米陸軍は2026年、世界各地で部隊の再編・再配置を進め、インド太平洋地域を戦略上の重点地域に位置づけている。新たな多領域作戦部隊の創設や長距離精密攻撃能力の強化、日本やフィリピンなど同盟国との軍事協力の拡大を通じて、機動力に優れ、部隊の分散運用や長期戦にも対応できる体制を整えつつある。
部隊の配置や装備、作戦構想を見ると、中共軍への対抗が一連の見直しの重要な狙いの一つであることがうかがえる。
米軍事専門サイト「ディフェンス・ニュース」は10月19日、新たな司令部の設置や部隊再編によって、西半球とインド太平洋地域の戦略的重要性が一段と高まっていると報じた。
一方、米国とイランの軍事衝突やロシア・ウクライナ戦争の影響で、中東や欧州に駐留する米軍の再配置には制約も生じている。
米軍、インド太平洋への戦力投入を優先
米国は、世界各地での軍事的な役割を維持しながら、限られた戦力や装備の配分を見直している。その中で、インド太平洋地域を優先地域の一つに位置づけている。
背景には、近年の中共軍の軍事力増強がある。米国は長年、中共を主要な戦略的競争相手とみなし、特に長距離ミサイル、海空戦力、電子戦、サイバー戦、接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力の向上を警戒してきた。
米軍は、中共軍の軍事力増強によって西太平洋での優位性が脅かされ、台湾海峡や周辺地域への軍事介入のリスクや負担が増すとみている。このため、部隊編成や前方配備の見直しを進めている。
第1列島線を重視 日本・フィリピンとの連携強化
日本列島から琉球諸島、台湾、フィリピン諸島へと連なる第1列島線は、中共軍の西太平洋進出を抑える上で地理的に重要な位置を占める。また、米軍が東アジアで部隊を展開し、有事に支援を行う際の拠点にもなる。
米軍は近年、日本やフィリピンとの軍事協力を拡大し、共同演習の増加や基地・補給施設の整備、長距離攻撃システムの前方配備を進めてきた。第1列島線とその周辺で、有事への即応力を高める狙いがある。
なかでも、フィリピンの戦略的重要性が高まっている。同国北部は台湾南端とバシー海峡を挟んで向かい合い、ルソン海峡や南シナ海の主要航路にも近い。
その代表例が、フィリピンに配備された中距離ミサイルシステム「タイフォン」だ。
タイフォンは、米陸軍がインド太平洋地域で地上発射型の長距離精密攻撃能力を高めるための主要装備となっている。複数種類のミサイルを運用でき、地上目標への攻撃や対艦攻撃に対応する。
2026年5月5日、米軍は米比合同軍事演習「バリカタン」の期間中、フィリピンで初めてタイフォンから巡航ミサイル「トマホーク」を実射した。
ミサイルはフィリピン中部レイテ島のタクロバン空港から発射され、約600〜630キロ離れたヌエバ・エシハ州ラウルの指定目標に命中した。
この演習では、地上発射型の長距離火力と地上部隊の連携も検証した。
射程約1600キロのトマホークをフィリピン北部に配備すれば、理論上は中国本土の南東部沿岸の一部や、南シナ海、台湾周辺の広い範囲が射程に入る。
これにより、台湾海峡や西太平洋で軍事衝突が発生した場合、米軍は空母や戦闘機、潜水艦に加え、移動式の地上発射型ミサイルによる長距離攻撃も選択できるようになる。
台湾有事を想定 米軍が即応態勢を強化
米軍の配備拡大により、中共を取り巻く軍事環境は複雑さを増している。
米軍が第1列島線にミサイル部隊や偵察拠点、補給網を分散して配置できれば、軍事衝突が起きても作戦を継続しやすくなる。
一方、前方配備には弱点もある。軍事施設が想定される戦場に近づくほど、敵の長距離ミサイルやドローン、電子戦による攻撃を受ける危険性が高まるためだ。
このため、米軍は部隊の迅速な移動と分散配置、補給体制の整備を重視している。少数の固定基地に戦力を集中させず、攻撃を受けても作戦を継続できる態勢を目指す。
中共軍は、台湾に対する海上・航空封鎖、上陸作戦、長距離攻撃、統合作戦の能力を高めている。
これに対応し、米軍も日本やフィリピン、西太平洋各地で部隊の配備や訓練を進め、台湾有事への対応力と抑止力の向上を図っている。
米陸軍、長距離攻撃と多領域作戦を強化
米陸軍は部隊の配置だけでなく、戦い方そのものも見直している。
2026年には、インド太平洋地域で多領域作戦を担う部隊の強化をさらに進め、従来の地上部隊に長距離精密攻撃、情報収集・監視、電子戦、サイバー戦、無人システムなどの能力を組み合わせる取り組みを加速させている。
部隊の役割は地上戦にとどまらず、海軍や空軍と連携し、広い戦域での作戦を支えることも求められている。
一方、米軍は欧州でのロシア・ウクライナ戦争や中東情勢への対応も迫られており、インド太平洋地域への戦力集中には限界がある。
米国が各地の安全保障上の責任を維持しながら、どこまでインド太平洋への戦力配分を増やせるかが、今後の課題となる。
米軍の2026年配備見直し 中共軍への対抗が鮮明に
米軍による2026年の配備見直しは、中共軍への抑止力を高めるとともに、台湾海峡や西太平洋での軍事衝突に備える狙いがある。
今後は、こうした戦力の再配置がどこまで抑止力として機能し、中共軍による周辺地域への軍事的脅威を抑えられるかが焦点となる。

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