中国国務院は「産業チェーン・サプライチェーンの安全に関する国務院規定」を公布し、即日施行した。
「国家安全法」や「反外国制裁法」に基づき制定された本規定は、サプライチェーンにおける安全リスクの発生を未然に防ぎ、強靭性と安全性を向上させることで、経済社会の安定と国家の安全を維持することを目的とされている。
ジェトロの報道によると、規定では、域外の国・地域や国際機関が中国に対して差別的な禁止や制限措置を講じた場合、あるいは域外の組織や個人が正常な市場取引の原則に違反して中国のサプライチェーンに損害を与えた場合、中国共産党政府が安全調査を実施する権利を有すると明記された。
さらに、その調査結果に応じて、貨物や技術の輸出入禁止・制限、特別費用の徴収、関係者の対抗リスト掲載などの厳格な措置を講じることができるとしている。中国の司法部によれば、これまでサプライチェーンの安全に関する専門的な法令が存在しておらず、本規定により調査制度や対抗措置、域外適用規定が明確化されたという。
一方The New York Timesによると、この新たな規制は、外資系企業が自国政府の政治的圧力に屈して供給網を中国から他国へ移管する、いわゆる「デカップリング」を阻止するための強力な措置として受け止められている。アナリストたちは、この曖昧な文言の規則により、外国企業が中国での合弁事業から撤退したり、海外のサプライヤーに発注を切り替えたりすることが格段に難しくなる可能性があると警告している。
特に外資系企業の強い懸念を集めているのが、当局に与えられた調査・処罰権限の拡大である。新規定のもとでは、規制当局は調査の過程で従業員を尋問したり、企業の記録を調査したりすることが可能となる。さらに、外国の圧力によってサプライチェーンを国外へ移したと疑われる場合には、企業や個人の中国からの出国を禁じる措置を下すことさえ可能とされている
中国欧州連合商工会議所のイェンス・エスケルンド会頭は、「明確で透明な法的手続きを欠いたまま、従業員個人が出国禁止によって処罰される恐れがあることは憂慮すべき事態だ」との声明を発表し、強い危機感を示した。
また、在華米国商工会議所のマイケル・ハート会頭も、規定の草案作成段階で外国企業への相談が一切なかったことを指摘している。同氏は、「明確性が高まらなければ、外国企業は中国からのデリスキング(リスク低減)をさらに進める原因になりかねない」と警告し、外国企業への法的脅威の蓄積が中国にとって裏目に出る可能性を示唆した。
中国政府は自国の経済的安定と国家安全を守るために本措置が必要だとしているが、西側諸国で高まる保護主義への対抗策が、結果として外資系企業の中国離れを加速させるリスクをはらんでいる。
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