【独自】中共軍で遡及調査 12年前まで 前例のない動揺広がる

2026/03/26
更新: 2026/03/26

中国共産党(中共)制服組トップの張又俠の失脚がもたらした余波は、中共軍隊の構造を変えつつある。

上層部では、「素人が専門家を指揮する」という、軍事の鉄則に反する現象が起きている。さらに内部情報によれば、粛清はすでに数百人の中堅・上層部の将官にまで及び、部隊の専門的な戦力を大きく損なっているという。実戦経験を持つ将官らを相次いで排除し、その代わりに政治的忠誠心の審査を優先している現状は、中共軍の路線に重大な転換が起きていることを示している。つまり、作戦の専門性が政治統制の論理に押しやられつつある。

1月24日、当局は中央軍事委員会副主席の張又俠と委員の劉振立を調査すると発表した。張又俠と劉振立の失脚前に、もう1人の副主席である何衛東も長期間にわたり消息を絶っている。中央軍事委員会の中枢は短期間のうちに空白に近い状態となっているため、人民解放軍の指揮系統の断絶や体制転換に対する強い疑念が広がる。

すでに2か月余りが過ぎたが、中共軍内部の政治的大粛清は収まるどころか、むしろ、しらみつぶしの摘発という異常な様相を呈している。

「見つけ次第に摘発」 12年前までさかのぼる連座

軍内部に通じる陳永琪氏(仮名)によれば、張又俠の失脚後、「政治的不忠誠」を対象とした粛清運動は、執拗な段階に入っているという。

陳氏は、「調査命令は極めて苛烈で、1月下旬から12年前までさかのぼって調べるよう求めている」と明かした。

これは、調査が2013年にまでさかのぼり、張又俠の在任中の昇進経路、直接・間接の人脈、さらには「部下の部下」に至るまで一網打尽にしようとしていることを意味する。

陳氏はさらに、「まず抜擢された年次を調べ、その後、張又俠やその側近との関係の深さを突き合わせる。営級(大隊に相当するクラス)以上を対象に一斉に洗い出しが進められ、大勢の側近を芋づる式に引き出している。今では、どれほど専門技術に優れていても免罪符にはならない。張又俠関連のレッテルを貼られれば、決して見逃さない」と語った。

こうした連座制の審査手法は、かつて張又俠の勢力圏に入った人物であれば誰であれ、粛清の対象となり得るのだ。

ビッグデータで標的選別 五大戦区すべてに波及

別の軍関係者に近い楊凱氏(仮名)は、軍規律検査委員会の特別チームが主導する今回の粛清作戦が、ビッグデータのアルゴリズムを用いて効率的に進められていると語る。

楊氏は、「わずか2か月の間に、五大戦区と各軍種で、営級・団級(連隊級に相当)の中堅将校数百人が姿を消した」と述べた。

楊氏によれば、現在の粛清はもはや従来の聞き取りや洗い出しに頼るものではなく、ビッグデータ・システムによる精密なアルゴリズムを用いた選別が行われている。人脈ネットワークの中でレッドラインに触れれば、システムが自動的に対象を特定する仕組みだ。この効率的な選別が部隊の末端指揮将校をかつてないほどパニック状態に陥れているという。

中共軍は自ら戦力をそいでいる

中国軍事学者、宋鵬春氏(仮名)は、今回の激しい人事刷新について、中共軍の統治論理が「実戦能力重視」から「絶対的な忠誠重視」へと徹底的に転換したことを象徴していると指摘した。

宋氏は、「粛清しているのは主に軍事科学技術分野の専門家だ。このような、『専門性や技術重視を弱める』政治的操作は、解放軍の戦力の中核が急速に空洞化する。部隊に残るのが、上に迎合するだけの政治的な日和見主義者だけになれば、軍は戦術的素養を完全に失い、戦闘力のない烏合の衆に成り下がる」と指摘した。

また、北京の政策研究者、王強氏は権力構造の観点からこの行き詰まりを分析している。王氏によれば、軍改革後の権力構造はもともと極度に権力中枢へ集中していた。いま再び政治審査の名の下に独立した判断力を持つ専門将校を狙い撃ちで排除することは、指揮系統に独自の判断を許さない管理を導入するに等しく、専門化した軍建設時代の完全な終焉を意味するという。

王氏は、「現在の指揮系統は、かつてない沈滞と硬直に陥っている。『従順さ』が唯一の生存法則となれば、あらゆる専門的な戦術判断は政治的意向に屈することになる。この単一でゆがんだ権力構造は、軍全体から現代戦に対応する柔軟性を奪い、最終的には個人の権力を支える私兵へと変質させる」と語った。

北京の政治的緊張が急上昇 粛清ムードが広がる

中共内部に張り詰めた空気が漂う中、2025年11月以降、習近平は長期間にわたり北京を離れておらず、例年、旧正月に行ってきた部隊慰問も取りやめた。

これについて北京の観測筋は、中共軍が深刻な構造的後退を経験していると見ている。すなわち、専門分業を重視する近代的な作戦体系から、個人への忠誠心を核心とする政治服従型組織へと徐々に縮小し、その戦闘力は不可逆的な低下局面に入っているという。

胡英