階級の高さを踏まえると、その下で昇進してきた多くの中将クラスも調査に巻き込まれ、さらなる解任につながる可能性があると述べた。

沈氏はエポック・タイムズに対し、「これはPLA上層部を空洞化させかねない」と語った。

エポック・タイムズが公式発表を基に集計したところによると、2012年末に習近平が権力を掌握して以降、昇進した81人の将軍のうち、少なくとも17人が調査を受けるか、形式的な立法機関から追放された。他にも説明のないまま交代させられたり、姿を消した人物が多数いる。

2025年9月3日、北京の天安門広場で行われた第二次世界大戦終結80周年記念の軍事パレードで行進する兵士たち(リンタオ・チャン/ゲッティイメージズ)

沈氏は、これらの空席が戦闘経験のない指揮官で埋められた場合、政治的忠誠心を重視した昇進となり、PLAがより強硬な姿勢を取り、拡張や武力行使に傾くリスクが高まる可能性があると指摘した。

いずれにしても、軍指導部の再建には時間がかかる見通しだと沈氏は述べた。

台湾侵攻への影響について、台北の国防安全研究院で台湾安全保障戦略を研究する鍾志東氏は、政治的粛清の深化が、中国共産党の台湾侵攻能力に影響を及ぼす可能性があると指摘する。

習近平は、台湾の「統一」を最優先目標と位置づけ、武力行使を排除しない姿勢を公言してきた。

米国防総省の最新評価によれば、中国指導部は2027年末までに台湾を巡る戦争で「戦って勝つ」能力を持つと考えているものの、米国の介入に対抗しながら台湾を制圧できるかについては疑問を抱いている。

2025年12月29日、台湾空軍のミラージュ2000戦闘機が台湾・新竹空軍基地から離陸する(チェン・ユーチェン/AFP via Getty Images)

台湾海峡では最近、PLAが台湾を包囲する大規模演習を実施し、主要な世界の海上輸送路である同海峡の緊張が高まった。これに対し、米国と同盟国は強く非難した。

鍾氏は、仮に中国当局が台湾を掌握しようとするなら、侵攻を遂行できる実戦経験を持つ指揮官が不可欠だと述べた。

鍾氏は「現在、中央軍事委員会に戦闘経験を持つ将軍は一人もいない」と述べ「これは北京の武力による台湾奪取の判断や、軍全体の戦闘即応態勢に必然的に影響を及ぼす」と指摘した。

本稿は羅亜氏が取材に協力した。