中国共産党(中共)が三菱造船など20社を輸出管理リスト追加。日本軍需チェーン狙い撃ちの一方、メルツ独首相訪中でドイツ拉致。製造覇権と西側分断の策略を簡析。
高市早苗氏が選挙で歴史的勝利を収めた後、中共は対日関係の緩和を図るどころか、逆に対立をエスカレートした。例えば、日本の軍需産業体系を重点的な標的とし、締め付けを強化している。
その前の1月6日、中共側は「軍民両用物資」の日本向け輸出を、軍事用途・軍事ユーザーおよび関連最終用途について禁止すると発表した。そして2月24日、中共商務部は三菱造船株式会社など20の日本企業を輸出管制の管理リストに追加した。これにより、輸出業者や海外組織、個人がこれらの企業に対して軍民両用物資を輸出・移転・提供することを即時に禁止すると発表した。
また、最終用途が確認できない20社(スバル株式会社など)を「注視リスト」に加え、これらへの輸出については許可するものの、より厳格な最終用途および最終ユーザーの審査を実施することとした。包括的な輸出許可の申請は認めず、個別申請のみとし、さらにリスク評価報告書および「軍事用途には使用しない」との書面誓約書を提出させることを義務付けたうえ、審査期間にも期限を設けないという。
今回、管理リストに入った企業群は、造船、航空エンジン、宇宙システム、防衛技術、センサー機器などの分野に及び、日本の軍需産業体系における研究開発、生産、そして人材育成の連鎖を包含しており、まさに日本の軍需産業チェーンの中核をなす企業群を網羅している。
日本軍需チェーン崩壊狙い ハイテク製造業弱体化の意図
この措置によって明らかになったのは、中共が狙っているのは個別企業ではなく、日本全体の軍需産業体系そのものであるという点である。
さらに深い意図として、中共はこれを通じて日本のハイテク製造業を弱体化することを企図している。というのも、日本は「民間に軍需を内包する」構造をとっており、国家として専用の兵器工場を設けてはいない。武器装備の研究開発および生産の大部分は、防衛省が契約方式により民間企業へ委託している。そのため、日本の軍需産業体系が打撃を受ければ、日本の製造業全体の根幹が揺らぐことになる。
また、「注視リスト」に含まれた企業群は、日本の高度製造業の中核的な民間分野を網羅している。もし日本が長年保持してきた高水準かつ完全な製造体系に綻びが生じれば、それは中共が推し進める「製造強国」への道を加速させる要因となるであろう。
中国製造2025第二段階 日本・ドイツ超えの野望
中国はすでに「製造大国」ではあるが、「大きいが強くない」という状況にあり、中共は長年にわたり「製造強国」への転換と、世界製造覇権の掌握を夢見てきた。2015年に策定した「中国製造2025」では、製造強国の第1陣営をアメリカ、第2陣営を日本とドイツ、第3陣営の筆頭を中国と位置づけた。その計画は「三段階」で構成されており、2025年までにドイツ・日本と肩を並べ、2035年までに両国を超え、2049年にはアメリカに追いつき、さらには凌駕することを目標としている。
中共が昨年末に発表した「2025中国製造強国発展指数報告」によれば、同党は自ら「第一段階」の目標を達成し、世界の製造強国「第二陣営」入りを果たしたと主張している。これにより、中国はアメリカ、ドイツ、日本に次ぐ「第四の製造強国」となったと自賛している。
そして現在、中共は「製造強国」建設の第二段階として、日本とドイツを追い抜こうとしている。その手段の一つが、大規模な資金投入による中国製造業の転換・高度化の加速である。公式データによれば、2025年の中国研究・実験開発(R&D)費は3兆9262億元(約82兆円)に達し、世界第2位となった。研究開発投資強度(GDP比)は2.8%となり、初めてOECD加盟国の平均を上回った。
もう一つの手段は、より陰謀的かつ策略的な動きである。すなわち、西側諸国から先進的な科学技術や製造ノウハウを引き続き入手しつつ、同時に西側の結束を分断する。一方では牽制し、一方では懐柔する手法である。こうして中共は、対中包囲網の形成を阻もうとしている。そのなかでとりわけ重視しているのが、「ドイツを引き込み、日本を叩く」という戦略である。
メルツ首相訪中と5協定 ドイツ懐柔のタイミング
たとえば、中共は2月24日に初めて日本向けの輸出管理・注視リストを発表したが、その翌日25日には、ドイツのメルツ首相が就任後初の訪中を行い、中共と5件の協力協定を締結した。
これは単なる偶然と言えるだろうか。中共は常に「外交に小事なし」と語る。事情に通じた者なら、そこに中共の外交的布石に狡猾な意図を見て取るに違いない。
近年、ドイツ経済は深刻な困難に直面している。ウクライナ戦争によりロシアからの安価なエネルギー供給が途絶え、人手不足も深刻化した。さらに米独関係の不安定さも重なり、2023年と2024年は2年連続でマイナス成長となった。2025年も成長率はわずか0.2%に留まっている。かつて誇りとされた「ドイツ製造」も揺らぎを見せ、2025年の工業生産水準は2018年比で約14%低下、特に自動車産業では20%以上の落ち込みとなった。
こうした中で、メルツ氏や多くのドイツ国民は中共の危険性を一定程度理解している。中共の輸出ダンピングや補助金政策、ドイツ製造業への競争圧力に対して反感を抱いている。しかし、対中貿易赤字が拡大しているにもかかわらず、「リスク低減(デリスキング)」のみにとどまり、完全なデカップリング(分断)は避けたいと考えている。「バランスの取れた、信頼できる、規範的で公正な経済関係」を築けると幻想している。
このような姿勢こそが、中共にとってドイツ懐柔の好機となっている。ただし、どの程度まで取り込めるかは未知数である。ドイツにも理性はあり、国際情勢も明白であるからだ。
では なぜ中共は「ドイツを懐柔し 日本を攻撃する」のか
地政学的に見れば、ドイツは中国から遠く、日本は近い。中共は外交原則「遠交近攻(遠きを友とし、近きを攻める)」を行っている。しかし、より深い次元で言えば、中共の分析として、日米両国は同じ路線を進んでおり、日米関係を分断することは不可能だとの判断がある。「台湾有事は日本有事であり、すなわち日米同盟の有事である」。すでに日中関係は断裂しており、中共は日本の「再軍事化」や「核保有志向」を口実に、徹底した対日攻撃を強めている。
総じて言えば、中共が輸出管理という手段を用いて日本の軍需産業体系を打撃しようとしているのは、多層的かつ多目的な政治・経済戦略の一環である。

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