ジョージ・グラス駐日米国大使は、2025年6月20日に南シナ海で発生した中国海警局によるフィリピン船への放水砲発射事件を受け、自身のX(旧Twitter)アカウントで中国の行動を強く批判した。
グラス大使は「中国にも『旅は道連れ世は情け』のようなことわざがある。しかし、中国政府は先日、南シナ海でフィリピン船舶に放水砲を発射した。これは、この金言を全く無視した攻撃に見えるのだが。中国はまたしても国際法を無視し、他国を力で屈服させようとする姿勢を露わにしている」と述べ、中国の行為を一方的な不法行為だと断じた。
この発言の背景には、南シナ海における中国とフィリピンの領有権をめぐる長年の対立がある。事件はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置するスカボロー礁周辺で発生した。フィリピン当局によれば、漁業水産資源局の船がフィリピン漁船に物資や燃料を供給していた際、中国海警局の船が進路を妨害し、放水砲を発射した。放水による重大な損害はなかったものの、フィリピン側は「違法な行動で乗組員らの安全が脅かされた」と強く非難している。
一方、中国側は「警告を無視して侵入したため、必要な措置をとった」と主張し、あくまで自国の主権行使であると反論している。中国はスカボロー礁を含む南シナ海の広範囲に対し「歴史的権利」を主張し、独自に「領海基線」を設定して国連に提出するなど、実効支配の強化を進めている。
南シナ海の領有権問題は、2016年の国際仲裁裁判でフィリピンの主張がほぼ全面的に認められ、中国の「九段線」主張は国際法上認められないとされた。しかし中国はこの裁定を受け入れておらず、海警局や海軍の艦船による威圧的な行動が常態化している。

21日、海上自衛隊護衛艦「いせ」と「すずなみ」が多国間共同訓練参加のためフィリピンに寄港し、歓迎を受けた。


海上自衛隊の夏井隆第4護衛隊群司令は現地メディアへの会見で、今回の事件を受け、「力を用いた現状変更の試みは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への深刻な挑戦である」と述べ、フィリピンとの連携を強調した。
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