韓国海洋警察庁は5月27日、韓国西海岸沖でゴムボートに乗っていた中国籍の男を逮捕したと発表。複数のメディアは、この男が、過去に何度も中国からの脱出を試みた中国の反体制活動家である可能性が高いと報じている。
韓国西海岸沖で中国籍の男を逮捕
韓国西部の泰安海洋警察署は声明で、25日深夜、韓国の漁船が韓国西海岸から約38海里沖で、ゴムボートに乗った男を発見し、当局に通報した。ゴムボートは全長約3.3メートルで、10馬力のエンジンを備えていたという。
声明によると、男を出入国管理法違反の疑いで逮捕し、現在、当局の取り調べを受けている。
海洋警察の関係者は、容疑者の氏名や、どのようにしてその海域まで来たのかについては明らかにしなかったが、60代の中国人男性だと説明した。
一部の独立系メディアは、この男が中国の反体制活動家、董広平氏だと伝えている。男を発見した場所は、中国沿岸部から韓国までの最短距離約310キロの途中にあたる海域だった。
英紙ガーディアンは、男は68歳の董氏だと報じた。董氏は山東省濰坊市の沿岸部から出発し、約30時間かけて海を渡ったとみられ、発見時には意識がもうろうとした状態だったという。同紙によると、カナダ在住の著名な民主活動家、盛雪氏がすでに董氏と電話で話したという。
元警察官 天安門事件の公開書簡で解任
董氏はもともと警察官だった。1999年末、天安門事件10周年に関する公開書簡に署名したことを理由に、中国共産党(中共)当局により警察官の職を解かれた。
その後、2001~04年にかけて、「国家政権転覆扇動罪」で3年間投獄された。出所後も人権活動を続け、2014年5月~15年2月まで、天安門事件の追悼活動に参加したとして再び拘束された。
董氏はこれまで何度も中国からの脱出を試みたが、中共当局に阻止されたり、逃れても中国へ連れ戻された。
2015年9月、董氏は妻子とともにタイへ逃れ、国連難民高等弁務官事務所から難民認定を受けた。カナダへの第三国定住も認められていた。
しかし同年10月28日、中共の国安当局が介入し、董氏と人権活動家の姜野飛氏をバンコクで拘束し、中国へ連行した。
董氏はその後、テレビで自白を強要されて、非公開で審理された。「国家政権転覆扇動罪」と「不法越境罪」で懲役3年6か月の判決を受けた。董氏の判決後、妻子はカナダに移住した。
台湾 ベトナムへの脱出も失敗
董氏は2019年8月に出所したが、その後も当局の監視や制限を受け続けた。同年12月、地元警察による監視や嫌がらせを逃れるため、福建省沿岸部の石獅市へ向かい、台湾へ逃れようとしたが、失敗した。
この時の経緯については、河南省の警察に位置情報を特定され、連れ戻されたと言われている。一方で、金門島へ泳いで渡ろうとした際には中国漁民に発見され、中国へ連れ戻されたとの説もある。
2020年1月5日、董氏は再びベトナムへ逃れ、ハノイで身を隠しながら、カナダへの難民受け入れ手続きを待っていた。しかし、2022年8月24日に行方不明となった。
その後、ベトナム警察が董氏の滞在先で密かに身柄を拘束し、広西チワン族自治区の国境警察に引き渡していたことが分かった。さらに河南省鄭州市の警察が董氏を鄭州へ連れ戻し、「不法越境罪」で懲役11か月の判決を下した。
当時、一部からは、ベトナムによる董氏の送還について、ベトナム共産党書記長の訪中に合わせて習近平に差し出した「贈り物」だとの批判も出た。
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