日本のドローン関連企業Terra Drone(テラドローン)は、ウクライナ国防省傘下の防衛調達局(DPA)への迎撃ドローン納品を完了し、同国での防衛事業を拡大している。納品したのは、連結孫会社であるウクライナの防衛ドローン企業Kurin Technologies(Kurin)が開発・生産する「KT-1」と「KT-2」だ。
これまでウクライナ軍の精鋭部隊「第3軍団」などに供給され、実戦で運用されてきた製品は国防省の調達機関を通じて納入されている。同社は年産1万2千機を超える生産体制を構築しており、今後も追加受注を目指す。
ウクライナ国防省は2026年1月1日、軍向け装備品の調達機能を防衛調達局に一元化した。防衛調達局は日本の防衛装備庁に相当する機関で、兵器やドローンなどの調達を担う。テラドローングループは、Kurinを通じてウクライナ軍の最前線部隊に迎撃ドローンを供給してきたが、今回の防衛調達局への納品により、個別部隊への直接供給から国家調達制度を通じた供給へと事業を拡大した。
背景には、ウクライナの戦場で小型無人航空機(UAV)による攻撃が増大し、前線部隊の防空能力強化が急務となっていることがある。
ウクライナ国防省が公表したデータによると、2026年1月1日から9月22日までに同国軍が無力化したロシア側のUAVは35万機を超えた。このうち固定翼型が約22万機、マルチローター型が約10万機で、小型UAVが計32万機以上を占めた。一方、長距離攻撃に使用されるシャヘド型やゲランを含むUAVは約3万1千機だった。
こうした状況を受け、前線ではFPV(一人称視点)ドローンや偵察ドローンなど、低空・近距離を飛行する小型UAVを迅速に迎撃する能力が求められている。
テラドローングループが供給する「KT-1」と「KT-2」は、こうした小型UAVへの対処を目的とした迎撃ドローンだ。最大の特徴は、前線に届けられた後、複雑な機体調整を必要とせず、直ちに発射できる即応性にある。
他社製の迎撃ドローンでは、配送後の品質確認や機体調整に20~30分を要する場合がある。これに対し、Kurinは製造段階での品質管理を徹底することで、現場での調整作業を不要とした。敵ドローンへの対応時間が限られる前線では、こうした準備時間の短縮が兵士の安全確保につながる。
テラドローングループは、実戦部隊から得られた運用上の課題や要望を設計・製造工程に反映させ、製品の改良を進めている。生産能力も拡大しており、2026年4月の商業展開開始から短期間で年産1万2000機を超える量産体制を確立した。
テラドローングループの迎撃ドローンは、ウクライナ軍の第3軍団にも配備されている。
同部隊は2026年、ロシア軍によるスラビャンスク・クラマトルスク方面への突破を阻止し、戦線の安定化を図った「ヴィヴァルディ作戦」を実施した。この作戦では、無人機システムや電子戦装備などを組み合わせた多層的な防空網が運用され、Kurinの迎撃ドローンもその一部を担った。
ロシアによる全面侵攻開始後に領土防衛軍へ志願し、バフムート、アウディーイウカ、ハルキウなどで防空部隊の指揮を経験し、短距離レーダーとUAVを組み合わせた防空システムの構築に携わった第3軍団の防空副司令官・オレクサンドル・ジャン・ヴォロビヨフ氏は、Kurinの製品について「これまで使用したフロントライン迎撃ドローンの中で最も優れている。とにかく品質が高く、すぐに運用できることが兵士の命を守ることにつながっている」と評価している。
テラドローングループは、今回の防衛調達局への納品をウクライナでの防衛事業拡大に向けた足がかりと位置づける。今後は「KT-1」「KT-2」の追加受注を目指すほか、グループ企業のAmazing Dronesなどが手掛ける、シャヘド型をはじめとする長距離攻撃ドローン向けの迎撃製品との組み合わせによる販売拡大を進める方針だ。なお、今回の納品に加え、現在は新たな迎撃ドローンの導入に向けた複数案件を進めている。
テラドローンは、民間分野でも測量、インフラ点検、農業、ドローン運航管理システム(UTM)などの事業を展開しており、産業用途での導入実績は累計3千件以上に上る。ドローン運航管理システム事業は世界10か国で展開している。
テラドローンはドローン分野の調査会社Drone Industry Insightsが発表する『ドローンサービス企業 世界ランキング』で、産業用ドローンサービス企業として2019年以降連続でトップ2にランクインし、2024年には世界1位を獲得した。また、経済産業省主催の「日本スタートアップ大賞2025」では国土交通大臣賞を受賞している。
テラドローングループは、民間事業で培ったドローン関連技術や事業基盤と、ウクライナでの実戦運用を通じて蓄積した防衛技術を組み合わせ、迎撃ドローンを中心とする防衛分野での事業拡大を進める方針だ。
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