「変人はいらない 必要なのは献身的な兵士だけだ」 ヘグセス氏の歯に衣着せぬ演説

2026/10/15
更新: 2026/10/15

米ヘグセス国防長官が9月30日に行った、米軍の現状に関する演説は、歯に衣着せぬ率直なものであると同時に、きわめて多くの情報を含むものだった。率直さという点では、ヘグセス氏は軍曹や上級下士官、若手将校たちに対し、米軍は戦闘力をむしばんできた「ウォーク(woke)」的な思想と決別したのだと断言した。

「我々はもはや、ウォークな省でも、弱い省でもない。率直に言えば、デブはいらない。トランスもいらない。ひげ面もいらない。変人もいらない。腰抜けもいらない。過激派もいらない。必要なのは戦士だけだ。たくましく、即応態勢が整い、任務に献身的な兵士だけだ」

同氏は、前年の歴史的な演説を「旧来の国防総省」との決別と位置づけ、「DEI(多様性・公平性・包摂性)」やウォーク的な思想からの「解放の日」だったと振り返った。そして、国防総省の使命は「戦うことだ。戦う準備を整え、勝つ準備をすること。その唯一の目的に向けて、手を緩めず、言い訳せず、妥協しないことだ」と述べた。

黄金律

心強いことに、ヘグセス氏は、ちょうど1年前の昨年9月30日に将官たちを前に行った演説と同様、文民と軍の指導者には、黄金律に従って行動する道義的責任があると強調した。

「自分の子供に所属してほしいと思う部隊を、自分自身の部隊としてつくれ。定員枠を満たすために基準が引き下げられた部隊で、自分の子供に勤務してほしいと思うだろうか。あるいは、能力や実績、戦闘力とは無関係な理由で指揮官が昇進する部隊で、勤務してほしいと思うだろうか。答えは、単なるノーではない。断じてノーだ」

一方、米国の戦闘能力を深刻に損なってきたDEIやウォーク的な思想を一掃する必要性を強調するなかで、ヘグセス氏は数々の発表を行い、さまざまな主張を展開した。主な内容は以下のとおりだ。

  • 募集と定着率: 現役部隊、州兵、予備役のすべてで、募集実績は数十年ぶりの高水準に達している。長期派遣中の水兵を含め、軍にとどまる人員の割合も過去最高水準にある。
  • 将官の削減: 約10%の将官を解任し、将官ポストも10%削減した。両者を合わせると、約20%の削減となる。
  • 従来の基準の復活: 1990年ごろの基準を復活させた。具体的には、従来の男性向け基準に合わせた男女共通の戦闘基準、戦闘を想定した野外試験、年2回の体力試験、身長・体重の基準、毎日の体力訓練などを含む。
  • 人事評価制度の見直し: 多様性に関する割当制度(クオータ制)、アイデンティティをテーマにした記念行事、社会性や情緒面を重視するリーダー評価を廃止し、能力に基づく昇進制度と、将官への昇進を目指す大佐を対象とした能力評価を導入した。
  • 性的暴行・自殺と募集の動向: 軍内の性的暴行と自殺は減少しており、募集に割当制度を設けなくても、黒人や女性の入隊者は増加している。
  • 指揮官への権限付与: 指揮官たちは、これまでのキャリアを通じて最も大きな権限と能力、そして上層部からの支援を得ていると報告している。
  • 自律司令部: 自律型・ロボット型システムを統合部隊全体に配備することを目的とした、新たな大将級司令部。2027年10月1日までに本格稼働する予定だ。
  • プロジェクト・メリディアン: イーロン・マスク氏、パルマー・ラッキー氏、ニュート・ギングリッチ氏ら著名人が共同で主導する、120日間の包括的な将来戦研究。調査結果は2027年1月下旬に公表する見通しだ。
  • 要塞アメリカ: 国内の軍事基地などの強靱性を高める構想。米国内の主要施設に自家発電設備の整備を義務づけ、重要なサプライチェーンを国内に呼び戻すとともに、通信体制を強化する。
  • 次の偉大な米軍基地: 1万5千~2万5千人の兵士を収容できる新基地の誘致をめぐり、各州の知事に競争させる計画。実現すれば、米国内では約40年ぶりの新たな軍事基地となる。
  • アメリカ士官候補生団: ルイジアナ州立大学、リバティー大学、タスキーギ大学、ミシシッピ州立大学、ヒルズデール大学に新設されるプログラムに対し、「優秀軍事大学」としての地位と、卒業生の任官における優先権を付与する。
  • 長官直属の宗教問題局: 従軍チャプレンの予算や礼拝堂などの施設・設備を確保し、軍人への宗教的支援を守ることを任務とする。

募集実績と定着率が大幅に改善

上記の主張の多くは、それぞれ独立した記事、あるいは一冊の本にできるほどの内容を含んでいる。ここでは、募集実績と定着率に関する主張に焦点を当てたい。

ヘグセス氏は、今回の改革について、「軍の内部だけでなく、外から軍を見ている若いアメリカ人の間でも、非常に好評だ」と述べ、軍人の定着率も過去最高水準にあると説明した。

空母エイブラハム・リンカーンの艦内環境がいかに悪かったかという誇張された論調に反論するかのように、ヘグセス氏は、同艦が260日以上にわたって洋上展開していたにもかかわらず、乗組員の再入隊率は84.4%に達し、空母としても最高水準の一つだったと指摘した。

さらに、ヘグセス氏は募集実績にも言及した。2024年11月のトランプ大統領の選挙勝利以降、陸軍、海軍、海兵隊、空軍、宇宙軍に加え、州兵や予備役、パイロット、特殊部隊など、あらゆる分野で募集記録が更新され続けているという。

実際、現役の5軍種はいずれも2025会計年度の募集目標を達成、または上回り、国防総省全体としても約15年ぶりの好成績を収めた。陸軍は約6万2050人、海軍は約4万4096人、空軍は約3万166人の入隊契約を結んだ。海兵隊と宇宙軍も、それぞれ2万6600人、819人という募集目標を達成した。

2026会計年度の前半も、各軍は定着率の目標を達成、または上回っていた。例えば空軍では、85〜90%の定着率を維持している。

ヘグセス氏は、募集実績と定着率が改善した理由は、入隊ボーナスなどの金銭的な優遇措置ではなく、軍の指導部に対する信頼が回復したためだと語っている。同氏によれば、アメリカ人が入隊し、軍にとどまろうとするのは、自分たちを率いるのが「弱々しい変人ではなく、強い愛国者」であり、昇進も能力に基づいて行われると信じられるときだという。

募集実績と定着率がともに上向くなか、ヘグセス氏は、米軍に戦士の文化を取り戻そうとするトランプ氏の取り組みが、これまでの低下傾向を反転させ、能力、即応態勢、戦闘遂行能力の向上につながったと述べた。

新たな司令部や基地、人材育成の仕組みも重要だ。しかし、軍を支える将兵にとって、それ以上に大切なのは、ヘグセス氏とトランプ氏が自分たちを支えるという約束だろう。

そして、共に戦う仲間たちが、割当制度によって選ばれたのではなく、引き上げられ、改めて重視されるようになった基準を満たしているからこそ、その場にいるのだという確信である。さらに、命令を下す指導者たちにも、同じ基準と規則が適用されるという保証だ。

それこそが、本来あるべき姿だ。それだけのことである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
国防改革を中心に軍事技術や国防に関する記事を執筆。機械工学の学士号と生産オペレーション管理の修士号を取得。