アジア開発銀行(ADB) 700億ドル規模の次世代インフラ投資構想を発表

2026/05/06
更新: 2026/05/06

アジア開発銀行(ADB)は2026年5月3日、ウズベキスタンのサマルカンドで開催された年次総会において、2035年までに総額700億ドルを投じる新たなインフラ支援イニシアティブを発表した。本イニシアティブは、アジア・太平洋地域のパワーグリッド接続強化や国境を越えた電力取引の拡大、そしてブロードバンドアクセスの向上を目的としている。

背景

ADBの神田眞人総裁は、「エネルギーやデジタルへのアクセスは、地域の将来を決定づけるものである」と述べており、アジア・太平洋地域が成長を遂げ、競争力を高めるためには、国境を越えたネットワークの連結が不可欠であると位置づけている。 これまで同地域におけるエネルギー連結の取り組みは国単位で進められることが多かったが、今回の構想はそれを電力取引における地域的アプローチへと大きく転換するものである。南アジア地域経済協力(SASEC)や中央アジア地域経済協力(CAREC)エネルギー戦略2030、ASEANパワーグリッドといった既存の地域単位での協力を基盤として、より広域的な相互接続を目指している。

二つの主要な取り組み

今回の構想は、大きく二つの柱から成り立っている。

1. パン・アジア・パワーグリッド・イニシアティブ

各国の電力システムを相互接続し、再生可能エネルギーを国境を越えて大規模に融通可能にすることを目指し、2035年までに500億ドルの資金動員を図る。国境を越えた送電線や変電所、蓄電設備の整備、およびグリッドのデジタル化に重点が置かれる。資金の約半分はADBの自己資金で賄われ、残りは民間セクターを含めた協調融資などを通じて調達される見通しである。

2. アジア・太平洋デジタルハイウェイ

デジタルインフラの格差を解消し、同地域がAI主導の成長の恩恵を享受できるよう、2035年までに200億ドルを投資する。陸上および海底の光ファイバーネットワークや衛星通信リンク、地域データセンターなどの整備を進める。本投資のうち150億ドルは自己資金から、50億ドルは協調融資で調達される見込みである。

今後の予測と期待される効果

本イニシアティブの推進により、2035年までに以下のような大規模な成果と波及効果が予測されている。

エネルギー分野においては、約20ギガワットの再生可能エネルギーが国境を越えて統合され、総延長2万2千キロメートルに及ぶ送電網が新たに構築・接続される見込みである。これにより、約2億人のエネルギーアクセスが改善し、84万人の新規雇用が創出されるとともに、電力部門における温室効果ガス排出量が15%削減されることが期待されている。

一方デジタル分野においては、地域全体で2億人にブロードバンドへの新規アクセスが提供され、4億5千万人が高速かつ信頼性の高いデジタル接続環境を利用できるようになる予測である。これにより、遠隔地や内陸国における接続コストが約40%削減され、400万人規模の雇用創出が見込まれている。さらに、韓国政府からの2千万ドルの拠出によりソウルに設立される「AIイノベーション・開発センター」を通じて、約300万人を対象としたデジタル・AI関連分野の人材育成が進められる予定である。

国境を越えた電力・デジタルインフラの統合は、コストの削減と機会の拡大をもたらし、数億人の人々に安定したアクセスを提供することで、アジア・太平洋地域の持続可能で強靭な経済成長の原動力となることが予想される。

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。