台湾海峡で戦争が起きた場合の再招集呼びかけ 疑問を呈する中共軍の退役軍人

2026/03/02
更新: 2026/03/02

中国共産党(中共)政府当局が台湾紛争への備えを呼びかける中、中国の退役軍人の一部からは、果たされない約束や経済的困難、広がる失望感が指摘されている。

 

長年にわたり、中共当局は軍の退役軍人に対して単純なメッセージを発信してきた。国家から召集があった場合には従うことが期待されているというものである。2025年4月に施行された中国共産党軍(中共軍)の改定軍事規則では、正式な退役宣誓の最後に「戦争があれば、召集されたとき我々は戻る」という文言が盛り込まれている。

このスローガンは、中共政権が台湾との「国家統一」を達成するために武力行使の可能性を排除しないと警告してきた姿勢を反映している。しかし、一部の中国の退役軍人の間では、この呼びかけは空虚に響いている。

最近拡散した動画では、ある退役軍人が「12年間軍にいたが、初心は変わっていない」と語った後、青龍刀を使った武術の動きを披露している。この動画には賛否が寄せられ、愛国心を称賛する声がある一方で、退役軍人の精神状態を疑問視する意見も出た。

オンライン上の議論の背後には、より深い問題がある。複数の中国退役軍人は最近、エポック・タイムズに対し、退役後に与えられると約束されていた福利や就職の斡旋が実現していないと語った。複数の中国退役軍人は報復を恐れ、匿名を条件に取材に応じた。

不満を抱く退役軍人

四川省出身で、2016年に中共軍を退役するまで8年間勤務した元兵士は、理論上は退役軍人を国有部門の職に優先的に配置する長年の政策があるにもかかわらず、退役時に正式な就職先の斡旋を受けなかったとエポック・タイムズに語った。

この退役軍人はその後、建設現場の仕事や肉体労働を経て、最近は警備員として働いている。離婚しており、経済的にも困難な状況にあるという。

中共が台湾侵攻を決定した場合に再招集に応じるかとの質問に対し、この退役軍人は「もう中年だ。行かない。政府の仕事や福利がある人たちに行かせればいい。彼らの方が自分より恵まれている」と答えた。

この発言は、さらなる犠牲を求める呼びかけに対し、退役軍人の一部の間で懐疑が広がりつつあることを示している。

旧正月期間に相次いだ出来事

今年の旧正月休暇は本来祝祭の時期だが、中国各地で退役軍人に関連する出来事が相次いだ。

広東省のある退役軍人は、退役軍人向けの旧正月の贈答品を批判する動画をSNSに投稿した。贈答品は印刷された宣伝資料と対聯だけで、期待していた金銭的支援は含まれていなかったという。

別の動画では、2月9日に北京市豊台区の信訪弁公室の外で高齢の退役軍人が木に登る様子が映されており、抗議の意思を示す自殺未遂とみられている。

中国では信訪制度は住民の苦情や不満を受け付ける行政手続きとされているが、実際には形式的な制度にとどまり、当局は請願者を退け、抗議活動を行う者を迫害することも少なくない。

こうした事例の一つとして、1990年代初めに中共空軍を退役した左栄民という退役軍人の話がある。左栄民は退役軍人の権利について当局に請願した後、報復を受けたとSNSで主張した。左栄民は2025年に広州市で移動中に毒を盛られたと訴え、警察に被害届を出したが、実質的な対応は得られていないという。現在は広西チワン族自治州に住んでおり、医療費を負担できないと述べている。

中共当局はこれらの主張に公に回答しておらず、中国の国営メディアも、退役軍人の抗議を「解決済みの問題」として報じる場合を除き、ほとんど取り上げない。

過去の退役軍人抗議

中国で退役軍人による大規模抗議が起きたのは今回が初めてではない。

2016年には数千人の退役軍人が中共政府の中央軍事委員会本部を取り囲んだ。2018年にも全国各地で同様の抗議が起きた。

中共政府は2018年、福利の改善を目的として退役軍人省を設立した。その後2020年には、退役軍人の待遇や保護を制度化することを目的とした新たな法律も制定した。

しかし、新型コロナウイルスのパンデミックや地方政府債務の増大などの経済的逆風により、財政は圧迫されている。

ニュージーランドに亡命している中国人退役軍人の張和利は、退役軍人省の設立は社会の安定への懸念と福利制度改革の双方の動機によるものだったとエポック・タイムズに語った。張和利によれば、一部の地方政府は特定の退役軍人に限って限定的な補償を行う一方、集団請願を組織する退役軍人を抑え込むこともあるという。

2016〜2018年のような大規模動員は再び起きていないが、退役軍人による座り込みや抗議行進など、小規模な出来事は今もオンライン上で散発的に報告されている。2025年12月には、軍の住宅団地で警察と退役軍人の家族の間で暴力的衝突が発生した。2025年11月に雲南省で撮影された動画では、1979年の中越戦争に従軍した高齢の民兵退役軍人が、わずかな月額補助を求めて当局者の前でひざまずく様子が映っている。

また2025年6月に江蘇省の駅で撮影された動画では、ある退役軍人が「軍隊に入ったのは間違いだった。共産党に入ったのも間違いだった」と叫ぶ様子が拡散した。中共当局は通常、地方レベルでの調停や限定的な補償の提供、あるいは抗議の拡大を防ぐための抑圧措置によって対応している。

反腐敗調査と軍の士気

退役軍人の困難が続く一方で、中国共産党は軍と官僚機構に対する大規模な反腐敗運動を継続している。当局は1月下旬、退役軍人省の元トップである孫紹騁に対する調査を発表した。関係者は以前、軍内部の粛清が軍の士気に影響を与えているとエポック・タイムズに明らかにしている。

ニュージーランド在住の退役軍人張和利は、退役軍人の扱いは現役兵士にとっても将来を示すメッセージになると指摘した。張和利によれば、多くの兵士は退役軍人が福利を求めて行動することに内心感謝しているが、公然と発言することは難しいという。

中国情勢の評論家である李林一氏は、習近平が最近、軍内部の粛清を強化しており、中央軍事委員会の前副主席だった張又侠の排除などが士気を動揺させているとエポック・タイムズに語った。

李林一氏は、多くの中国退役軍人が置かれている厳しい状況は現役兵士にも影響を与える可能性があるとの見方を示し「中共は国内でこうした否定的な情報の拡散を阻止する一方、民族主義的メッセージを用いて兵士への思想教育を強化している」と述べた。

張和利は、中共が長年にわたり欺瞞によって統治してきた歴史があると指摘しつつも、現役および退役の軍人が政権の虚偽や宣伝を見抜くことに期待を示した。張和利は、中国国民の真の進歩は中共が崩壊して初めて実現すると強調し、自身が「邪悪な権威主義体制」と呼ぶ政権を支持すべきではないと述べた。

中国関連の話題に焦点を当てる大紀元の寄稿者です。