ミュンヘン安全保障会議は2月15日に閉幕したが、アメリカのマルコ・ルビオ国務長官の演説は依然として米欧両国で波紋を広げている。
今年の会議において、ルビオ氏は2月14日に登壇した。欧州の指導者に対し、ベルリンの壁崩壊とソビエト連邦崩壊以来、彼らは「危険な妄想」に囚われているという強い警告を発した。
ルビオ氏は、「勝利の陶酔感」が、すべての国が自由民主主義国家になり、国境はもはや重要ではなくなり、国際貿易のルールが国家の経済利益に取って代わるという誤った信念を招いたと述べた。
ルビオ氏の演説は多くの欧州指導者を不安にさせたが、それでも彼はスタンディングオベーションを受けた。専門家たちは、そのメッセージはトランプ米大統領が以前に欧州へ発した警告に似ているが、ルビオ氏はより戦略的な方法でそれを伝えたと指摘する。
トランプ政権の第1期に国家安全保障会議(NSC)に務めたフレッド・フライツ氏は、「あの演説で見られたのは、豊富な経験を持つ米国の政治家による外交のマスタークラス(卓越した技法)だった」と、エポックタイムズに語った。
フライツ氏によれば、ルビオ氏の有効な戦略は、トランプ政権が反欧州である、北大西洋条約機構(NATO)を離脱する予定である、あるいはルールに基づく国際秩序が終了したと考えている、といった主張を否定することから演説を始めた点にあるという。
現在はアメリカ・ファースト政策研究所の副会長を務めるフライツ氏は、「彼は、米国と欧州には長く歴史的な関係があり、米国は欧州を必要としており、アメリカは『欧州の子』であることを説明することで、見事な成果を上げた」と述べた。
ルビオ氏は演説の中で、米国と欧州の強力な歴史的絆は、「共有された歴史、キリスト教の信仰、文化、遺産、言語、祖先、そして先祖たちが共に捧げた犠牲」に根ざしていることを強調した。
ルビオ氏の演説は、JD・バンス副大統領のものよりも対決姿勢が弱いとみなされた。2025年2月、バンス氏は同じ会議での演説で、言論の自由を弾圧し大量の移民を受け入れているとして欧州の指導者らを批判した。彼は、欧州にとって最大の脅威は「内部からの脅威であり、欧州がその最も根源的な価値観、つまりアメリカ合衆国と共有する価値観から退却していることだ」と述べていた。
欧州の指導者らは、ルビオ氏のトーンを歓迎した。
カリフォルニア州オレンジにあるチャップマン大学の大統領研究教授、ルーク・ニクター氏は「演説には多くの内容が含まれている。単なる『鞭』だけではない。かなりの量の『飴』も含まれている」とエポックタイムズに語った。
「演説の大きな部分を割いて、ルビオ長官は欧州がより強くなることを心から望んでいる。彼は欧州が文化的、経済的、そして軍事的に強くなることを求めているのだ」
「西洋の管理された衰退」
ルビオ氏は、ここ数十年の欧州と米国の政策が「西洋の管理された衰退」を招いたと批判した。
「我々は共にこれらの過ちを犯した」と彼は述べた。
彼は、福祉国家の過度な拡大が国防を犠牲にしてきたと主張し、米国のライバルたちが軍事支出を増やし、国家利益を追求するためにハードパワーを行使していることを指摘した。そして、欧州に対し自国の防衛により大きな責任を負うよう促した。
ルビオ氏は続けて、「『気候カルト』をなだめるために、我々は自らにエネルギー政策を課し、国民を貧困化させている」と述べた。
また、数十年にわたる脱工業化とサプライチェーンの主権喪失を「愚かな」政策であると表現した。さらに、大量の移民が西洋全域の社会を不安定化させる危機であり続けているとも述べた。
彼は、トランプ政権下で米国は現在その進路を修正すべく動いており、欧州もその努力に加わるよう促した。
外交政策の専門家であるマイケル・ウォルシュ氏は、エポックタイムズへのメールで次のように述べた。「この演説は、先日発表された国務省の戦略計画を反映している。計画にある欧州向けの重点施策を、型通りの文書ではなく、彼自身の言葉で分かりやすく伝えた形だ」
1月に発表された報告書は、欧州が「米国の有用なパートナーであり続けるため」に、その強さを取り戻さなければならないと記している。
欧州の反応
欧州の指導者らは、この演説に対して慎重な反応を示した。
「私は(ルビオ氏に)非常に安心させられた。我々は彼を知っているし、彼は良き友人であり、強力な同盟者だ」と、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は演説後、ドイツのメディア「ドイチェ・ヴェレ」に語った。
ドイツのヨハン・ワーデフル外相も同メディアに対し、「我々の優先事項と米国側の優先事項が100パーセント重なっているとは言わないが、これは米国と欧州の明るい未来に向けた真の共通基盤であると言える」と述べた。
ユーロニュースが主催したミュンヘン安全保障会議のパネルディスカッションで、EUの外交安全保障政策上級代表のカヤ・カラス氏は、欧州が衰退しているという考えを退けた。
「一部の人々が言うこととは反対に、目覚めた(woke)、退廃的な欧州が文明の抹消に直面しているわけではない。実際、人々は依然として我々のクラブへの加入を望んでいる」とカラス氏は述べ、EU加盟を希望する国々を例に挙げた。
専門家によれば、多くの欧州の政治家はルビオ氏のメッセージに不満を抱いていたが、公の場での批判は避けたという。
「我々のほとんどは、政治を特等席ではなく安い席から眺めている。そこでは政治はまるで歌舞伎の舞台のように見える」とニクター氏は言う。「公の場で語られていることと、私的な場で語られていることは、大きく異なる可能性がある」
フライツ氏は、ほとんどの出席者がルビオ氏に大きな拍手を送ったものの、彼らは演説の内容を気に入ってはいなかったと述べた。
「彼らは自分たちの政策を変えたくないのだ」と彼は語った。
ルビオ氏が演説を自ら執筆したのか、スピーチライターの助けを借りたのかは不明である。国務省はコメントの要請に応じていない。
トランプ政権に国務長官として加わる前、ルビオ氏は2011年から2025年1月までフロリダ州選出の連邦上院議員を務め、上院情報委員会や上院外交委員会などの重要な委員会の委員を歴任した。
フライツ氏によれば、ルビオ氏の経歴と経験が、演説中に彼が示した権威を裏付けているという。
「彼は単に演説を読んでいただけではない。彼はこの内容を熟知しているのだ」。
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