9月7日、欧州非鉄金属業協会はベルギー・ブリュッセルのEU本部前で抗議活動を行い、中国製部品の安値流入に対する対策強化を求めた。参加者は象徴として棺を並べ、ヨーロッパの製造業や雇用が危機にさらされていると訴えた。
協会は、中国企業によるヨーロッパ産業の「経済的植民地化」が進めば、今年末までにEU製造業で30万人の雇用が失われると予測している。
欧州非鉄金属業協会 棺を並べて抗議 「公正な競争」を要求
ヨーロッパの鉄鋼流通や加工、製造業を代表する欧州非鉄金属業協会は9月7日、ブリュッセルのEU本部前でデモを行った。
参加者は10個の棺をEU本部前に並べた。棺には「EUの競争力よ、安らかに眠れ」「ヨーロッパ製造業よ、安らかに眠れ」「製造業の雇用よ、安らかに眠れ」「EUの鉄鋼需要よ、安らかに眠れ」「ヨーロッパの工場よ、安らかに眠れ」などと書かれていた。
ヨーロッパの生産力や競争力、雇用が危機に直面している状況を象徴したものだ。
非鉄金属業協会によると、ヨーロッパのメーカーは厳しい環境規制への対応や炭素排出に伴うコストを負担している。一方、域外で生産した完成品の中には、同等のコストを負担せずにヨーロッパ市場へ入るものがあるという。
EUでは現在、輸入鉄鋼に炭素排出規制や貿易措置を適用しているが、その鉄鋼を使って海外で生産したすべての完成品に同様の規制が適用されているわけではない。
非鉄金属業協会のアレクサンダー・ユリウス会長は声明で「われわれが求めているのは補助金でも特別扱いでもない。公正な競争である。ヨーロッパメーカーは世界でも最も厳しい環境・気候基準を満たすため投資を続けている。一方、多くの輸入完成品は同等の義務を負わずにヨーロッパ市場へ入っている。これによって競争条件がゆがみ、ヨーロッパの工場や投資、雇用が危険にさらされている」と述べた。
今回の抗議は、中欧貿易投資協議が期限を迎えようとする中で行われた。双方は今年10月までに、貿易不均衡を巡る協議を終える予定だ。
現在、中国の対EU貿易黒字は過去最高となる1日当たり10億ユーロに達している。
中国製部品がヨーロッパ企業と同等の炭素コストを負担せず、低価格で流入していることに加え、人民元相場が実態より低く抑えられているとの指摘もあり、ヨーロッパ企業の競争力を圧迫しているとの懸念が強まっている。
ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)も、10万人規模の人員削減計画を明らかにしている。
中国企業 部品輸出で規制回避 欧州製造業に圧力
EUにとって難しいのは、ヨーロッパ産業を守りながら、部品を調達する域内メーカーのコスト上昇を抑えることだ。
EUは2024年、中国製EVに最大35.3%の追加関税を導入した。従来の10%の輸入関税を合わせると、税率は最大45.3%となる。
さらに今年7月1日からは、輸入枠を超えた鉄鋼に対する関税25%を50%に引き上げ、無関税枠は47%削減した。
しかし台湾南華大学国際事務・経営学科の孫国祥教授は大紀元に対し、中国企業はこうした規制を別の形で回避できると指摘した。
「中国企業は余剰の生産能力を機械部品や自動車部品、電池材料、インフラ設備などに振り向けることで、特定品目への規制を回避し、低価格品をヨーロッパ市場に流入させ続けることができる」
これまでヨーロッパが中国に対して実施してきた反ダンピング措置や反補助金措置は、鉄鋼やアルミニウム、太陽光パネルなど特定の製品を対象とするものが中心だった。
ユリウス会長は、EUがどれほど強硬な方針を打ち出しても、中国製品に価格面での優位性がある限り、ヨーロッパ企業は調達を続けると懸念している。
アメリカの経済学者、黄大衛氏は大紀元に対し、中国製部品が低コストと垂直統合されたサプライチェーンを強みに、ヨーロッパ市場へ急速に浸透していると分析した。
