EUが米「パックスシリカ」構想に参加 対中依存の低減を目指す

2026/06/24
更新: 2026/06/24

EU、オランダ、ドイツ、ギリシャが、米国主導の「パックスシリカ(Pax Silica)」構想に新たに参加した。同構想は、中国共産党(中共)との競争激化に対応すべく、AI関連の技術サプライチェーンを強化することを目的とする。

2025年12月の第1回「パックスシリカ」サミットでは「パックスシリカ宣言」に署名した7つの創設メンバーは、米国、日本、韓国、シンガポール、英国、イスラエル、オーストラリアだった。

パックス・シリカ宣言は、2025年12月に米国務省が主導して署名された国際的な共同宣言である。半導体・AI・重要鉱物などの技術サプライチェーンを同盟国間で安全に確保し、中国への「強制的な依存」を低減することを目的としており、エネルギー、先端製造、半導体、AIインフラ、物流など全領域にわたる信頼できるパートナー間の協力を掲げている。

25日から、米国務省はワシントンで2日間の「パックスシリカ」サミットを開催する。米国務省経済担当次官のジェイコブ・ヘルバーグ氏が主催するこの会議は、信頼できる技術パートナーシップの構築を通じて、グローバルな人工知能(AI)サプライチェーンの安全を強化し、中国への戦略的依存を低減することを目的としている。

ヘルバーグ氏によると、アルゼンチン、チリ、コスタリカ、カザフスタン、パナマも今週加入し、メンバー国の総数は24か国に達する。また、半導体分野で主導的地位にある台湾は、非署名国かつ来賓の立場で招待されている。

ヘルバーグ氏は、「パックスシリカ」を創設した理由として、G7やG20など既存の枠組みでは、AI主導の経済変革に対応しきれなくなっていると指摘した。

同氏はフィナンシャル・タイムズの取材に対し「現在、AI経済を管理するために特化して設計された組織は存在しない。AIはグローバル経済の形態を根本的に変えつつある」と強調した。

「イノベーション主権」を提唱 米国型の協力モデルを構築

ヘルバーグ氏は「イノベーション主権(innovation sovereignty)」という概念を提唱し、国連が推進する「デジタル主権」との違いを明確にした。

同氏は、デジタル主権を過度に重視すれば各国が重複投資に陥り、「最終的には同調的な凡庸さ(synchronized mediocrity)に陥ることになる」との見解を示した。

ヘルバーグ氏によれば、20か国以上が今週、信頼できるパートナーによるAIエコシステム構築の必要性を概説する共同声明に署名する。

米国が「パックスシリカ」を自国の利益推進に利用していると見なす国々をどう説得するのかとの質問に対し、ヘルバーグ氏は、イスラエル、シンガポール、UAE(アラブ首長国連邦)などの国々が米国の技術を活用して優れた自国のテクノロジー企業を築き上げた事例を挙げた。

「これらの国々は自国の規模をはるかに超える成果を上げており、人々にとって非常に説得力のある反証となるはずだ」とヘルバーグ氏は述べた。

ヘルバーグ氏は、中共当局が一部の国々に「パックスシリカ」への不参加を求める圧力をかけているかどうかについては明言を避けたが、同構想は中国の「一帯一路」構想とは鮮明な対比をなすと指摘した。中共側の構想は国有企業が推進し、透明性に欠け、資本配分の効率が低く、略奪的な債務の罠を助長していると述べた。

これに対し、「パックスシリカ」は民間部門との緊密な連携を重視している。

ヘルバーグ氏はアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏の言葉を引用し、「世界の数十億のユーザーを魅了し喜ばせること、これこそが国家としての秘密兵器であり超能力だ。だからこそ我々が行うほぼすべてのことは、実際には民間企業と歩調を合わせた協力を含んでいる」と語った。

資源安全保障と人材育成の具体化

AIの基盤となる資源供給を確保するため、米国とカザフスタンは同国内に「経済安全保障区域」の設立を発表し、重要鉱物の安全保障に関する協力機会を拡大するとともに、投資家に法的な確実性と予見可能性を提供する。

「我々の狙いは、中央アジアとの新たなパートナーシップの構築を実質的に支援することだ。歴史的に見て、米国は中央アジアにおいて完全に不在だった」とヘルバーグ氏は述べた。

さらに、米国務省はスタンフォード大学と覚書を締結し、ヘルバーグ氏が米国の教育体系における「重大な欠陥」と呼ぶ領域を補うべく、製造業に特化した新たなカリキュラムを開発する。

台湾とオランダの重要な役割

グローバルなAIサプライチェーンの構図において、台湾とオランダはいずれも重要な役割を担っている。ヘルバーグ氏はSNSプラットフォームXへの投稿で、「我々は今まさに、誰に半導体の製造を、AIの駆動を、そして未来を規定する技術の保護を委ねるのかを決めようとしている」と指摘した。

同氏はまた、オランダが先端・新興技術分野で世界的にリードしていることに触れ「オランダなくして最先端AIはなく、安全なサプライチェーンなくして経済安全保障はない」と述べた。

オランダと米国の間では、ASML社のリソグラフィ装置について、中国の顧客に対する低位機種の販売・保守を認めるか否かでなお意見の相違が残るものの、貿易・経済安全保障推進の大きな方向性では一致している。

台湾については、「パックスシリカ宣言」への正式署名には至っていないが、同構想への支持を明確に表明している。

ヘルバーグ氏は以前、第1回サミットにおける台湾の貴重な貢献を高く評価しており、台湾が今後も関連の議論に継続的に参加するとの見通しを示した。米側は台湾とサプライチェーン安全保障面での協力についても協議を進めている。

台湾の駐米代表処は、台湾側の出席者の構成について適切な時期に説明するとした。

2026年2月前後には、オランダ、UAE、ギリシャ、カタール、インド、スウェーデン、フィンランドが相次いで同構想に参加。直近ではフィリピン、ノルウェー、EU、ドイツが加入し、今週新たにアルゼンチン、チリ、コスタリカ、カザフスタン、パナマが加入する。このほか、カナダ、台湾、OECDなどはオブザーバーまたは対話の形式で参加している。EUが米「パックスシリカ」構想に参加 対中依存の低減を目指す。

陳霆