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中共の日本渡航自粛呼びかけで打撃を受ける中国企業とは

2025/12/23
更新: 2025/12/23

先月、台湾有事は「存立危機事態にあたる」とする高市早苗首相の国会答弁を受け、中国共産党(中共)政権が日本への渡航自粛を呼びかけた。このことにより、大きな被害を受けたのは、日本で中国人観光客向けに「ワンストップ」サービスを提供していた中国企業だ。

多くの中国人観光客が日本を訪れることで、「ワンストップ」型の観光サービス産業が生まれた。観光客の滞在中の宿泊、交通、娯楽、食事まで、すべて日本国内の中国企業が手配する仕組みだ。サービスは中国語で提供され、ほとんどの金融取引も中国の決済プラットフォームを通じてオンラインで行われていた。

しかし、中共政権による渡航禁止が続く中、多くの予約がキャンセルされたことで、この「ワンストップ」サービスの規模は縮小しつつある。

日本で観光業を営む中国人経営者が渡航自粛通知の被害者に

東京で3軒の民泊を経営する中国人女性は、匿名で日経アジアにこう語った。「私の東京の民泊は11月14日までは満室でしたが、12月の予約はほとんどキャンセルされた。しかも中国人観光客はキャンセル料を支払いたがらない」

日経は12月23日、彼女が中国人観光客向けのサービスを提供する多数の経営者の一人だと報じた。こうしたサービスには、小規模旅行会社、運転手兼ガイド、中華料理店、さらには和服レンタルサービスまで含まれる。日本の観光業界ではあまり知られておらず、主にオンラインプラットフォームや中国国内のサービス運営に依存している場合が多く、中には必要な日本政府の許認可を持たない事業者もある。

日本は長年、中国人観光客にとって人気の海外旅行先のひとつ。日本政府観光局(JNTO)の統計によれば、今年1〜11月に日本を訪れた中国人観光客は870万人に達し、2024年と比べて約40%増加した。

11月7日、高市氏の国会答弁に対し、中共政権は猛反発し、すぐさま日本への渡航自粛を呼びかけた。

これを受け、中国の航空会社は日本行きの便数を減便し、11月の中国からの訪日客数の伸びはわずか3%にとどまった。

では、事業の対象を中国人以外の観光客から変えればいいのではないかという意見もあげられるが、中国系の事業者にとって、非中国人観光客向けへの事業転換は容易ではないようだ。

「うちの顧客の大半は中国人だ。突然、ヨーロッパやアメリカからの観光客に対応するなんて無理である。どうすればいいのか全く分からない」と、東京市中心部・浅草の下町で伝統的な和服レンタル店を営む中国人スタッフは語った。

この店舗は集合住宅の3階にあり、日経新聞記者が12月中旬に訪れた際には、照明は暗く、客の姿はなかった。スタッフも「顧客はほとんど来ていません」と答えていた。

一方、日本の事業者は、他国からの観光客を呼び込むことで市場変化に対応しようとしている。日本政府観光局の最新データによれば、2025年の観光繁忙期における訪日客数は大幅に増加しており、1~11月の累計訪日客数は3907万人に達し、昨年1年間の3687万人を大きく上回る歴史的な記録となった。

この増加は、韓国、台湾、アメリカなどからの観光客の増加によるものである。11月のデータでも、韓国、台湾、アメリカを含む19市場で当月の訪日客数がいずれも過去最高を更新するなど、この傾向が明確に表れている。

逆効果を伴う中共の報復

中国湖北省の政府系メディア「極目新聞」の報道によると、航空便管理サービス「航班管家」の最新統計では、2026年1月における中国と日本間の航空便のキャンセル数は2195便に達し、全体のキャンセル率は40.4%に上った。うち46路線については、2025年12月23日から2026年1月5日までの2週間に予定されていた全便がキャンセルされ、キャンセル率は100%に及ぶ。これに関わる空港は日中双方合わせて38か所にのぼる。

市場関係者は、中共政権が観光を外交カードとして利用した結果、自国に損害を及ぼしていると指摘する。

アジア経済評論家の陳志強氏は、ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、次のように分析した。「これは典型的な逆効果を伴う報復だ。日本の観光産業のチェーンでは、現地旅行会社や個人ガイド、民泊や飲食店など、非常に高い割合で日本在住の中国人事業者が運営している。今回の中共政権による渡航禁止措置は、真っ先にこの中国人起業家たちの生活を直撃している」

さらに陳氏は、「重要なのは、これらの華商が得た利益は通常、中国国内に還流して二次消費や投資に回っていることだ。訪日観光を遮断することは、この重要な外貨と資金の還流ルートを断つことに等しく、現在低迷している中国国内経済にとっては、追い打ちをかける結果になっている」と述べた。

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