中国の蓄電池産業は、政策による後押しを受けて急速に拡大する一方、供給過剰や過剰競争への懸念も強まっている。中国共産党(中共)当局は最近、既存・計画中の生産設備や増産計画について全面的な点検に乗り出し、まだ着工していない一部の計画は一時的に棚上げしている。
一方、蓄電設備の導入ペースは鈍化しており、企業の収益力に加え、過剰生産分を海外市場でどこまで吸収できるかも問われている。
中国の蓄電池産業については、太陽光発電やEVと同様、「過剰な増産→価格競争→輸出拡大→貿易摩擦」という道をたどるとの見方も出ている。
財聯社の9月6日付報道によると、中国の蓄電業界では数年にわたる急拡大の結果、激しい過当競争に加え、供給過剰のリスクも深刻化している。
中国共産党(中共)は現在、既存・計画中の生産設備や増産計画を全面的に点検しており、まだ計画段階にあり、正式着工していない案件については、当面の間、建設を見合わせる措置を取っているという。一方、すでに届け出を済ませ、建設中の案件は対象外としている。
中関村蓄電産業技術連盟(CNESA)のDataLink世界蓄電データベースによると、2026年上半期時点で、中国の電力用蓄電設備の累計導入容量は237.7GWに達し、前年同期比41.7%増加した。
このうち、新型蓄電と呼ばれる揚水発電以外の蓄電設備は、累計出力168.3GW、蓄電容量448.7GWhとなり、前年同期比でそれぞれ59%、71%増加した。2025年末と比べても15%増えている。
ただ、2026年上半期に新たに稼働した新型蓄電設備は21.81GW、蓄電容量は58.60GWhにとどまった。前年同期比では、出力ベースで18%、蓄電容量ベースで16%減少した。
CNESAはこの数字を重要な変化として取り上げ、公式サイトで「2026年上半期の蓄電設備導入は18%減、業界に新たなシグナル」と報じた。
当局 過剰投資の抑制に転じたか
米サウスカロライナ大学の謝田教授は大紀元に対し、中国の蓄電池産業について、「供給能力が過剰になり、拡大のペースも速すぎた。行き過ぎたため、現在は新規案件の着工を止めるよう求めている」と指摘した。
謝氏は、中共が掲げる「新質生産力」についても、供給能力が需要を大きく上回る分野が出ているとの見方を示し、「経済全体が減速し、政府による投資余力も限られるなか、損失拡大を防ぐための措置だ」と述べた。
さらに、「EV産業でも、多くの企業が一斉に参入し、全国で200社を超える自動車メーカーが誕生したが、その後は倒産や合併、事業撤退が相次いだ」と指摘。政府主導で一斉に投資が進む産業では、同じような結果に陥りやすいとの見方を示した。
中国本土で投資市場に関わっていた徐真氏は、中国の蓄電池の供給過剰について、政府主導の政策と業界内の事情が重なった結果だと分析する。
例えば2023年には、車載電池の増産計画が、その年の実際の車載需要の一時10倍に達していたという。ただ、余剰となった生産設備が消えたわけではなく、一部は輸出によって消化され、一部の生産ラインは蓄電池セル向けに転用したと説明した。
徐氏は、本質的には「新三様(EV、リチウムイオン電池、ソーラーパネル)」と同じで、政策主導による供給過剰だと指摘する。
地方政府による企業誘致、産業政策に基づく補助金、銀行融資の促進という3つの要因が重なり、過剰投資につながったという。
さらに、生産能力が需要を上回り、激しい値下げ競争によって企業の資金繰りが悪化すれば、そのリスクは銀行や地方政府系の資金調達会社、上場企業の株価にも波及すると分析した。
こうした事態は中共当局が避けたいリスクであり、「反内巻(健全な競争環境を取り戻そうとする動き)」や行政による生産抑制、業界秩序の是正といった政策が打ち出されている背景には、こうした事情があるとの見方を示した。
業界関係者「多くの蓄電所が不良資産化する可能性」
蓄電業界が抱える問題は、供給過剰や過当競争だけではない。
蓄電所を長期間運営するうえでの採算性や、大規模化に伴う品質管理、試験・検証不足によるリスクを指摘している。
財聞網によると、遠景科技集団の田慶軍・シニア副総裁は、電力市場の制度や環境が変化すれば、蓄電事業から得られる収益も変わることとがあると指摘した。
周波数調整などの補助サービス市場や電力価格の差などが、蓄電所の将来的な採算性を直接左右するという。
田氏は、現在の蓄電所の経済性分析の多くが一定の仮定に基づいている一方、設備の耐用年数は15~20年に及ぶと説明。
「今後数年のうちに、多くの蓄電所が不良資産になるとみている」と警告した。
田氏はまた、風力発電設備の大型化が進んだ際、十分な試験や検証を行わなかったことで品質問題が発生した例を挙げ、蓄電業界でも同様の問題が起きる可能性があると述べた。
過剰設備の淘汰進むか 業界再編の可能性
東方財富網によると、田氏は最近、2026世界動力電池大会で、中国では今年、蓄電池セルの新規生産能力計画は、800GWhを超えていると明らかにした。
