「人間が飼料を食べる時代が来たのか」──そう疑いたくなるような現象が、いま中国で現実になった。
中国のSNSでは「人間用飼料」と呼ばれる代替食「若飯(ルオファン)」に関する投稿が急増し、「3分で食事完了」「30元(約600円)で1日分の栄養補給」とうたうこの製品は、温水を注ぐだけで完成する簡易栄養食。
もともとはあるプログラマーが昼休みすら満足に取れない勤務環境の中で発案し、栄養だけを効率よく摂るというコンセプトで開発されたものだ。現在は粉末、固形、液体と多様な形で展開され、爆発的な人気を博した。

SNSでは「仕事が忙しくて昼休みがない」「若飯があって助かった」と肯定的な声もある一方で、懸念や皮肉も噴出し「ご飯を惜しんでまで働きづめとは…」「自動給餌機でも置けば?」「これが本当に豊かな生活といえるのか?」「次は点滴か?」といった批判も少なくない。

一部人気ブロガーも「人間には食事の時間が必要だ。これは進歩なのか、退化なのか」と憤った。
便利さを追い求めた結果、人間らしい生活の象徴である「食事」までもが機能のひとつに還元されようとしている現実に「次は何を失うのか」と危機感を募らせる人も多い。
日本でも「時短」「効率」の名のもとに「手軽さ」を求める風潮が広がったが、心を込め、時間をかけて煮込んだ一皿や、食卓を囲んで味わうひとときの中にこそ、人間らしい豊かさがあるはずだ。
人間はロボットではない。栄養だけでは満たせない「何か」を、私たちは食事に求めているのではないか。

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