習近平風刺の台湾芸人への襲撃事件 実行役の男5人を起訴=台湾当局

2026/10/22
更新: 2026/10/22

台湾の検察当局は21日、習近平を風刺した台湾の著名コメディアン、黃逸豪(ホアン・イーハオ)氏を襲撃したとして、台湾人の男5人を起訴した。中国にいる人物が、黄氏の舞台出演を妨害する目的で襲撃を指示した疑いがある。

台湾当局は、中国共産党(中共)による越境弾圧の疑いがあるとして強く非難し、台湾の安全と表現の自由を脅かす行為だと警告した。

現地検察署の発表によると、事件は先月11日、新北市にある黄氏の自宅付近で起きた。中国籍の「K」と呼ばれる人物が、黄氏に重傷を負わせて舞台に立てなくするよう計画し、実行役らに報酬を約束したとされる。

黄氏は昨年12月、習近平が国家主席の任期制限を撤廃し、長期政権を可能にした憲法改正や、学歴を巡る問題などを風刺する動画をSNSに投稿した。動画は広く拡散し、黄氏はその後も習近平を題材にした演目を披露していた。

起訴状によると、「K」は鄭博軒被告に対し、黄氏の個人情報を集め、重傷を負わせるよう依頼。報酬として45万台湾元(約1万3890米ドル)を提示したという。鄭被告は昨年ではなく今年7〜8月、黄氏のバイクにGPS追跡装置を取り付け、行動を監視。自宅住所やナンバープレート、日常の行動パターンなどを調べ、「K」に情報を渡した見返りに25万台湾元(約122万円)を受け取ったとされる。

鄭被告はその後、游幃捷被告と共謀し、黄氏の腕や脚を折ることを狙って襲撃を計画した疑いがある。游被告は黄家慶被告を誘い、さらに范崇豪、廖本城両被告が加わったという。

検察によると、9月11日、范、廖両被告らは黄氏の自宅付近で待ち伏せした。黄氏が戻ると、范被告が運転役の黄家慶被告に合図し、車で黄氏に衝突させた。廖被告は助手席から襲撃の様子を撮影し、依頼を実行した証拠として「K」に送るとともに、報酬を受け取るために利用しようとしたとされる。

黄氏が痛みで叫ぶと、運転役は車を止めた。黄氏は右側の骨盤に打撲を負ったが、重傷には至らなかった。検察によると、襲撃後、容疑者3人は保険請求を手伝うと偽って黄氏の診療記録を入手し、その画像を「K」に送った。しかし、「K」はけがの程度が不十分だとして、約束した報酬のうち残る20万台湾元の支払いを拒んだという。

検察は5人を重傷害未遂などの罪と個人資料保護法違反の罪で起訴。鄭被告には、他人の私的な活動を違法に撮影した罪も適用した。検察は起訴状で、被告らの行為は「国家の民主主義を守る防衛線を裏切り、人権を侵害した」と批判し、懲役2年7カ月から5年6カ月の刑を科すよう裁判所に求めた。

黄氏は起訴を受け、フェイスブックで「台湾の舞台で習近平を批判したのは、わずか2分半だった。それだけで、排泄物を投げ込まれ、さらには故意に車でひかれるという目に遭った」と投稿した。

さらに「中共はまだ台湾を統治していないのに、批判しただけで人々がこのような扱いを受けている。もし将来、中共が本当に台湾を統治することになれば、今ある言論の自由を守れると、どうして期待できるだろうか」と訴えた。

黄氏をめぐっては、5月にも襲撃事件が起きている。習近平を題材にした演目を披露する予定だった台北市内のコメディークラブにペンキや排泄物が投げつけられ、台北の検察当局は中共側の指示を受けて犯行に及んだ疑いがあるとして、男2人を起訴した。今回の事件は、台湾で中共の指導部を批判する言論活動への圧力が相次いでいることを改めて浮き彫りにした。

台湾当局 越境弾圧を強く非難

台湾の大陸委員会は今回の事件を受け、中共が台湾の人々に対して暴力を伴う越境弾圧を行っているとして、強く非難する声明を発表した。

同委員会は、中共が自国内の異論を抑え込むだけでなく、その影響力を台湾にまで及ぼして言論の自由を脅かしていると指摘。台湾の民主主義と法秩序に対する重大な脅威だと強調した。

声明では、中共やその関係者の指示、依頼、働きかけを受けて越境弾圧に加担したり、これを支援したりした者について、「法律に基づいて責任を問われ、徹底的に追及される。決して容赦しない」と警告した。

台湾の与党・民主進歩党(民進党)の中国事務部門もフェイスブックで声明を発表し、中共の行為を非難。北京当局に対し、台湾の人々を脅かす越境弾圧や悪意ある行為を直ちにやめるよう求めた。台湾の人々の安全と表現の自由は、外国勢力によって侵害されてはならないと訴えた。

高慧