高市総理 G7で経済安保を主導 エネルギーと重要鉱物の「共同備蓄」で特定国依存から脱却へ

2026/06/18
更新: 2026/06/18

ニクソン・ショックと石油危機から半世紀。かつて世界経済の混乱を収めるために誕生したG7サミットは、再び激動の時代を迎えている。ロシアのウクライナ侵略に加え、中東情勢の緊迫化によるエネルギー供給不安が世界を揺るがす今、就任からわずか8か月の高市総理がフランス・エビアンでのサミットに臨んだ。アジアで唯一のG7メンバーとして、日本はどのように主導権を握り、トランプ米大統領や欧州の首脳たちと渡り合ったのか。G7後の記者会見で明かされた、経済安全保障の未来を占う「高市外交」の全貌に迫る。

6月17日(現地時間)、高市総理は、フランス(アルシャン)において、英国・イタリア訪問及びG7エビアン・サミット出席等についての内外記者会見を行った(内閣広報官Xアカウント)

緊迫する中東情勢と「3つの提案」

高市総理は、米国とイランによる和平への努力を評価しつつも、中東情勢が世界経済に与えるエネルギー供給不安に強い危機感を表明した。サミットに先立ち、独自に「AZEC+(プラス)」オンライン会合を主催してアジア諸国の声を吸い上げた高市総理は、G7首脳に対して以下の3項目を提案し、合意を勝ち取った。

(1)不当な輸出制限への反対とシーレーンの安全確保:ホルムズ海峡をはじめとする全てのシーレーンにおける自由で安全な航行の確保。

(2)「パワー・アジア」イニシアティブの展開:IEA(国際エネルギー機関)の「90日備蓄」に基づき、ショックに強い供給網をアジア地域などで構築・支援する。

(3)産油国と消費国の対話強化:威圧的な行為を無力化するための国際連携を主導する。

記者から問われた英仏独伊4か国共同声明に伴う自衛隊の派遣(機雷掃海活動など)については、「現時点で何ら決まったものはない」と述べるにとどめ、憲法の範囲内で今後の情勢を慎重に見極める姿勢を示した。

 

重要鉱物の「共同備蓄連携構想」と特定国依存からの脱却

経済安全保障の核となる「重要鉱物(レアアース等)」のサプライチェーン強靱化においても、日本の存在感が際立った。日本はG7で唯一、民生用途での重要鉱物の備蓄制度を持つ国である。

高市総理はこのノウハウを背景に、G7による「共同備蓄連携構想」を提案し、成果文書への盛り込みに成功した。この連携の運用には「調達先の切り替え(代替調達先の拡大)」を条件とし、特定国への過度な依存を減らすための共通の「依存度低減目標」を掲げることでG7が一致した。これは、経済的威圧を強める中国を念頭に置いた実効的な枠組みといえる。

令和8年6月15日(現地時間)、高市総理は、G7エビアン・サミット出席のためフランスのエビアンを訪問した(出典:首相官邸ウェブサイト)

 

欧州「準同盟国」との連携と日米同盟の基軸

サミット前後に展開された二国間外交でも大きな進展があった。

イギリス・イタリアとの関係深化

高市総理は、訪英・訪伊を通じて「自律性」と「強靱性」の向上を図った。

イギリス:スターマー首相と「経済安全保障協力に関する日英共同宣言」および先端技術分野での「日英フロンティア・テクノロジー・パートナーシップ」を発出。次期戦闘機(GCAP)の開発推進も含め、イギリスを「準同盟国」と位置づけた。高市総理は、かつてサッチャー首相が使った執務室を控室として使用したことに触れ、「強い意志で変革を成し遂げる」と決意を語った。

高市総理とスターマー英首相(出典:首相官邸ウェブサイト)

イタリア:メローニ首相と「宇宙分野での協力に関する共同声明」を発出したほか、日本企業が参画する「メッシーナ海峡大橋建設事業」への期待を共有した。

高市総理とメローニ伊首相(出典:首相官邸ウェブサイト)

トランプ米大統領との懇談

トランプ大統領の同盟国に対するアプローチに不確実性が指摘される中、高市総理は「日米同盟が外交・安全保障の基軸であることは変わらない」と強調した。トランプ氏との懇談では中国やインド太平洋情勢について意見交換を行ったが、台湾問題などの詳細については明言を避けた。米国のインド太平洋への関心低下を否定しつつ、オーストラリア、インド、韓国、さらには欧州の同志国とのネットワークを多層的に構築することで、地域の平和と安定を確保する方針を示した。

エビアンサミット集合写真撮影時の様子(出典:首相官邸ウェブサイト)

南米との経済連携と「自由で開かれたインド太平洋」の前進

さらにサミットの場では、ブラジルのルーラ大統領との間で「日・メルコスール経済連携協定」の交渉開始を確認する首脳共同声明を発出するなど、グローバルサウスとの関係強化にも布石を打った。

高市総理はブラジル連邦共和国のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領と首脳会談を行った(出典:首相官邸ウェブサイト)

高市総理は「自由、民主主義、基本的人権、法の支配」という基本的価値を共有する同志国と、政府・民間の両レベルで具体的な協力を深めたとし、今回の海外出張が「進化した『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』をさらに前進させるものになった」と総括した。就任後初の大型外交舞台で、日本主導の経済安保構想を国際標準へと押し上げる格好となった。

大紀元日本の速報記者。東京を拠点に活動。主に社会面を担当。その他、政治・経済等幅広く執筆。