年末までに完成する生産能力は1.2~1.5TWhに達する見通しで、計画段階を含めた全体では2TWhを超えるという。
これは世界市場の実際の需要を大幅に上回る規模だとしている。
田氏によると、電池セルの製造は太陽光パネルと同様、生産ラインの停止や再稼働にかかるコストが高く、連続生産を維持せざるを得ない特徴がある。
そのため、供給能力が需要を上回った場合、企業はキャッシュフローと市場シェアを維持するために値下げに走る可能性が高く、太陽光発電業界と同様の価格競争に陥る恐れがあるという。
蓄電企業の関係者は「第一財経」に対し、容量314Ah未満の旧世代の蓄電池セルについては、生産設備の停止や用途転換が段階的に進むとの見通しを示した。
競争力に乏しい中小電池メーカーの一部は市場からの退出を迫られ、「今後数年間、業界では過剰設備の淘汰と再編が進む」と予測している。
供給過剰が鮮明になるなか、蓄電池産業が太陽光発電業界と同じ道をたどるのではないかとの懸念が強まっている。
太陽光 設備容量は拡大も利用率低下 過当競争も深刻
ちゅうきゅ国家能源局の最新データによると、2026年7月末時点で、中国の太陽光発電設備容量は1286GWに達した。
設備容量では石炭火力を初めて上回り、中国最大の電源となった。
一方、太陽光や風力発電は天候によって出力が変動し、発電量が多い時間帯と電力需要のピークが一致しない場合も多い。
こうした要因から、太陽光や風力による電力を送電網で受け入れきれず、出力を抑える「棄光」「棄風」と呼ばれる問題が深刻化している。中国のエネルギー転換における主要な課題の一つとされる。
電力業界規画研究・監測預警中心が公表した「2026年2月 全国新エネルギー系統接続・消費状況」によると、2026年1~2月の全国の風力発電利用率は91.5%、太陽光発電利用率は90.8%まで低下した。
新浪財経が引用した環球零碳の分析によると、これは1~2月の太陽光発電の出力抑制率が9.2%まで上昇したことを意味し、2025年同期の6.1%を大きく上回る。
風力発電の出力抑制率も8.5%となり、前年同期の6.2%を上回った。
太陽光発電の利用率は2023年には98%に達していたが、2025年には94.8%に低下。2026年1~2月にはさらに90.8%まで下がった。
2025年11月、国家能源局は、太陽光発電を含む新エネルギー産業について、内巻競争を避けるよう求める文書を公表した。
「21世紀経済報道」も、太陽光発電業界では激しい値下げ競争による過当競争が深刻化し、売上高は伸びても利益が増えない状況に陥っていると報じている。
国家能源局は、内巻が生じる背景として、企業による増産、地方政府の企業誘致、投資資金の集中、低価格競争、海外からの圧力など、複数の要因が重なっていると分析。
最終的には、国内外の双方で激しい競争にさらされ、「苦労しても利益が残らない」状況になっているとの認識を示している。
蓄電池産業も太陽光と同じ道をたどるのか
CNESAによると、2026年上半期、中国の蓄電関連企業による海外受注契約は前年同期比83%増加した。
今後、海外市場でも競争が激しくなり、国内外の双方で利益を確保しにくくなるのではないかとの懸念も出ている。
徐真氏は、中国の蓄電池輸出の規模が大きくなり、拡大ペースが速まるほど、欧米諸国による貿易防衛措置を招きやすくなると指摘する。
これは太陽光発電やEVがたどってきたのと同じ構図で、国内の過剰生産を輸出によって吸収しようとする動きだという。
徐氏は、蓄電設備は電力網の安全や、リチウム、コバルトなどの重要鉱物とも関係するため、太陽光発電以上に早い段階で「国家安全保障」の問題として扱われるとの見方を示した。
中国の蓄電池産業も将来、太陽光発電やEVと同じように、国内の「反内巻」政策から、より大きな国際貿易摩擦へと発展する可能性がある。
中華経済研究院の戴志言副研究員は、中共体制の構造的な問題や競争の仕組みが、国際経済・貿易の場で不公正な競争を生み出していると指摘する。
中国は「蓄電大国」と呼ばれる規模に成長したものの、国際的な信頼を失いつつあり、一部の先進国は中国との経済関係で「リスク低減」を進めているとの見方を示した。
謝田氏は、「革新的生産力として推進される産業はいずれも、かつての太陽光発電産業と同じ道をたどる」と述べ、国内で過当競争が進み、最終的に国際的な貿易摩擦を招くと主張した。
謝氏は、こうした問題を中共体制に共通する構造的な問題だとし、「この結末を避けることはできない」との見方を示した。
さらに、中国が2001年にWTOへ加盟して以降、国際市場が中国に開かれたことで、その後約20年間にわたり経済成長の恩恵を受けたと指摘した。
しかし現在は、中共の政策転換や国際社会による対抗措置が強まっているとして、「中国経済は20年前の水準に後退するだろう」と述べた。
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