この2年、中国の製造業を取り巻く構図に大きな変化が生じている。複数の日本企業が、中国での最終製品製造事業を縮小、あるいは閉鎖する動きを見せている。また、日本企業は重要素材や高付加価値分野への投資姿勢を明らかに慎重化させている。こうした動きは、市場では日系企業の中国撤退と受け止めている。公開データや企業動向からは、単なる市場変動ではなく、外資企業が中国共産党(中共)体制に内在するリスクや地政学的緊張の高まりを意識した結果とみる。
自動車分野では、三菱自動車が2023年に中国での完成車生産を停止し、関連する合弁事業から撤退した。同社の中国販売台数は2020年のピーク以降、減少が続き、2024年には約7千台まで落ち込んだ。
広州で自動車販売に携わる劉さんは大紀元に対し、「現在は多くの日系企業社員の家族が中国を離れており、日本人からは、中国に対して非常に失望しているという話を聞いた」と語った。日系企業全体で中国に対する評価は変化し、撤退の動きが相次いでいる。
安全面の懸念で 日系企業 生産拠点を東南アジアへ
日本在住の学者である周さんは、長期的な赤字は表面的な問題にすぎず、より根本的な要因は中共主導の産業政策が強まり、外資企業に制度的な圧力が加わっている点にあると指摘した。
周さんは「自分の知っている限り、日本人が中国で襲撃を受けた事件以降、この1年で多くの在中日系企業社員の家族が身の安全を理由に中国を離れた。一部企業は生産設備を東南アジアへ移転した」と語った。同氏は安全面への不安や中共体制の不透明さが、企業判断を左右する要因になっていると指摘した。
電子製造分野でも縮小が進んでいる。キヤノンが広東省中山市に設置していたレーザープリンター工場は、2025年11月に生産を停止した。最盛期には1万人を超えていた従業員数は、停止時点で約1400人にまで減少していた。同社プリンターの中国市場シェアは4%未満に低下し、生産はベトナムやタイへ移している。生産ラインの海外移転は、市場環境の変化にとどまらず、特定の政治環境によるリスクを回避しようとする企業判断を反映している。
食品分野の動きは象徴的だ。ヤクルトは上海の工場を2024年末に閉鎖し、2025年11月30日には広東省広州第一工場を閉鎖した。同工場は2002年の中国進出後、最初に設立した生産拠点だった。20年以上を経てのこの撤退は、日系ブランドによる中国市場拡張期の終わりを示している。
小売や外食分野でも後退が目立つ。ファミリーマートは華北地域で約100店舗を閉鎖し、経営資源を中核地域に集中させた。吉野家は2線、3線都市での事業拡張を停止している。拡大路線から守りの経営へと転じる動きは、中国市場の安定性や制度の予測に対する企業の信頼低下を映し出している。
北京の研究者である李さんは、日本やアメリカの企業が生産ラインを東南アジアへ移していることについて、中国の製造体制への依存を引き下げる動きだと指摘した。「政治リスクやサプライチェーンの安全性が、企業判断の中心的な要因になっている」とした上で、これは短期的な経営調整ではなく、中共体制に対する長期的なリスク回避策だとの見方を示した。
外資資本の重心転換 中国製造の魅力低下
過去5年、外資企業は自動車、電子、食品、小売分野で品質面の優位性を武器に中国市場で一定の地位を築いてきた。しかし現在、日系ブランドは程度の差はあれ、撤退や事業縮小を進めている。読売新聞の調査によると、かつて中国の家庭消費で存在感を示していた日系ブランドは、今や日常生活においてその存在感が明らかに低下している。
浙江商会関係者の姚氏は、「経営コストや政治要因を踏まえ、日本企業の中国離れは長期戦略の一環だ」と語った。中共の政策が目まぐるしく変わり、規制が強化される。対外関係の緊張が続く中で、企業は中国投資のリスクを改めて見直さざるを得ないと指摘した。
姚氏によると、西側企業が中共体制を取り巻く環境について、組織的な脱リスク化を進めていると述べた。こうした資本と生産能力の移転が中国経済に与える影響は、徐々に表面化している。
同氏は「日経資本が全面撤退していなくとも、産業の重心はすでに再配分している。この流れが続けば、最終製品製造分野における中国の外資誘致力はさらに低下し、地域のサプライチェーン構造も中国離れを加速化させるだろう」との見方を示した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。