大紀元時報

アングル:中国人が愛する米国産チェリー、貿易戦争で姿消す

2019年08月01日 09時13分
7月22日、中国の中流層が好む米国産チェリーは、貿易戦争のあおりを受け、輸入量がピーク時の1割強にまで落ち込んだ。写真は米生産者団体が中国で開いたアメリカンチェリーの宣伝イベント。2018年7月8日、深センで撮影(2019年 ロイター/Bobby Yip)
7月22日、中国の中流層が好む米国産チェリーは、貿易戦争のあおりを受け、輸入量がピーク時の1割強にまで落ち込んだ。写真は米生産者団体が中国で開いたアメリカンチェリーの宣伝イベント。2018年7月8日、深センで撮影(2019年 ロイター/Bobby Yip)

Yawen Chen Shivani Singh

[北京 22日 ロイター] - レイチェル・リーさんにとって、米国から輸入される「美しい」チェリーに高いお金を払うのは、考える必要もない当然の選択だった。

広東省広州市で広報の職に就く33歳のリーさんは、「チェリーは鉄分が豊富だと聞いている」と話す。「食べると健康的で贅沢な気分になる」

だが、それも過去の話だ。中国政府は米国からのチェリーに高い関税を課し、輸入事業者は萎縮し、店の棚は空っぽになってしまった。リーさんのような消費者は、代わりのフルーツを見つけなくてはならない。

中国の大都市圏で増える中流層が好む米国産の高価なアメリカンチェリーは、加熱する米中貿易戦争の象徴的な犠牲者となった。税関のデータによれば、輸入額は2000年のほぼゼロから2017年には2億ドル近くまで増加した。しかし、現在はピーク時の1割強にまで落ち込んでいる

中国政府は米国産チェリーへの輸入関税を50%に設定する一方で、中央アジアからの輸入規制を緩和した。そこはまさに、習近平国家主席の看板政策「一帯一路」の中心となる地域だ。

北京のコンサルティング会社チャイナ・ポリシーで農業問題を扱う上級アナリストのイーブン・ペイ氏は、「中国にとって、『一帯一路』に参加する国々と経済的な連携を構築し、新たな市場を提供するような形で計画を進める好機が訪れている」と語る。

ロイターは中国商務省にコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。

記事執筆時点で入手できる最新の月次データは5月のもので、例年なら中国のチェリー輸入が最初のピークを迎える時期に当たる。ロイターが算出したところ、前年同月はゼロだったウズベキスタン産のチェリーは、輸入量全体の半分近くまで急増した。一方で、2017年5月に独占状態だった米国産は、18年5月に8割に、今年5月は38%まで低下した。

もっとも、中国が輸入するチェリーの総量自体が大きく減少している。原因は、米国からの輸入が激減したことだ。2017年5月に1505トンだった輸入総量は、2019年5月には187トンまで落ち込んだ。

果物を輸入する企業4社に聞いたところ、ウズベキスタン産チェリーの小売価格は1キロ当たり約70─80元(約1100─1250円)。米国産チェリーが大好きな冒頭のリーさんがつぎ込んできた1キロ当たり160元のおよそ半分ということになる。

価格はどうあれ、入荷する量自体が非常に少ないため、リーさんはもう何週間も輸入物のチェリーを目にしていないという。ロイター記者も上海中心部のスーパーマーケットと小さな食料品店で米国産を探したが、手ぶらで帰ることになった。

<市場拡大は不可能に>

米国南西部のチェリー農家団体の中国駐在代表を務めるビクター・ワン氏は、今はじっと我慢の時期だと話す。

ワン氏によれば、米国産チェリーは17年間にわたるマーケティングと政府へのロビー活動の末、中国で最も愛される果物に数えられるようになったという。団体加盟者の中国向け輸出量は、国境を接するカナダ向けを上回っていたほどだ。

状況は2018年に一変した。中国が2度にわたって関税を引き上げ、40ポイントも上昇したのだ。「関税の引き上げでコストが途方もなく高くなった。ドル高の影響もあり、さらに市場を拡大することが不可能になってしまった。今は現状維持が精一杯だ」と、ワン氏は言う。

さらに厄介なことに、今年は米国産フルーツの広報活動にも苦労しているという。中国国内メディアの多くが取材や報道をせず、電子商取引大手アリババなどの提携先企業も宣伝キャンペーンを拒否していると、ワン氏は言う。

アリババは米国産チェリーの宣伝活動を取りやめたことを認めたが、米中対立と関係しているのではないかという見方は認めなかった。アリババによれば、キャンペーン中止は季節や休日、詳細不明だが「市場関連の要因」によるものだという。

アリババはロイターへの回答の中で、「現在の地政学的環境に結びつける憶測には根拠がない」とした。

<「一帯一路」参加国への規制緩和>

米国からの供給が減少していることに合わせ、中国政府は「一帯一路」に参加するウズベキスタンやトルコ産ついて、出荷前の冷蔵を最大21日とする規制を緩和し、害虫防止措置として、気体の薬剤を使った消毒方法を認めて輸出を容易にした。

浙江省の電子商取引企業でゼネラルマネジャーを務めるチュー・ジャンフェン氏は、チャンスを見逃さなかった。チュー氏は以前からウズベキスタン国内のプロジェクトに複数投資しており、同国政府とも「非常に強い人脈」があると話す

チュー氏の会社は今年、初めてウズベキスタン産チェリー300トンを輸入した。2020年には輸入量を5000─1万トンに増やす計画だ。

チュー氏によると、ウズベキスタンは加工技術が不足しているため、空輸されたチェリーの賞味期限は最長でも5日間だという。米国産は最長2週間持つ。ウズベキスタン国内の加工ラインに投資を拡大することで、産業の発展をサポートしたいと、チュー氏は話す。

舞台は再び広州市。レイチェル・リーさんは、健康と贅沢を追求するためのフルーツを、チェリーからアボカドに変更した。市場のデータから考えると、リーさんが購入しているアボカドはペルー産の可能性が高い。しかし、どの国から輸入しているのか気にするのはもう止めたと、彼女は言う。

(翻訳:エァクレーレン)


7月22日、中国の中流層が好む米国産チェリーは、貿易戦争のあおりを受け、輸入量がピーク時の1割強にまで落ち込んだ。写真は米生産者団体が中国で開いたアメリカンチェリーの宣伝イベント。2018年7月8日、深センで撮影(2019年 ロイター/Bobby Yip)
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