米エネルギー省は7月22日、米国とサウジアラビアが30年間にわたる民生用原子力協力協定(「123協定」)に正式に署名したと発表した。同協定は数百億ドル規模と見積もられ、サウジアラビアが米国の技術を用いて原子炉を建設し、ウラン濃縮を行うことを認めるもので、サウジアラビアの原子力インフラ整備において米企業が中核的な役割を果たすようにし、中国やロシアなどの競合相手を排除することを狙いとしている。
クリス・ライト米エネルギー長官と、サウジアラビアのアブドルアジズ・ビン・サルマン・エネルギー相が、同条約および二国間の保障措置協定に共同で署名した。
新協定の重要な条項の一つは、米国とサウジアラビアの共同研究によって必要と判断された場合、米企業がサウジアラビア国内にウラン濃縮施設を建設すると定めている。さらに同協定は、サウジアラビアがウランを濃縮し、核廃棄物を再処理することも認めている。この二つはいずれも核兵器製造につながり得る経路である。これに対し、アラブ首長国連邦(UAE)は2009年に米国と同種の協定を結んだ際、この二つの権利を放棄することに明確に同意していた。
中東和解の前提条件を回避 議会審査のハードルは高く
この民生用原子力協定は、トランプ大統領の第1期政権からバイデン前政権にかけて、複数年にわたって推進されてきた。バイデン政権はかつて協定を進める用意があったものの、これを「サウジアラビアとイスラエルの国交正常化」と結びつけていた。しかし2023年のイスラエル・ハマス衝突の影響を受け、両国の国交正常化プロセスは遅延を余儀なくされた。
現トランプ政権は、イスラム諸国に対して「アブラハム合意(Abraham Accords)」への参加を促し続けているものの、サウジアラビアが米国の原子力技術を購入する際の前提条件として「イスラエルとの国交樹立」を求めてはいない。また、バイデン政権時代の構想とは異なり、現在の協定には、国連の国際原子力機関(IAEA)による抜き打ち査察を認める「追加議定書」は含まれていない。
協定はすでに米議会に正式に提出された。議会が90会期日以内に反対票を投じない限り、協定は自動的に発効する。議会が大統領の拒否権を覆すには3分の2の絶対多数の賛成が必要であり、そのハードルは極めて高い。
業界大手が恩恵 サウジアラビアは「エネルギー転換が目的」と説明
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米ウェスチングハウス・エレクトリックと同社のAP1000型原子炉が、この協定の最大の受益者の一つとなる。AP1000型原子炉1基は約1100メガワット(MW)の電力を生み出すことができ、中規模都市や大型の人工知能(AI)データセンターに電力を供給するのに十分だという。
サウジアラビア当局者はかねて、同協定は同国のエネルギー転換にとって極めて重要だと強調してきた。国内の未開発のウラン資源を利用して国内の電力需要を満たせば、より多くの石油を輸出に回すことができ、国家収入の増加につながるという。サウジアラビアは、自国の原子力計画は完全に平和目的であると主張している。ただし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、サウジアラビアは核兵器の製造を目指していないとしつつも、「イランが核爆弾を製造すれば、サウジアラビアもそれに続く」と繰り返し警告してきた。
ライト・エネルギー長官は、同協定が最高水準の原子力安全および核不拡散の要求を守るものだと強調した。ライト長官は「トランプ大統領のおかげで、米国の原子力ルネサンスが進行しており、それは米国とサウジアラビア両国民に長期的な利益をもたらすだろう」と述べた。
反対派は、サウジアラビアにウラン濃縮能力を持たせることが核兵器開発のハードルを大幅に引き下げ、ひいては中東地域全体で危険な核軍拡競争を引き起こすと懸念している。
一方、支持派は、サウジアラビアが以前から、米国と協力できない場合には中国やロシアといった、より基準の低い中東での競合相手に乗り換えると明言してきた点を指摘する。サウジアラビアと手を組むことは、米国の原子力サプライチェーンに数万人分の高賃金の雇用を生み出すだけでなく、サウジアラビアを長期にわたって米国の技術および安全保障の軌道につなぎとめ、中国共産党とロシアによる中東での戦略的拡張を断つことにもなるという。
トランプ政権は、同協定が「米国原子力法」に定められた世界で最も厳格な核不拡散条項を順守しており、米国とサウジアラビアの共同研究に関する条項によって、米国はサウジアラビアの原子力計画に対して長期的な影響力を持ち、軍事目的に転用されるのを防ぐことができると指摘している。
責任編集:林姸
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