今回のテーマは、中国で毎年、いや毎大型連休恒例の観光地の「人災」についてだ。
中国で大型連休のたび、似たような内容の記事を書いている筆者としてはとても不思議な感覚に陥るのだ。
「サービス能力を考えない過剰な集客」と「管理不備」、「誇大広告」など、中国の景勝地の問題はかねてから指摘されてきた。
特に大型連休中の有名観光地での大混雑(日本では想像できないほどの深刻さ)は周知の事実であり、中国のネット上にも「来て後悔した」「連休はやっぱり家でおとなしくしているべきだった」といった反省であふれているというのに、なぜか観光地側も、観光客側も、前人や過去の「血の教訓」を少しも学ばないのか。

「メーデー連休」地獄絵図、せっかくの旅行に「金払って罰ゲーム」?
今年の「メーデー連休」も各地の観光地で「チケットの払い戻しをしろ!」との観光客の怒号が飛び交った。
険しい山々や岩窟などの奇景が楽しめる湖南省の景勝地「張家界」では5月2日夜、山の上に取り残された千人を超える観光客が集団で返金を求めた。
山の登り降りにも数時間の待ち時間、連絡不通の苦情窓口、何時間も並ばされるシャトルバス、客を客として扱わない誠意のない対応などなど、その乱れ切った運営・管理体制に訪れた観光客は失望し、「二度と来るものか」と誓うSNS投稿も少なくない。
(夜山の上に取り残された数千人の観光客、2025年5月2日、「張家界(湖南省)」)
似たような混乱は広東、河南、上海、重慶など全国に広がっている。
ラフティングなどができる有名な景勝地「黄騰峡(広東省)」や「豫西大峡谷(河南省)」でも4、5時間並んでも川に入れず、「お金を返せ!」と怒る客たちが騒ぐ事態に。
(2025年5月2日、豫西大峡谷(河南省)での「チケット払い戻し」を待つ長蛇の列)
(豫西大峡谷(河南省)でラフティング待ちの長蛇の列)
武漢市のランドマーク「黄鶴楼(こうかくろう)」では雑踏事故になりかけるほどの人混みで現地から「圧死寸前」との悲鳴が上がった。
(メーデー期間中の武漢市・「黄鶴楼」)
上海の展望台(上海テレビ塔)でも絶望的な列が続き、返金求める観光客が相次いだ。
(2025年5月2日、上海の展望台(上海テレビ塔)での絶望的な列)
中国の観光地は「混む」だけではない。観光地周辺の飲食店の高すぎる価格設定のほか、「え? 便所入るだけでも金とるのか」「車を止めただけで駐車料金を取られた」「竹イカダに乗った老人と写真を撮ろうとしたら金銭を要求された」
といった苦情も多い。
結果として、旅行はもはや楽しみや癒しではなく「怒りと諦めの連続」となっているのが実態だ。
中国のSNSには「もはや観光ではなく高い金払って罰ゲーム受けてるようなもの」「やっぱり家にいるんだった」といった嘆きにあふれている。
人を集めることには成功しても、もてなす心を失えば、それはただの「人災」でしかない。
せっかくの旅の記憶が「苦行」など、酷すぎる。
(大混雑するメーデー期間中の広東省の景勝地「佛山游龍峽景区」)
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