中国で1日、国防動員法の改正法が施行された。2010年の制定以来初の全面改正で、有事に経済・社会の力を軍事力に転換する「平戦快速転換」を条文上初めて定義したほか、民間資源を確保する手段として、従来の「徴用」に加え、所有権の移転を伴いうる「徴収」を新たに規定した。
台湾では警戒感が強まっている。一方、台湾当局内には、今回の改正を台湾有事に直接結び付けるべきではなく、2015年に始まった中国軍の改革に伴う制度整備の一環とみる見方もある。
民間資源の「徴収」を新設
改正法は全国人民代表大会常務委員会で8月28日に可決され、同日公布された。条文数は72条から82条に増えた。
第1条の立法目的には「発展上の利益」の維持が加わり、第3条では国防動員業務について中国共産党の指導を堅持すると明記。習近平政権の「強軍思想」や「総体国家安全観」を反映した内容となった。
特に注目されるのが、第10章の名称変更だ。従来の「民用資源の徴用と補償」から「民用資源の徴収、徴用と補償」に改められた。
台湾の国家安全保障当局者によれば、「徴用」が一定期間の使用などを想定するのに対し、「徴収」は国家が財産の所有権そのものを取得することを可能にする仕組みだという。
対象分野には金融、交通運輸、郵便・電信、報道・出版、放送、情報ネットワークなどが含まれる。第73条では、国防動員の実施後、これらの分野に特別な措置を講じることができると規定している。
改正法では、データ安全や先端技術を活用した新興領域、サプライチェーンの安全性・強靱性に関する規定も新設された。
第2条では「国防動員」を初めて明確に定義。国家の主権、統一、領土保全、安全、発展上の利益が脅かされた場合に、平時から戦時への迅速な転換を実現し、経済・社会の力を国防力に転化する活動と位置付けた。
台湾で警戒論も
台湾では、与党・民主進歩党(民進党)などが、中国当局が「平戦転換」を法律に明記したことに警戒感を示し、台湾側の防衛レジリエンス強化を訴えている。
一方、台湾当局内にはより慎重な分析もある。国家安全保障当局者は、今回の改正の本質は中国国内の資源統合と統治体制の拡張にあり、台湾有事だけを想定した法律ではないとの見方を示した。
ただ、法規が曖昧かつ広範に運用されれば、台湾企業を含む中国進出企業が政治・経済面で負うリスクは高まり得るという。
中国では近年、国防法や兵役法、海警法、予備役人員法など関連法制の整備が相次いでいる。今回の改正も、こうした制度との整合を図る狙いがあったとみられる。
台湾海峡や南シナ海をめぐる緊張が続く中、今回の法改正が実際にどう運用されるのか。日本を含む周辺国は、中国国内の企業活動やサプライチェーンへの影響を含め、動向を注視する必要がある。
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