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日本企業の在中戦略、拡大から投資回収 管理重視へ

2025/12/18
更新: 2025/12/18

2019年以降、日本企業による中国事業の調整は、持ち分の売却、提携の終了、投資の縮小といった形が中心となっており、工場を集中して閉鎖したり、撤退を公に表明したりするケースは比較的少ない。日中合弁事業の運営に詳しい複数の関係者は、これは偶然ではなく、制度上のリスク、資本規制、事業コストを総合的に評価したうえで、日本企業が選択した比較的慎重な調整プロセスだと指摘する。

北京在住で、長年にわたり日中合弁案件の交渉に携わってきた企業コンサルタントの姜さんは、今週の取材に対し、多くの日本企業にとって中国からの全面撤退は、法的リスクや労使問題、企業の評判への影響といったコストが大きく、かつ見通しが立てにくいと述べた。撤退を公表すれば、従業員への補償や契約処理、地方政府との調整が必要となり、関連手続きが数年に及ぶことも少なくなく、結果の不確実性も高いという。

姜さんは、目立った形で撤退するよりも、持ち分の売却や契約更新の停止、新規投資の見送りといった方法で段階的に関与を減らす方が、リスクとペースを管理しやすいとし、「これは比較的コントロールしやすく、日本企業の意思決定の考え方にも合致した道筋だ」と語った。

静かな撤退がリスク管理の選択肢に

同氏はさらに、こうした「静かな撤退」の動きは、日本企業が中国の事業環境を再評価していることの表れだと指摘する。非公開の場での意見交換では、近年、中国事業の不確実性が明らかに高まっているとの声が、日系企業の幹部から上がっている。政策運用の裁量が狭まり、データ管理やコンプライアンス要件が厳格化する一方、外資企業を取り巻く世論環境も変化しているという。直接的な影響を受けていなくても、多くの企業が制度上のリスクを中長期の経営計画に織り込み始めている。

日本企業の内部意思決定に詳しい研究者の周さん(仮名)は、日本企業は海外投資において長期的な安定性と予見可能性を重視する傾向が強く、事業環境に対する認識が変化した場合、まず資本構成を調整し、直ちにすべての事業を停止することは少ないと説明する。「持ち分の売却は即時撤退を意味するものではないが、中核的な経営リスクを負わないという意思表示だ」と述べた。

また、業種ごとの違いも調整のスピードや方法に影響している。近年は、コンプライアンス対応や制度コストの増加も重要な判断材料となっており、日系企業の関係者は、直接的な経営関与や意思決定責任を抑えたいとの意向が強まっていると話す。持ち分を減らしたり、非支配株主の立場に移行したりすることで、管理負担やコンプライアンス上の圧力を一定程度軽減できるという。

在中日系企業の幹部は、日本本社の視点では、中国市場は拡大を前提とした成長市場から、資源配分の精度が求められる成熟市場へと位置付けが変わりつつあると指摘する。その中で、企業戦略の重点はリスク管理と投資回収の見極めに移り、「撤退の方法そのものが戦略の一部になっている」と述べた。

複数の関係者は、業界や地域による差も調整に影響すると指摘している。電子部品、自動車部品、精密製造などの分野では、中国のサプライチェーンとの結び付きが強く、全面撤退は現実的ではない。このため、持ち分の売却や提携解消が、過渡的な選択肢として採られている。

コスト構造変化 中国市場の魅力が低下

一方で、コスト構造の変化も中国市場の魅力を弱めている。賃金、土地、エネルギー価格の上昇により、一部の産業では中国のコスト面での優位性が薄れてきた。北京の大学教授である胡氏は、「中国で事業を行う外資企業は、土地や労働コストの上昇に加え、資金調達の難しさや銀行金利の高さにも直面している」と述べた。

胡氏によると、現在、ベトナム、タイ、インドネシア、インドなどに生産拠点を設ける日本企業も増えている。立ち上げ当初は効率面で課題があっても、政策の安定性やリスクの見通しが立てやすく、新たな生産能力の受け皿として適しているという。

経済観察網は12月12日付の記事で、近年、日本企業の中国事業は「低付加価値分野の縮小と、高技術分野への継続投資」という構造的な調整が進んでいると指摘した。分野や事業工程ごとの取捨選択は、中国市場における位置付けを見直す動きの表れだとしている。

日本企業 中国市場を見直し

現時点で、多くの日本企業は「中国撤退」という表現を公式には用いていない。関係者は、これは調整計画が存在しないことを意味するのではなく、より表立たない形で、段階的に対応を進めているためだと説明する。現在の環境下での日本企業の中国戦略の見直しは、単発の出来事でも感情的な反応でもなく、複数のリスク評価を踏まえた結果である。この転換は、今後数年にわたり、日中経済関係の実像を形作っていく。

一部のアナリストは、日本企業が全面撤退ではなく持ち分の売却を選ぶ動きは、在中経営戦略が拡大からリスク管理へと移行していることを示しているとみている。この動きが、より踏み込んだ構造調整へと発展するかどうかは、引き続き注視が必要だ。

邢度