中国の「意外な」規制緩和 その裏にある人民元戦略

2026/08/14
更新: 2026/08/14

人民元の国際化を進めようとする中国政府の動きが、これまで慎重だった資本移動の自由化を促しているようだ。

論評

北京は、これまで厳しく規制してきた二つの分野について、突如として自由化に踏み切ったように見える。中国の機関や個人が海外へ投資しやすくなるよう規制を緩和したほか、香港市場で外国の借り手が発行する人民元建て債券、いわゆる「パンダ債」の発行範囲を拡大することも決めた。

一見すると、この二つの政策は互いにあまり関係がないように見える。しかし、どちらも北京による人民元の管理という目的に直結している。つまり、輸出の成長を支えるため人民元をできるだけ安く維持すると同時に、国際的な人民元の利用を促進することだ。そのつながりは多少複雑だが、全体の流れは明確である。

出発点となるのは、中国の巨額な貿易黒字だ。2025年には過去最高となる1兆1900億ドル相当に達し、最新データが確認できる今年7月には、月間でも過去最高の1125億ドルを記録した。

中国は海外から購入する額よりも、海外へ販売する額のほうがはるかに多い。そのため、国外へ流出する人民元よりも国内へ流れ込む人民元のほうが多くなり、世界の取引市場では人民元が不足気味になる。これが人民元相場を押し上げる圧力となっている。過去12カ月で、人民元は米ドルに対して6%上昇した。

この上昇は、国家の威信を重視する中南海の人々にとって誇らしいことかもしれない。しかし同時に懸念材料でもある。人民元高によって中国製品が外国人にとって割高になり、中国の輸出競争力を弱める可能性があるからだ。また、中国との直接的な貿易を除けば、国際取引で利用できる人民元の量が限られるため、北京が進める人民元の国際化にも逆風となる。

こうした望ましくない影響を抑えるため、北京は人民元を再び世界市場へ流出させようとしている。人民元が国外へ流れれば、為替市場での人民元高を抑え、場合によっては反転させることもできる。同時に、世界の金融市場に十分な人民元を供給することで、中国との直接貿易以外でも人民元の利用を促し、人民元の国際化を後押しできる。 そこで今回の二つの自由化策が意味を持ってくる。

北京はこれまでのところ、自由化措置の全容を明らかにしていないが、方向性は明確だ。中国国家外貨管理局(SAFE)は7月中旬、適格国内機関投資家(QDII)が海外の証券に投資できる金額について、新たな投資枠を設定すると発表した。個人投資家も投資信託を通じて、こうした海外投資に参加できる。SAFEはさらに、今後この投資枠を一段と拡大する可能性も示唆した。こうした人民元の国外流出は、貿易黒字によって生じる人民元高圧力を大きく和らげる可能性がある。

その規模も無視できない。QDIIの資産は2025年に約57%増加し、8337億元(約1230億ドル)に達した。SAFEの肖勝局長は、投資枠の拡大について「国内居住者による合法かつ規則に沿った海外証券投資の需要を、より適切に支え、満たすため」と説明した。それも事実だろうが、同氏はさらに、この決定の主な目的が中国金融市場の双方向の開放を進めることだと述べており、言い換えれば人民元の国際化を目指していることをほとんど隠していない。

パンダ債の発行拡大も同様の効果をもたらす。外国の借り手が人民元建て債券を発行する、つまり人民元を借り入れることで、より多くの人民元が国際市場へ流れ込む。それによって人民元相場の上昇を抑えるとともに、国際金融での人民元利用を促すことができる。中国人民銀行の潘功勝総裁は、いわゆる「南向き(南向通:香港向け)」の債券取引を60%拡大すると発表した。これは、対象となるオフショア債券(パンダ債)を売買できる枠を広げることを意味する。

実際、需要は存在する。過去1年間だけでパンダ債市場は約69%拡大し、1600億元(約236億ドル)超に達した。今年上半期には、こうした債券を発行する参加者も30%増え、2500に達した。 発行の多くはハンガリー、カザフスタン、インドネシア、ブラジルなど中国の貿易相手国によるものだが、誰が人民元を借りるにせよ、人民元が国外へ流れることは、世界市場により多くの人民元を供給したい北京の狙いに合致する。

北京がこうした取り組みによって、人民元相場の過度な上昇を抑えながら人民元の国際化をどこまで進められるかは、依然として不透明だ。さらに長期的な目標である、米ドルに代わって人民元を世界の主要な国際決済・準備通貨、いわゆる「世界の基軸通貨」にするという目標を達成できるかは、なおさら分からない。しかし、こうした目標と最近の自由化措置とのつながりは明確だろう。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ミルトン・エズラティは、The National Interestの寄稿編集者であり、ニューヨーク州立大学バッファロー校の人間資本研究センターの関連組織であり、ニューヨークに拠点を置くコミュニケーション会社Vestedの主席エコノミストである。Vestedに加わる前は、Lord、Abbett & Coの主席マーケットストラテジスト兼エコノミストを務めていた。彼は頻繁にCity Journalに寄稿し、Forbesのブログに定期的に投稿している。最新の著書は「Thirty Tomorrows: The Next Three Decades of Globalization, Demographics, and How We Will Live」。