米大統領選挙が膠着する3つの主因

2020/11/06
更新: 2020/11/06

11月3日に投票開始日を迎えた米国大統領選挙膠着状態が続いている。今回の選挙は米国の将来を決める重要なイベントである。トランプ大統領の言葉を借りると、米国民は今回の選挙を通して「アメリカン・ドリーム」か、あるいは「社会主義」かを選ばなければならない。

トランプ政権過去3年間の業績をみれば、本来なら、トランプ大統領の再選は約束されたと言えよう。しかし、最終投票者数が過去最大の1億5000万人になる今回の選挙は、正義と邪悪の戦いの場となっている。不正行為を除き、以下の3つの主因で、米大統領選挙で接戦と混乱が続いていると考える。

米国の政治的二極化の進行

米国では、政治的二極化の事例は、南北戦争の前後、進歩主義時代、大恐慌期などにみられたことがある。しかし、20世紀に入ってから、政治的二極化は急速に進んでいた。米ブラウン大学経済学者のジェシー・シャピロ(Jesse Shapiro)氏が今年1月20日に他の研究者と共著した新しい調査報告では、過去40年間、米国での政治的二極化の進行のペースは、カナダ、イギリス、オーストラリア、ドイツより早いという。

狭義の政治的二極化とは、二大政党制における共和党と民主党の分断と対立を定義する。広義の政治的二極化には、エリート層の二極化、社会階級の二極化、イデオロギー的二極化が含まれる。これは、米議会の立法などの場合、野党が政府や与党の足を引っ張ることでよくみられる。共和党と民主党のイデオロギー的二極化に伴い、有権者の間では対立が起き、米国50の州が「赤い州(共和党支持の州)」と「青い州(民主党支持の州)」に分けられている。さらに、共和党と民主党が、文化・宗教・道徳的価値観においても対立を深めているため、宗教的な信仰のある有権者とそうでない有権者の存在が生まれ、投票の行方に大きな影響を与えた。

共産主義の米国への全面浸透

人口から見ると、米国は西側先進国の中で信仰心が最も深い国である。歴史上、米国ではキリスト教復興運動、いわゆる大覚醒(Great Awakening)を4回も経験した。

しかし1960年代、道徳的価値観上のリベラル派と、「カウンターカルチャー(既存の文化や体制を批判し敵対する文化)」を主張するベビーブーマーが「新左翼」として政界に入り、伝統的な価値観に対抗した。とくに1973年、「ロー対ウェイド事件」で米国最高裁が判決を言い渡した後、人工妊娠中絶は米社会の最大の関心事となった。これをきっかけに、米社会は、文化、宗教と道徳的価値観において長年分断されている。

これは、共和党と民主党の政治思想と政策、両政党のイメージにも反映されている。現在、両政党のイメージは主に、文化的・社会的問題について何を主張しているかによって大きく決められている。

民主党は環境保護、同性愛者の権利、銃規制を主張する政党としてみられている。共和党は、胎児の命と権利を重視し、伝統的な価値観を肯定し、減税、反銃規制の政党としてみられている。

価値観の対立が深まる中、共産主義も密かに米国に浸透している。これが原因で、米国の若者の社会主義に関する認識が極めて大きく変化し、米史上初の「社会主義大統領」、オバマ大統領(2009~17年)が誕生した。さらに、米国での共産主義イデオロギーの広まりによって、民主党の社会主義化も顕在化している。

トランプ大統領は政権運営にあたって伝統的な価値観を守りながら、対内では共産主義支持者を排除し、対外では中国共産党政権に対抗している。

拮抗する両陣営

現在、トランプ大統領陣営にとって有利な事が2つある。

1つ目は、米国の景気拡大である。米国経済は、トランプ政権の最初の3年間において、年平均2.5%の成長を続けた。これは、オバマ政権の最後の3年間(2015~17年)の年平均2.3%を上回った。また、今年2月の失業率は3.5%にとどまり、50年ぶりの低水準となった。実質賃金(インフレ調整後)が上昇しており、2019年2月には、その上昇率が2.1%となった。米国の貧困層人口も、2019年に約420万人減少し、過去最低水準となっている。主要株価指数ダウ平均は、今年初め史上最高値を更新した。中共ウイルス(新型コロナウイルス)の大流行で、ダウ平均株価は大きく下落したが、現在、大流行前のレベルまで回復した。

2つ目は、バイデン氏一家に関するスキャンダルが報じられたことだ。10月14日、米紙ニューヨーク・ポストは、バイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏のパソコンに保存されている電子メールに基づき、同氏がウクライナや中国などの企業との間で不正なビジネスを行っていたと報道した。その後、ハンター氏の元ビジネスパートナーも公の場で証言した。しかし、左翼メディアとSNS大手は、報道せず、情報規制を行い、このスキャンダルを隠ぺいしようとしている。

一方、バイデン氏陣営にも有利な状況が3つある。

1つ目は、米国における中共ウイルスの感染拡大だ。米国の感染者数はすでに900万人を上回り、死者数は23万人を超えた。左翼らは「新型コロナウィルスは神から左派へのプレゼントだ」と発言した。しかし今年初め、トランプ政権が、感染の発生源である中国武漢市から外交官やその家族、他の米国民を退避させると決めた時、左翼は強く反発した。

2つ目は、感染拡大による景気悪化だ。今年2月、感染者急増で、米国経済は128カ月間の景気拡大が終わった。これは近代市場では最も長い成長期だった。また、4~6月期の国内総生産(GDP)は前年同期比で約33%減となり、過去最大の落ち込みとなった。米議会は6月1日に提出した報告書で、将来十数年間に、感染状況による米経済の損失は7兆9000億ドル(約817兆円)にのぼると警告した。

3つ目はBLM運動だ。今年5月26日、黒人男性が白人警官に取り締まられた際に死亡したことを契機に、「BLM(黒人の命は大事)」運動は広まった。極左暴力集団「アンティファ(ANTIFA)」が深く関与しているとみられる。運動参加者は、人種差別を抗議しながら店舗での強奪や破壊行為を繰り返し、歴史的な記念碑や人物の銅像を破壊した。BLM運動が始まった際、民主党が応援したため、多くの支持者を獲得した。

以上、5つの要因で両陣営が拮抗しているとみる。

2020年大統領選挙は米国の将来を決めるうえで非常に重要なイベントだ。投票日から3日過ぎた今も、米大統領選挙で依然と膠着状態が続いているという異例な事態は、米国人にあるメッセージを送っているかもしれない。つまり、「国の運命は個人の運命に大きな影響を与える。1票を大事にせよ。憲法に与えられた権利、民主主義の公正性と透明性を守り抜こう」ということだ。

(文・王赫、翻訳編集・張哲)

関連特集: