神戸市立王子動物園は6月26日、昨年3月末に死亡したメスのジャイアントパンダ「タンタン」の剥製と骨格標本を中国へ返還したと発表した。
神戸市は、中国側との協議を経て、タンタンを剥製および骨格標本として返還することで合意。費用は約730万円に上った。タンタンは2000年に中国から神戸へやってきたが、当初2020年7月に予定されていた返還は、新型コロナウイルスの影響と体調不良により延期され、最終的に2023年3月、28歳で衰弱死した。
標本は同日、関西空港から空輸され、タンタンが生まれた四川省の「中国ジャイアントパンダ保護研究センター」に搬送された。今後、パンダの保全や調査研究に活用される予定だ。
日本全体でパンダ返還相次ぐ 頭数減少
近年日本から複数のパンダを中国へ相次いで返還しており、日本に滞在しているパンダの頭数は減少している。
2023年2月、和歌山県のアドベンチャーワールドで長年親しまれてきたオスの「永明・エイメイ」(30歳)と、その双子の娘「桜浜· オウヒン」「桃浜· トウヒン」(8歳)を中国へ返還した。今年6月末には母パンダの「良浜・ラウヒン」やその子供の「結浜・ユイヒン」、「彩浜・サイヒン」、「楓浜・フウヒン」の4頭が返還される予定だ。
2023年2月、東京・上野動物園で2017年に生まれたメスの「シャンシャン」やオスの「リーリー」、メスの「シンシン」も中国へ返還された。これら一連の返還により、日本国内で見られるパンダの数は大きく減少した。
日中議連が新規要請も 「パンダ外交」に隠された中共の意図
4月末に訪中した超党派の日中友好議員連盟は、中国共産党序列3位で全国人民代表大会トップの趙楽際と北京の人民大会堂で会談を行い、パンダの新規貸与を要請した。趙は前向きな返答をしている。
中国共産党政権の「パンダ外交」には、ジャイアントパンダという国際的に愛される動物を利用して、他国との友好関係を深め、中国共産党政権の国際的イメージを高める「ソフトパワー」戦略という面がある。
こうした外交手法について、パンダの貸与が単なる友好の象徴ではなく、中国共産党(中共)による政治的影響力の拡大手段であると警戒する見方が出ている。
自民党の和田政宗参院議員は、『月刊Hanada』で、パンダの貸与が中国の政治的影響力拡大の手段であると警戒する見方を示している。和田氏は、日中間の外交懸案が山積している中でのパンダ誘致は適切でないと指摘し、特に仙台市へのパンダ誘致に反対している。
そのうえで、中国がパンダを外交カードとして利用してきた歴史を挙げ、まずは日中間の懸案を解決することが先決であると述べている。
また、パンダは中国の動物園から10年以上の長期契約で他国に貸し出されるのが一般的であるが、その費用の高さも問題視されている。
パンダのレンタル料は年間1億円前後の費用がかかるうえ、飼育費用は数千万円、また死亡時の補償金は約5千万円かかる。
上野動物園では、パンダのレンタル料として年間約95万ドル(約1億円)を中国側に支払っているが、この費用は東京都が負担しており、税金で賄っている。
元東京都知事の石原慎太郎氏は「高い買い物だよ」とパンダ誘致に難色を示していた。
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