中国への賠償請求 米政府は中国保有の米国資産2兆ドルから着手すべきだ

2026/10/31
更新: 2026/10/31

中国政府は、知的財産の窃取、パンデミック、軍事支出について、米国に損害を賠償する義務がある。

論評

トランプ米大統領は、中国は新型コロナウイルスのパンデミックについて少なくとも10兆ドルを支払う義務があり、各国は被った損害への賠償の内金として、中国に対する債務を全て帳消しにすべきだと主張している。

長年にわたる知的財産の窃取と、米国や日本、台湾、フィリピンなどアジアの米国のパートナーに対する軍事的な侵略行為についても、さらに数兆ドルを請求すべきだ。

中国軍は米軍の航空要員に軍用レーザーを照射し、米海軍の艦艇を追尾してきた。ある事例では、中国の戦闘機が米軍のEP-3偵察機を中国領内に着陸させた。同機は分解され、米国の技術の一部が中国に渡った。

中国が米国の敵対国であるロシア、北朝鮮、イランに情報、武器、軍民両用装備を販売していることも、米国に損害をもたらしている。中国のイラン支援では、米軍人の命も失われた。ロシアの場合、中国の技術を使用した無人機で、米国がウクライナに供与した軍事装備が攻撃された。中国製のミサイル関連機器は、日本、韓国、グアムの米軍に対する北朝鮮の威嚇を可能にしてきた。

中国政権によるさらなる侵略や侵略支援の脅威により、米国は国防支出の増額を迫られており、中国政府はその費用を返済すべきだ。

中国には資金がある。9月の外貨準備高だけでも3兆4千億ドルに上る。世界との貿易黒字は昨年、過去最高の1兆2千億ドルに達した。そして、その資金の多くには米政府の手が届く。

元米財務省当局者のブラッド・セッツァー氏は、中国の外貨準備の最大55%、1兆8700億ドルが米国の金融資産で保有されていると推計する。同氏によると、中国の国有商業銀行は、これとは別に4千億ドルの外国証券を保有しており、その多くは米国資産とみられる。

合計すると、中国は約2兆ドルの米国資産を保有している。米国と同盟国はこれらを比較的容易に凍結でき、適切な法律があれば没収も可能だ。中国共産党(中共)はさらに、ユーロ、英ポンド、日本円建ての資産も管理している。その多くは米国の同盟国が凍結し、中共から同様に被った損害への賠償に、少なくとも一部を充てることができる。

中国の外貨準備高は2014年のピークから減少した。その一因は、対ドルでの人民元相場を支えるために人民元を買い入れたことにある。その後の回復は部分的なものにとどまり、現在、中国が保有する米国資産の多くは、米国外の法域に隠されている可能性が高い。中国政権の米国資産を把握し、凍結することを難しくするためだ。

2022年初め、中国は米国の資産保管機関を通じ、少なくとも1兆ドルの米国債を保有していた。その後、ロシアがウクライナに侵攻し、米欧にあるロシアの資産が凍結された。中国政府はこれに注目し、特に中国軍が台湾に侵攻した場合、米政府が中国の資産も凍結するのではないかと懸念したとみられる。

中国政府は、米国の保管機関に預けていた米国債を売却してきたとされ、その保有額は2026年までに5910億ドルに減少した。一方で、売却しやすい金や短期米国債を購入している。

セッツァー氏によると、中国政府はベルギーに本拠を置く国際証券決済機関ユーロクリアからも資産を移している。中国の国家機関がユーロクリアの株式を保有し、同社が中国資産の凍結を求められた場合には、中国政府が情報や事前の警告を得たり、影響力を行使したりできるとも考えられるにもかかわらずだ。

セッツァー氏は、中国政府が長期米国債の少なくとも一部を、英国、フランス、ルクセンブルク、ベルギーなどの米国外の保管機関へ移している可能性があると指摘する。また、中国政府が他の種類の米国債務証券も購入し、カナダや欧州で保有している兆候があるという。これには、政府支援機関が発行する住宅ローン担保証券などの「エージェンシー証券」が含まれる。

セッツァー氏は「中国の保有分と、カナダや欧州の資産保管拠点の保有分を合計すると、中国の実際のエージェンシー証券保有額は、上限の推計で5千億ドルに達する可能性がある」と記している。

これは、米国内の保管機関に預けた米国債5910億ドルと、保有額が不明な米国外の保管機関に預けた米国債に加わるものだ。セッツァー氏は、中国が現在、「複数の米国外の保管機関を利用し、実際の保有額を隠している」可能性が高いと指摘する。また、多額の米エージェンシー証券を保有していることは、中国政府の米国金融資産が外貨準備の運用資産全体の50~55%を占めることを示していると論じる。

中国政府は長年、国外資産の保有状況を不透明にしてきた。これは、戦争や経済制裁の強化に際し、中国の資産を凍結することを難しくする。輸出が輸入を上回ることで得たドルについて、米国資産を隠しつつ運用収益を最大化しようとするなら、中共には他の選択肢がほとんどない。

米国の債務証券は、中国の中央銀行にとって、換金性と利回りのバランスが良い。米国債は国外に移しやすく、必要になればすぐ売却できる。米国企業や不動産を保有する場合は流動性が低く、そのため、戦時や制裁強化の際にはリスクが高くなる。

米国は、中国が保有する債務だけを選んで返済を拒否できるだろうか。

選択的な債務不履行には憲法改正が必要となる可能性があり、脱ドル化を促し、米国の金利を上昇させる恐れもある。

より良い方法は、中共が管理する資産を凍結し、その後没収して賠償に充てる米国の法律を制定することだ。これを可能にする法律が必要であり、議会は対中貿易の拡大を求める企業ロビイストの働きかけを乗り越えられるなら、検討すべきである。

資産の凍結・没収を認める法律であれば、脱ドル化や金利上昇への影響は、より小さく抑えられると考えられる。そして、中共の悪意ある活動に対して代償を請求する利益は、その費用を上回る。米国の納税者には、中共による窃取、パンデミック、軍事的威嚇、ロシア、イラン、北朝鮮などの敵対国への物的支援によって失われた数兆ドルが返還されるべきだ。

中国政権が米国から盗みを働き、その他の損害を与えながら、代償を支払わずに済むことを許してはならない。中共が何の報いも受けずに済めば、中共も他の悪意ある主体も、再び同じことをするだろう。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。