EUはロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入禁止開始時期を従来より1年前倒し、2027年1月から全面禁輸を実施することを発表。ウクライナ侵攻への資金供給阻止やエネルギー依存脱却を目指し、さらなる制裁強化と市場への影響に注目が集まっている。
EUは2027年1月1日からロシア産の液化天然ガス(LNG)輸入を全面的に禁止する計画を策定している。これは、従来の「2027年末までにロシア産化石燃料を段階的に停止する」との方針を1年前倒しするものである。今回の措置は、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を継続するための資金調達手段を断つことを狙った最新の取り組みである。
さらにEUは、より多くのロシアの銀行や金融機関に対し全面的な取引禁止を提案するとともに、中国やインドなどロシア産のエネルギーを購入する第三国に対しても貿易制限を科すことを検討している。
数日前、アメリカのトランプ大統領はEUに対し、ロシア産のエネルギー取引の圧力を一層強めるよう呼びかけていた。
フォン・デア・ライエン委員長は9月19日の記者会見で次のように述べた。「ロシアは外交と国際法を公然と無視している。プーチン大統領はたびたび緊張を高めており、ヨーロッパはそれに応じて圧力を強化している」
EUの外交を統括するカヤ・カラス上級代表は声明で、制裁対象となっている船舶に対して企業が再保険を提供することを禁止する提案を行ったと明らかにした。
カラス氏はまた、EUはロシアに対する制裁措置を一層強め、ウクライナへの軍事支援と並行して「ロシアが本格的な停戦を受け入れ、実効性ある和平案を提示するまで」圧力を継続すると述べた。
EU統計局のデータによれば、EUは毎月ロシアから約5~7億ユーロ相当の液化天然ガスを輸入している。
アメリカ・G7との連携による追加制裁
今回の発表を受け、ヨーロッパの天然ガス価格は下落した。市場関係者の間では、ロシア産海上輸送分の禁輸が前倒しで実施されるうえ、アメリカからの新規供給が見込まれる2026年末よりも前に発効するとの観測が広がっためである。
ブルームバーグの分析によると、世界の天然ガス市場は2026年後半に供給超過に転じる見通しであり、これによりロシア産ガスの段階的削減が市場に与える供給圧力や価格高騰リスクは軽減されるという。この市場動向は、EUがロシア産のエネルギー依存からの脱却時期を決定するうえでの重要な要素とされる。
フォン・デア・ライエン委員長はさらに、EUがロシアのガスプロム・ネフチ社(Gazprom Neft PJSC)およびロスネフチ社(Rosneft PJSC)によるヨーロッパ市場向けの石油輸出ルートを遮断する方針を示した。ロスネフチ社は国営企業であり、ロシアの石油生産の3分の1以上を占めている。
加えてEUは、制裁逃れのために用いられる「シャドーフリート」に対する制裁を拡大し、新たに100隻以上を追加対象とすることで、合計560隻超を制裁リストに加えることになる。
カラス氏はまた、今後EUは中国を含む第三国の製油所、石油トレーダー、石油化学会社も制裁対象とする方針であると語った。
新たな制裁パッケージは、EUが非常に細かい点にまで注意が行き届く戦略を採用している現れであり、その背景にはロシアによるウクライナ攻撃の激化や、ロシア無人機によるポーランド領空侵犯といった最近の事案がある。EUが制裁を導入するには全加盟国の合意が必要である。
これまでEUは、アメリカおよび主要7か国(G7)と歩調を合わせながら対ロシア制裁を進めてきた。G7各国は現在、新たな制裁案を取りまとめており、今月末にも最終合意に至る見込みである。
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