黄氏によると、自動車や機械などヨーロッパの川下メーカーは、利益率を維持するため、安価な中国製部品を大量に調達せざるを得ない状況にある。
その結果、「ヨーロッパ域内の素材・部品産業を圧迫し、既存のサプライチェーンが徐々に中国製品に取って代わられている」とし、産業が空洞化する恐れがあると指摘した。
欧州産業界「経済的植民地化」と批判 中国側は反発
非鉄金属業協会は、中国の部品メーカーによる産業の「経済的植民地化」を止めなければ、EU製造業の失業者が「急増する」と警告している。
欧州委員会が6月にまとめた分析では、高いエネルギー価格や世界的な競争激化の影響により、100万人を超える雇用が失われると予測した。この中には、ドイツのフォルクスワーゲンが先週確認した10万人規模の人員削減も含まれるという。
一方、中国共産党(中共)はこの主張を否定している。
中共外務省の毛寧報道官は、ヨーロッパ側の動向を「注視している」としたうえで、自国の「正当な権益」を守るため「必要な措置」を取ると表明した。
「EU Today」は、EUのマロシュ・シェフチョビッチ通商担当委員の発言として、中国側が10月までに貿易不均衡の是正に向けた具体策を示さなければ、EUがさらに厳しい措置に踏み切る可能性を伝えた。
孫国祥氏は、今回の抗議について「ヨーロッパ社会の意識が、中国への経済依存から、自国産業が中国に押されることへの危機感へ変わっている」と指摘した。
黄氏によると、中共は最新の5か年計画で、「高付加価値の重要製品のサプライチェーンと中核技術を全面的に掌握する」方針を明確にしている。
低付加価値製品の輸出にとどまらず、「原材料の供給者から、バリューチェーン全体で主導権を握る立場へ移行する」ことが現在の中核戦略であり、ヨーロッパ産業界がこれを「経済的植民地化」と呼ぶ背景にあるという。
孫国祥氏は「中国がヨーロッパに持ち込んでいるのは、単なる商品だけではない。国家資本による補助金や低金利融資、地方政府間の競争によって支えられた産業モデルそのものだ」と述べた。
ヨーロッパ 対中規制をさらに拡大か
ユリウス会長は声明で「ヨーロッパが製造業、イノベーション、高技能人材の雇用を守りたいのであれば、製造業のバリューチェーン全体に同じ原則を適用しなければならない。製造業をヨーロッパに残すことは、ヨーロッパの繁栄、強靱性、戦略的自立を守ることにつながる」と訴えた。
9月7日のデモの最後には、非鉄金属業協会のトラック隊が一斉にクラクションを鳴らし、製造業の将来に注意を向けるよう訴えた。その後、代表者が欧州委員会側に共同要望を提出した。
黄氏は、EUが今後取り得る対抗策として、関税制度の抜け穴をふさぐことや、ヨーロッパ企業と同等の炭素排出コストを負担していない輸入部品に高い関税を課すことを挙げた。
さらに、域内製造業の強化やサプライチェーンのデリスキング、中国への過度な依存の低減、アメリカなど民主主義国との連携による中国の過剰生産能力や非市場的な経済行動への共同対応も考えられるという。
一方、孫国祥氏は、欧米や日本など主要工業国が一斉に規制を強化した場合、中国企業が「第三国での加工や迂回輸出、現地への工場投資などを通じて、こうした障壁を回避する可能性がある」と指摘した。
「その結果、米中、EU・中国間の貿易摩擦が、過剰生産を巡る世界的な対立へ発展する恐れがある。中国の余剰生産分が海外に流れ、それに対して各国が防衛措置を強めるという新たな構図だ」
さらに孫国祥氏は、「欧米がこれを単なる価格競争ではなく、自国の製造業や雇用、サプライチェーンの安全を脅かす構造的な問題だと認識すれば、対中措置は個別品目への対応から、より恒常的で制度的な規制へと広がるだろう」と述べた。
「これは、欧米の中国に対する認識が、単なる貿易不均衡の問題から、経済制度そのものを巡る競争へと移ったことを示すことになる」
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