最近、中国語圏の軍事系ブロガーが中国共産党(中共)の関係者から勧誘を受けた際の録音を公開したことをきっかけに、「中共の対外プロパガンダをいかに見分けるか」を巡る議論が広がっている。
軍事・国際情勢の評論で知られるこのブロガーは最近、中共の対外宣伝工作を担うとする代理人が、自身に協力を持ちかける音声を公表した。録音によると、相手は「月4万ユーロ(約700万円)」という報酬を提示し、海外向けの世論誘導に協力するよう要求。「多少の批判は容認するが、習近平国家主席を批判してはならない」という条件が付されていたという。
この件について、ジャーナリストの矢板明夫氏は12月21日、分析記事を発表し、少なくとも3つの重要な結論が導き出せると論じた。
第1に、中共はヨーロッパのインフルエンサーに対してすら巨額の資金を投じて世論工作を行っている以上、中国から距離が近い台湾のインフルエンサー界ではすでに多くの人物が接触を受けていても不思議ではないという点だ。
費用対効果の観点から見ても、言語・文化の近さを考慮すれば、中共にとって台湾のインフルエンサーの方が、むしろ魅力的な対象となり得る。
第2の結論は、金銭的誘惑の強さである。月に148万台湾ドル(約700万円)という水準は、台湾のインフルエンサー界ではほぼ神話的な高収入に相当する。現実には、月収15万台湾ドル(約75万円)を超えれば、すでに「成功者」と見なされる世界だ。
報酬が10倍に跳ね上がり、さらに「中国を全面的に批判できなくなるわけではない」といった曖昧な条件が付されれば、心を動かされる者が出るのは避けられないとした。
第3の結論であり、最も重要なポイントは、「誰がすでに買収されている可能性があるのか」をどのように見分けるかという点だ。その判断基準は極めてシンプルで、「習近平個人を批判できるかどうか」にあると矢板氏は指摘する。すでに取り込まれた海外の御用文化人が習近平を公然と批判すれば、実際にリスクを負うのは本人ではなく、その背後にある「指揮系統」であるため、事実上それは不可能だという。
一方、時事評論家の李林一氏は、大紀元の取材に対し、別の視点を示した。「反習近平だが、反共ではない」と指摘される人物の存在を挙げ、「習近平を批判できることが、必ずしも反共産党を意味するわけではない」と述べた。
その上で、識別のための「レッドライン」は総合的に判断すべきだとし、①共産党そのものを批判できるか、②習近平を批判できるか、③中共による人権迫害に対してどのような態度を取っているか、この3点はいずれも重要な判断基準になると指摘した。
中共の対外プロパガンダをどのように見分けるかという問題については、以前から海外の民主派の間で議論が続いてきた。民主化運動のベテランである唐柏橋氏は、かつてSNS上で「法輪功迫害の問題こそが、中共によるプロパガンダを見分けるための最大のレッドラインだ」と強調している。
唐柏橋氏は、たびたび法輪功に対する中共の迫害を非難してきた。唐氏によると、2008年の北京五輪を目前にした頃、中共当局のロビイストが接触し、「法輪功と関わらないのであれば、他のことはすべて話がつく」と持ちかけてきたという。
六四天安門事件の記念活動を続けることや、民主を求める文章を書くことも容認され、発表の場や原稿料についても「いくらでも用意する」とした。後に、原稿料についてはアメリカの最高水準を参考にしてよいとの補足もあったという。
その後も、唐氏は地域や所属部署の異なる複数のロビイストから同様の誘いを受けたが、いずれも条件はほぼ共通していた。この経験から唐氏は、法輪功こそが中共が総力を挙げて殲滅しようとしている対象であり、それ以外の反体制派勢力や民主化運動は、統一戦線工作の対象として利用されているのだと認識するに至ったという。
唐氏はまた、かつて法輪功を支持していた反体制派の一部が、次第に距離を置き、やがては露骨に法輪功を攻撃するようになる過程を目撃してきたと語る。以来、民主化運動の仲間を観察する際には、「意図的に法輪功の話題を避けるか、あるいは突然、公然と激しく非難し始めるか」を一つの判断材料としてきたという。
「自分とは直接関係のない修煉団体であり、しかも中共から最も苛烈な迫害を受けてきた団体に対して、突如として全力で攻撃を始める人物がいるとすれば、その背後には必ず目的がある」と唐氏は指摘する。そして、「利害なくして動かない中国人」が、長文を費やして法輪功を攻撃する理由として考えられるのは、「中共からの利益誘導以外にあり得ない」と断じている。
昨年夏以降、海外では多数のセルフメディアやSNSアカウントが突如として法輪功への攻撃を開始した。その中には、表向きは反共的な立場を取っていた発信者が、突然法輪功批判に転じた例も含まれている。
今年3月21日、シドニー工科大学の副教授である馮崇義氏は、X(旧ツイッター)に次のように投稿した。「聞くところによれば、中共当局は昨年、カナダで対外プロパガンダに関する秘密会議を開き、海外の反共産党系セルフメディアの発信者を『買収して取り込む』方針を打ち出したという。この動きは、ここ数年で海外中国語セルフメディアの影響力が、中共指導部を強く震撼させていることを示している」
馮氏はさらに、「海外の反共セルフメディアが真実を伝え、民衆や官僚層の意識を覚醒させてきた成果は、すでに中共体制にとって巨大な脅威となっている」と警鐘を鳴らした。
また、海外の中国語セルフメディア界は競争が激しく、「悪魔の誘惑」を前に一線を踏み越えてしまうリスクは極めて高いと指摘する。「ひとたび買収され、賊船に乗って悪事に加担すれば、それまで築いてきた名声は一生失われる」とし、多くの同業者が道義を自らの責務として、最低限の一線を守り抜くことを期待すると結んだ。
さらに、中共公安当局の内部関係者の話として、海外で法輪功を攻撃する一連の動きは、新たに国家安全部長に就任した陳一新氏が直接指示したものだと伝えられている。昨年12月5日には、オーストラリア在住の法学者・袁紅冰教授が、これらの攻撃計画は中南海の最高指導部から出たものだと明らかにしていた。
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